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Ocean's Blue

009:伝説のおやぢ

 20年前、大戦を引き起こした魔王、闇の王ダークロード

 その魔王を倒した7人の勇者達

 人々は彼らを七英雄と呼んだ。

 そしてその中には若き日のレイの両親

 父であるラクール=フレジッドと

 母であるマリア=ハロウドの姿があった。

 ◆

 ケイルは悪だった。ちなみに読み方はアクではなくワルである。ケイルはと
んでもないワルなのだ。ローグになってから半年、彼はほぼ1週間に1回の
割合である事を繰り返していたのだ。

 すなわち、オヤジ狩り

 そう、いたいけな善良なオヤジ達をぶちのめして金品を巻き上げてたり、ス
トレス発散していたりしたのだ。とんでもないワルである。そして彼は今日も
新たな犠牲者を首都プロンテラの路地裏で発見した。
「フッフッフ…そこのオヤジ、運が悪かったな!金品まとめて置いていっても
らうぜぇぇぇぇぇぇ!!」
 ケイルが飛び掛るとそのオヤジが振り向いた。
「フンガ!!」
 バキィ!!とトンでもない音を立てながら、ケイルは宙を飛んでいた。

 どざざざざざー!

 どうやら振り向きざまに殴りとばされたらしい。ケイルが殴られた頬を押さ
えながら不敵な表情で立ち上がった。
「どうやら…一筋縄じゃいかねぇオヤジらしいな!テメェ何者だ!」
 そのオヤジは素直に名乗った。
「ラクール=フレジッドだ」
「え」
 ラクール=フレジッド、生きた伝説、七英雄、とりあえずそんな言葉がケイ
ルの脳裏に浮かんだ。
「マ…マジ?」
「マジだ」
 ラクールが肩にかついでいた戦斧、ハルバードを手に持った後にこやかに
言った。
「ちなみに趣味はオヤジ狩り狩りだぞっ♪」
 オヤジ狩りをする奴を狩るのが趣味らしい。
「うあああああ!ごめんなさいぃぃぃぃぃ!出来心だったんです!」
 ケイルは体裁などかなぐり捨てて土下座した。殺されるよりマシである。
「そうだ。人間反省することが最も重要だ」
 ラクールはケイルの肩にポンっと手を置き、諭すように言った。
「これからは真っ当に生きるんだぞ、少年」
 ケイルが感動に瞳を揺らしながらバッと顔を上げた。
「こんな俺を…許してくれるんですか…」
 ラクールはにっこり笑った。
「いや許さんけどな」
 完。

 ◆

 レイはフィリとジュニアを伴って、父であるラクールとの待ち合わせ場所で
ある喫茶店に向かっていた。ちなみにガイストは朝から宿にいなかった。多分、
他のメス鷹とでもデートに言ったのだろうとレイは言っていた。
 3人は喫茶店に向かう途中で路地裏に人だかりができているのに気が付いた。
「ん、何の騒ぎだ?」
「何だろ…」
 フィリも首をかしげた。ジュニアがそばを歩いていた冒険者をつかまえて聞
いた。
「何かあったの?」
「ああ、何でも人間サンドバックにされた後、逆さまで宙釣りにされて、その
まま生卵1000個ぶつけられて、実はその中の10個がゆで卵だったりして、まぁ
要するに凄いボコボコにされたローグがいたってわけ」
「ふ〜ん…レイ、どう思う?」
「いやどうでもいいだろ実際。早くオヤジとの待ち合わせ場所に行こう」
「だね」
 3人は足早にそこを離れると、ラクールの待つ喫茶店へと足を踏み入れ
た。その喫茶店の一番奥の丸テーブルに王者の風格をかもしだすロードナ
イトがいた。
「オヤジ」
 レイがそのロードナイト、ラクール=フレジッドに声をかけた。
「おお、来たか。連れもいるようだな、遠慮せずに座れ」
 レイがラクールの対面、その両隣にフィリとジュニアが座った。
「随分と成長したな、レイ」
「オヤジは老けたんじゃねーのか?」
 ラクールが額に青筋を浮かべた後、唐突に言った。
「レイ、今日俺は新たなる技を覚えた。お前に試してやろうか?」
「何だよ」
「生卵1000個ぶつけちゃう中にゆで卵10個入れれて、あらビックリ♪って技だ」
「オヤジ…まさか…」
 多分、そうなのだろうと確信しつつ、レイは話題を変えた。
「いや悪かった。っていうか自己紹介が先だよな」

 ラクールはジュニアとフィリの顔を見た後、 事も無げに答えた。
「ジュニアは以前会ったことがあるな。で、こっちの女の子はフィリちゃんだ
ろう?」 
「えっ」
 フィリは自分が誰か一発で見抜いてしまったラクールに驚きを隠せなかっ
た。
「何でわかったんですか?」
 ラクールは腕を組んで神妙に答えた。
「レイがな、俺はフィリとの愛に生きる、とわざわざ俺に手紙を送ってきたか
らな」
「送ってねぇよ!」
 レイが即座に否定する。すると今度はフィリが哀しそうな表情を浮かべた。
「でも…私はレイじゃないと…」
「いや待て落ち着け、オヤジの罠にはめられるな」
 危険発言の予感を感じ取ったレイはすぐさまフィリの言葉をさえぎった。そ
の様子を見たラクールがあからさまな舌打ちをした。
「ちっ、フィリちゃんと旅してるっていう手紙が来てたから、もうラヴラヴエ
ロエロかと思ってたらそうでもないんだな」
「ほっとけ、ていうか生々しい言い方やめい」

 ラクールは次にジュニアの方を向いた。
「お前も久しぶりだな、ジュニア。あれから腕は上がったか?」
「おかげさまで。ラクールから教授された槍術はかなり戦いの参考になってま
す」
「ちょっと待て」
 ジュニアがそう答えるや否や、レイが2人の会話の間に割って入った。
「何でジュニアに槍を教えてるんだよ!おい!」
「ふ…俺は親切だからな。魔王にでも色々教えちゃうぞ♪」
「人間滅ぼされるぞ、おい」
 レイがツッコミを無視して、ラクールがジュニアに言った。
「お前の父親は元気か?」
「ええ、毎日のように人間を滅ぼす方法を考えてますよ」
「おお、すこぶる元気だな。まぁ、迷宮の森に戻ったら、今度俺が遊びに行く
とでも伝えておいてくれ」
「はい」
 フィリが悟りきった目でレイに呟いた。
「世界って儚いよね…レイ…」
「気持ちはわかるが、こんなもんじゃないぞ、オヤジは」

 するとラクールが腕組みをした。
「そうだ。オヤジの威厳を見せねばとお前たちに土産を持ってきた」
 ラクールはちょっと大き目の袋をレイに手渡した。
「何が入ってるんだ?」
「開けてみろ、きっと楽しい」
 「喜ぶ」じゃなくて「楽しい」と言ったことにも気づかずレイはおもむろに
袋の中を見た。なんか脚が見えた。しかも割りと大き目の蟲の脚。
「…オヤジ…何コレ」
「うむ、ミョルニール山脈を抜けてきたんだが、途中で蜂の大群に襲われて
な。そのど真ん中にいた女王蜂をぶっ飛ばして袋詰めにした」

 ひきぃ!

 ラクール以外の3人の表情がこれでもかと引きつった。レイが顔を引きつら
せたまま、恐る恐る袋を閉じた。
「…これ…ミストレス?」
 ミストレス、ミョルニール山脈を統べる女王蜂、列記とした魔王である。
「そうだが、それがどうかしたか?」
「どうもするわぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!魔王を土産にするな!袋詰めにする
な!どーすんだよこれ!!」
 ラクールは耳の穴を小指でほじりながら答えた。
「わーったわーった、捨ててくればいいんだろ」
 ラクールはレイから袋を奪うと喫茶店を出て行った…と思ったらすぐに戻っ
てきた。フィリが冷や汗を流しながら聞いた。
「えっと…どこに捨ててきたんですか?」
「ん?喫茶店の前のゴミ箱だが?」

 すると喫茶店の外から複数の叫び声が聞こえた。
「うわぁ!ゴミ箱の中からミストレスが出てきたぁ!!」
「魔王がゴミ箱からでてくるなんてありえないわ!何かの前触れなの!?」
「っていうかミストレスめちゃめちゃ怒ってるぞ!?」
「暴れ始めたぞ!ぎゃああああ!助けておかーちゃーん!!」
 阿鼻叫喚の地獄絵図が外では展開されているようだ。


「ま、気にするな」
 全ての元凶はあっさりとこう言った。
「それにそろそろ本題に入りたいしな」
 ラクールの眼が鋭くなった。殺気にも近いその雰囲気に圧倒されたフィリ
は黙りこくってしまった。ジュニアは涼しい表情をしているが、それでも内
心穏やかではないようだ。そしてレイは
「俺もオヤジに聞きたいことがある」
 その父に挑むかのごとく、不敵な表情を浮かべていた。

 ◆

 その頃のエリカはプロンテラの道端で倒れていた。
「ふ…ふ…ふふ…精神が壊れそう…です…」
 プロンテラ聖騎士団副長補佐である従姉妹のセレスに連れられて、プロン
テラ地下水路に行ったはいいものの、やはり敵は圧倒的だった。黒光りの
奴らは人の心の根底に精神的ダメージを与えつつ、フライング突進という強
烈な技を持っている。というわけでセレスを見捨てて命からがら逃げ出して
きたというわけだ。
 だが、ここで諦めてはおそらくプロンテラは滅ぶ。それほどの化け物達な
のだ。負けるな!プロンテラ聖騎士団!
「…しかし…私たちだけでは手に余ります、というわけでがしっと」
 エリカは通りすがりの冒険者2人の足を右手と左手でそれぞれ掴んだ。
「なぜ私たちをつかむんですか…」
 冒険者は2人とも女である。片方はクルセイダー、もう片方はプリーストの
ようだ。というか実はこの2人、レイとフィリが精錬所で出会ったアルヴィン
と奈留の2人であった。エリカはよろよろと立ち上がると2人に訴えた。
「プロンテラの危機なんです!助けてください!」
 アルヴィンと奈留は顔を見合わせた。
「でも私たち…忙しいし…」
 プロンテラの危機を忙しいで斬って捨てる2人。
「報酬は弾みます」
『引き受けましょう』
 即答、しかも2人ともハモっている。エリカは内心ガッツポーズをしながら、
にこやかに営業スマイルを浮かべた。
「では臨時ではありますが、よろしくお願いします。私はエリカと申します。
貴女がたは…えっと…」
 奈留が答えた。
「私は奈留、こっちのクルセイダーはアルヴィンさんです。よろしく、エリカ
さん」

 ◆

 レイは自分の父の眼を見据えながら静かに口を開いた。
「オヤジ、まずウェルガについて教えてくれ」
 ラクールがコクリと頷いた。
「あいつはダークロードの眷属、闇の眷属の生き残りだ。20年前の大戦中
は何度も奴と戦った記憶があるな」
「あいつはオフクロの事も知っているようだった」
「それは聞くまでもないことだろう。マリアは…お前の母もまた七英雄として
ダークロードと戦ったんだからな」
 マリア=ハロウド、闇の王の恐るべき魔力に最後まで屈せず、天空を貫く
光でそれを討ち果たした七英雄の象徴的存在、戦いの後、ラクールと結婚、
結婚後はマリア=フレジッドと名乗り、山岳都市フェイヨンでレイを出産、ラ
クール達3人はフェイヨンで平和に暮らしていた、のだが。
 レイを産んでから3年後にマリアは彷徨う者と名乗る妖かし侍にさらわれ
てしまった。マリアは何故さらわれたのか。ラクールもレイもその理由には
見当はついていた。

 『ラグナロク』

 マリアの持っていた力。そして現在、レイに受け継がれている力。
「じゃあ…レイって七英雄が両親だったんだ…」
 フィリが驚いたように口を開いた。
「ああ、でも俺は俺だし、オヤジとオフクロとは関係ないさ」
「うん」
 レイがそう答えるとフィリが素直に頷いた。
「ところでオヤジ、死の眷属って何だ?」
「知らん。ジュニアの方が詳しいんじゃないのか?」
 話を振られたジュニアが首を横に振った。
「魔軍七大勢力にも、その他の魔族にもそんな存在があるなんて聞いたこと
もないよ」
 魔軍七大勢力、魔物の王たる魔王の中でも特に力の強い魔王が統率する
魔物の軍団の事である。その七大勢力とは

 「魔族の帝王」バフォメット率いる『魔の眷属』
 「亀族の大将軍」タートルジェネラル率いる『武の眷属』
 「幽鬼なる海魔」ドレイク率いる『幽の眷属』
 「古の黄金王」オシリス率いる『古の眷属』
 「インセクトクィーン」マヤー率いる『蟲の眷属』
 「世紀末覇王」オークロード率いる『亜の眷属』
そして
 「闇を統べる者」ダークロード率いる『闇の眷属』

のことを指す。だがダークロードは20年前に倒されたため、実質的に闇の
眷属は崩壊状態にある。そして、その魔軍七大勢力にも他の小規模勢力
にも死の眷属など存在していないのである。
「わからんな」
 ラクールは正直にそう言った。
「だよな…」
 レイは頷いた後、フィリが口を開いた。
「だけど、ウェルガって人がレイのお母さんの事を言っていたんでしょ?」
「ああ、オフクロが生きているってこともな」
 それを聞いたラクールが目頭を手でおさえた。
「そうか…マリアはまだ生きているか…」
「オヤジ…」
 少し泣いているのかラクールの肩が震えていた。
「フ…フ…フフ…」

 びく

 突如ラクールが肩を震わせて笑い出したのに驚いた3人は慌てて体を引
いた。ラクールはそのままゆらりと立ち上がった。
「そう…愛するマリアを取り戻し…あのラブラブな日々に戻るのだ!ハ〜ッハ
ッハッハ!!」
「あのさ…オヤジ…」
 突然、狂ったように笑い出すラクールにビビりつつレイが恐る恐る言った。
「今後どうする?」
 ラクールはバカ笑いを止め、どかりと椅子に座った。
「ウェルガのバカを捕まえて、意地でもマリアの情報を吐かせる、これしか
ないな」
「やっぱりそうなるか」
「と言っても結局目的地が決まってるわけででもないからな。今まで通りの継
続でやるしかないだろう」
「ならオヤジ、俺はモロクに行く」
 レイの提案にラクールだけでなく、フィリとジュニアも驚いていた。
「砂漠越えするつもりか。何か理由でもあるのか?」
「目的地がないなら、どこだっていいだろ。それに…」
 レイはチラリとフィリの方に視線を向けた。フィリがレイの意図に気が付い
た。つまりレイは目的地がないなら昨日出会った『道化師』の占いに乗って
やろうと考えているわけだ。
 つまりそれはフィリの出生を探すという旅の目的をレイはしっかりと見据え
てくれているということだ。
「モロクは俺もオヤジもここ数年行ってないだろ?」
「まぁな、じゃあそっちは任せたぞ」
「ああ」
 レイはフィリの方を向いて悪戯っぽい笑みを浮かべた。と、そこでジュニア
が手をあげた。
「あのさ、そろそろツッコミ入れていい?」
「ん、どうした?」
 ラクールが聞き返す。
「外、そろそろ何とかした方がいいんじゃない?」
 ジュニアに言われて3人が喫茶店の外に視線を向けた。

 喫茶店の外ではミストレスの放った電撃で黒焦げになった冒険者が山積み
になっていた。それを見たラクールが一言。
「おお、忘れてたぞ」
「忘れんなよ!!」
 レイがツッコミを入れたが、さらにジュニアがツッコミを入れた。
「いや君もね」
 その後、4人はミストレスを追い返す(?)のに半日を費やすこととなった。

 [続]


〜あとがき〜
思うように書いてたら話が全く先に進んでねぇΣ(´Д`;)
登場人物で英文字の方はカタカナに表記変更させてもらってます。
っつーか個人的には早く第2部がやりてぇぇぇぇぇ((((;゚Д゚)))
でもまだしばらくは第1部です。
長さ的には 第1部<第2部<第3部 と長くなる予定なんですけどね。
次回はこの話の続きです。


〜登場人物紹介〜
○ケイル
とんでもないワルなローグ。
とんでもないオヤジにケンカを売ってあえなく轟沈。



〜Web拍手の返答〜
>女性の方3つどれが誰だかきりきり答えなさい(#゜Д゜)つ))∀゜)
>男性の方はすぐわかったのでw

それは…うゔっ!突然持病の顔面神経痛がっっっっ!!

>ぷにぷに・・・がんばー
(*´∀`)σ))Д`)

>周り凶暴なのばかり
>トレントさんが集めてきた
>凶暴なのがトレントさんの好みのタイp・・・ゲフンゲフン

外面にだまされまs…うわー何をするおまぃらーぁぁぁ……(フェードアウト

>樹海伝の頃から読んでました^^頑張ってくだせぇ〜
あっちから読んでてくれるとは感謝!ヽ(´ー`)ノ
こちらは行き当たりばったりな樹海伝と違って一貫して
ストーリーを定めてますので、さらに面白くする予定です!



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