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Ocean's Blue

012:自分達の道

 親兄弟に偉大な人物がいると、まわりの者はコンプレックスを感じる。

 正解だ。

 俺の兄貴はあの「皇帝」に対抗するほどの実力者。

 対する自分は日々を漫然と過ごす体たらく。

 俺に何ができるだろうか。

 俺にできることが、あるのだろうか。

 ◆

 砂漠の都市モロクの北西にある古代の建造物、それがピラミッドである。あ
まりに有名なその建造物には今までにも数多くの冒険者が挑み、そして命
を落としていった。この建造物に挑んだ先人たちにより、建造物の構造はか
なり解明されてきたものの、深入りしたものはすべからく帰らぬ人となった。
またピラミッドの最上階には魔軍七大勢力の一角、『古の黄金王』と呼ばれ
る魔王、オシリスがいるとも言われている。

 今回はそのピラミッド内にアジトを構えているシーフギルドからの依頼であ
る。シーフギルドの話によると地下から2匹のミノタウロスが出現し、シーフギ
ルドの人々に危害を加えているのだという。
「そこで俺たちに依頼がまわってきたというか巻き込まれたというか」 
「わ、私!頑張ります!」
 ピラミッドの中、前を歩く騎士の背中を見ながら説明するイアルは緊張の
ためかガチガチになっているティアの背中をポンポン叩いた。
「んな力むことじゃないって、それに…」
 前を歩くあの騎士、おそらく「あのギルド」の騎士だ。イアルの兄、ロウガが
「皇帝の十字架」とは別に対立しているもう一つのギルド。言うならば自分た
ちはロウガの弾除けに使われた、とでも言えばいいだろう。
「それに、騎士さんなら余裕だよな?ミノタウロス程度なら」
 質問された騎士が振り返らず答えた。
「騎士さんじゃなくて、すけぽ。ミノタウロスくらいならどうとでもなる、と思う」
 おそらく、ロウガとこの騎士…すけぽを組ませてミノタウロス退治に向かわ
せて、ロウガの現在の実力を測ろうとしていたのだろう。相手側のギルドマス
ター、あの銀髪の騎士は。ロウガはそんなものには引っかからないとイアル
達に依頼を押し付けた、それがこの状況の真相であろう。
「う〜!ピラミッド内って不気味ですね…」
 それをこの少女に言う必要はないだろうと、イアルは自分の考えを口に出
すことはしなかったが。

「ストップ」
 すけぽがイアル達を手で制止した。3人はその場で足を止めた。
「何か…いるんですか…?」
 おそるおそる聞くティアの発言が聞こえているのかいないのか、すけぽは
無言で手を背中にのばした。

 ぼりぼり

「満足した。れっつごー」
 背中をかいて満足したすけぽは再び歩きはじめた。
「……」
 イアルとティアは完全に硬直していた。というか気が抜けたとも言う。
「か…」
 イアルが何とか言葉を絞り出す。
「かゆかっただけかよ!」
 すけぽが振り向いた。
「背中がかゆいときにかくのは当然だし」
「〜〜〜〜っ!!」
 全くもってその通りだが、どこかズレている反論にイアルが頭を抱えた。
「あ…はは…、でも緊張は解けたかも」
 ティアが何とかフォローを入れるものの、イアルは疲れきった表情を浮か
べるだけだった。

「ストップ」
 再び、すけぽが2人を制止した。
「何だ?今度は頭がかゆいとでも言うのか…?」
「いや」
 すけぽがそばの壁を指差した。
「来る」

 ドガァァァァァァァァァァ!!

 その瞬間、壁をぶち破って2匹のミノタウロスが出現した。
「まじかよ!」
 イアルは新調したダガーを構えた。ティアも慌てて小型のバトルアックスを
手に持った。ティアはまだ重さに慣れていないのかふらついていた。
 すけぽはパイクと呼ばれる小型の槍を構えた…時には遅かった。

 ごづん!!

 ミノタウロスによってすけぽの脳天に鉄槌が振り下ろされ、クリーンヒットし
た。ティアが悲鳴を上げる。
「すけぽさん!!」
 ミノタウロスの鉄槌を頭に受けたまま、すけぽの動きが止まっている。ミノタ
ウロスの鉄槌は軽く500キロを超える重さだという。そんなものを頭に喰らえ
ば…まず間違いなく死ぬ。
 だが、すけぽは死んでいなかった。そしてこう呟いた。
「痛っ」
「痛っ…?」
 イアルとティアの声がハモる。その瞬間、もう一匹のミノタウロスが咆哮を
上げ、すけぽの背中に鉄槌を振り下ろした。

 バギギッ!

 凄まじい轟音。そして、すけぽが呟いた。
「痛い痛い」
「痛い痛い…?」
 イアルとティアの声が再びハモる。すけぽは頭をぽりぽりかきながら、イア
ルとティアにピースサインを出した。
「イェーイ」
「いぇーい…って…」
 ティアが顔を引きつらせる隣で、イアルが冷静に状況分析した。
「まさか…すけぽって超鈍いとか…」
 といっても限度があるような気もするが。
「ちょっと痛いねぇ」
 すけぽがそう言いながら小型の槍、パイクを振り上げた。
「でももう飽きた」
 その瞬間、すけぽが放ったピアースと呼ばれる無数の突きがミノタウロス2
匹を瞬殺した。

 ◆

「結局何もしてねぇ…」
「私も何もしてないです…」
 ピラミッド内の道を引き返している途中、イアルとティアはそうぼやいた。
「でも…すけぽさん凄かったです」
 ティアがそう言葉をもらした。確かに途中までは変な奴と思っていたが、最
後のピアースは見事としか言いようがなかった。すけぽの所属しているギル
ド、あの銀髪の騎士のギルドにはこのようなメンバーがまだまだいるという。
そして兄であるロウガはこのギルドを毛嫌いしている。一度だけ嫌っている
理由を聞くとロウガは不機嫌な声で答えた。
『俺たちはスケープゴートだとさ』
 ロウガはそう言った。スケープゴート、犠牲の羊、銀髪の騎士にそう言われ
たのだろうか。イアルには意味がわからなかったが、ロウガはその意味する
ところに気づいているらしく随分と機嫌が悪かった。

「そう言えば…」
 先頭を歩いていたすけぽが口を開いた。
「君たちは何のために冒険者になった?」
「…」
 イアルとティアは口をつぐんだ。やりたいことを見つけるために冒険者に
なった、目的のない目的だからだ。漫然としている目的。
「そうか」
 すけぽは少し微笑んだ。
「まだ見つけてないか、自分たちの歩く道を」
「すけぽさんは…何か目的があるんですか?」
 ティアが逆に問い返すと、すけぽが足を止めた。
「ある」
 すけぽは一息ついた後、哀しげに笑った。
「でも俺達のその夢は…叶うことはないだろうけどね…」
 その瞬間、イアルにはすけぽのその姿があの銀髪の騎士とかぶって見え
たような気がした。

 ◆

 シーフギルドからの報酬をキッチリ3等分すると、すけぽは2人の前から
去っていった。報酬に関しては自分たちは何もしてないから少なめで構わな
いと言うには言ったのだが、すけぽは頑として首を縦に振らず、そのまま3等
分してしまったのだ。
 というわけで2人の手元には随分なお金が転がり込んできていた。
「これで、ちゃんとお金を払って宿に泊まれる〜♪」
 ウキウキと前を飛び跳ねながら歩くティアの後ろを歩きながら、イアルは
考え込んでいた。すけぽは言った、自分たちはまだ歩く道を見つけていない
と。
「ティア」
 イアルはティアに声をかけた。
「どうしたんですか?」
「自分たちの歩く道…俺と一緒に探してみないか」
「…っ」
 ティアがその言葉に驚いた表情を浮かべた。
「俺は日々を漫然と過ごすのが嫌で冒険者になった。だけど結局は何も変
わってない。だから…俺は世界を旅してみようと思う。だから…」
「わ…私も…」
 ティアが口ごもりながら、それでも最後にははっきりと言葉を口に出した。
「私も!自分の歩く道を見つけたいです!」
 イアルとティアは顔を見合わせると、互いに笑みを浮かべた。


 『人と人の出会いは偶然でなく、すべからく必然である』

 『ならばこの出会いもまた必然』

 『全ては我らが祖の与えたもうた運命』

 『そして』

 『運命が交錯することもまた必然』


 詠い終わった『道化師』はモロクの街中へと姿を消していった。

 その日の夜、レイ達がモロクへと到着した。

 ◆

 砂漠の都市モロクへと到着した次の日、レイとフィリは街へと買出しに出て
いた。
「暑いね…」
「だな…」
 かなりのローテンションで歩く中、2人はある一角に人だかりができている
ことに気がついた。フィリが小首をかしげる。
「何だろ?」
「さぁな…このクソ暑い中…密集するとは…やるなモロク人」
「モロク人…」
 暑さのためか発言が少しズレているレイとともにフィリはその人だかりの中
に身体を割り込ませた。

 天女かと思った。

 フィリは後々この時の感想をこう述べることになる。
「凄い…」
「ああ…」
 2人が感嘆の声をもらす視線の先には、一人のダンサーの姿があった。そ
のダンサーの舞は美しく、その場にいる誰もが見惚れるほどの素晴らしさで
あった。

 そして数刻過ぎた後、舞が終了した。終わると同時に人だかりからは割れ
んばかりの拍手の嵐が巻き起こった。
「ティア…この女の人って、誰なの?」
 フィリは隣で舞を見ていたティアに質問した。
「ミサキ=リフレクトっていうダンサーで、各地を転々とまわっている人らしい
よ、お姉ちゃん」
「へぇ〜…ところで」
 フィリがぎぎぎぎと首をティアの方へと向けた。
「何でティアがここにいるの?」
「うあっ!バレたっ!」(←ダッシュ)
「待ていっ!」(←捕まえた)
 ティアを捕まえるとフィリは腕卍ひしぎを決めつつ、もう一度質問した。
「なーんーで!ここにティアがいるのっっ!?」

 めきめきぐぎぎぎみしぃぃぃぃい!

「うぎゃあああああ!待って!ギブ!お姉ちゃんギブギブ!ロープ!」
「やめとけって…なんつうか恥ずぃし…」
 レイは通行人の目を気にしつつ、フィリからティアを救出した。
「ぜはーぜはー…で、何でティアがモロクにいるのっ!」
「えへへ、私も冒険者になったの♪」
「だからどうやってモロクに来たの!?」
「一人で砂漠越えしちゃった♪」
「頭大丈夫!?」
「…耳に痛いです」
 行き倒れたティアは申し訳なさそうに縮こまった。レイはフィリとティアから
視線を外し、ティアの連れの男…イアルの方を振り返った。
「それでお前が助けてくれたのか。イアル」
「知り合いかよ、世界は狭いよなぁ。ま、久しぶりだな、レイ」

 ◆

「そうか、まだオフクロさんは見つかってないのか…」
「手がかりが手に入っただけ前よりかはマシだけどな」
 妙な再会を果たした4人は近くの喫茶店に入った。そしてたった今、互いの
状況のあらましを説明し終わったところである。
「イアル〜」
「ん?」
 ティアに名前を呼ばれたイアルが返事をした。
「私たちもお姉ちゃん達の旅についていかない?」
「俺達がか?」
「私たちには目的がないんだし、お手伝いってことでさぁ」
 イアルは少し思案した。
「それもいいかもな。レイ達が迷惑じゃないなら…だけどな」
「待った待った」
 レイが2人の話をさえぎった。
「俺の旅の危険性は言っただろ?ウェルガとかいう変な魔族には襲われるし
さ、危険と隣り合わせすぎる」
「そうよ、ティア。私達の旅は危険なの」
 そう言葉を続けるフィリにティアが半眼で答えた。
「お姉ちゃんはレイさんと2人きりのラヴラヴな旅がいいだけでしょ」

 ずがし!!

「ずあ゙っ!!」
 突然、妙な音ともにティアの顔が蒼白になった。どうやらテーブルの下で
フィリに足を潰されたようだ。
「ティア、何か言った?」
「な゙…な゙に゙も゙言っでま゙ぜんっ!!」
 ティアが半泣き状態で答えた。フィリはティアの足を解放しつつ、言葉を続
けた。
「それに私達は今4人で行動しているの。似非バードと聖騎士の女の人」
「似非バードって何だ…」
 イアルが口元を引きつらせながらレイに聞いた。
「気にするな」
「いや気になるぞ!おい!」
 レイに詰め寄るイアルの隣でティアが懇願するように言った。
「4人が6人になった所で大差ないし〜お姉ちゃん〜私達も入れてよ〜」
「あ〜も〜!だから!」
 何か言おうとしたフィリをレイが手で言葉をさえぎった。
「わかった」
 ティアが表情を輝かせる。
「じゃあ!」
「ただし、危険と判断したら手を引くんだ。それだけは約束してくれ」
「うん!」
 レイがイアルに視線を向けた。
「俺もそれでいいさ。危険すぎるのは俺も勘弁だしな」
 そう言うとイアルは肩をすくめた。

 こうしてレイ達のパーティに新たな仲間が2人加わった。

 [続]


〜あとがき〜
やばい。ストーリー展開が自分の中で急すぎる気がするΣ(´Д`;)
でもダラダラしたくねぇしなぁ…とか思ったりもするのでコレでよし!(ぉぃ
ていうか登場人物が次々と増えていってるので、
わけわからなくなってる人が増えるとヤだなぁ…orz
一応、今回で出揃った6人が第1部のメインメンバーになります。
ちなみにモロク編がもうちょい続く予定です。


〜登場人物紹介〜
○すけぽ
銀髪の騎士のギルドメンバーの一人。
鈍いが硬い堅い固い。

○ミサキ=リフレクト
各地を回っている天女のごとき舞を披露するダンサー。



〜Web拍手の返答〜
>トレントさんの大物度が気になりますね
小説内じゃそれなりに大物です。リアルだとナイス害です(゚∀゚*)

>交わらざりし生命に今もたらされん刹那の奇蹟 時を経て…
>ここに融合せし未来への胎動!愛封殺!(==
言葉長ぇし、何言ってるかよくわからんネタを振らないでくださいorz

>週二回upキボン(*´∀`)
それするとトレント君、ゴートゥーヘルッ(*´∀`)



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