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Ocean's Blue

019:幽鬼なる海魔

 ギィー…

 ギィー…

 レイ達の乗っている船にゆっくりと近づいてくる幽霊船。そして、
「うわぁぁあああ!ぶつかるぞ!」
「逃げろっ!」

 ゴガァァァァァ!!

 幽霊船はレイ達の乗っていた船を押し潰しながら停止した。レイ達はすん
での所で港のほうへと逃げ出したため無事だった。だが無事でいられるの
はここまでだということは誰もが理解できていた。
 幽霊船の船の舳先に立つ魔王の存在がそう思わさせるのだ。

「魔軍七大勢力…『幽鬼なる海魔』…ドレイク…何故ここに…」
 フィリの父であるオールドが苦い呻き声をもらす。するとドレイクがレイ達に
視線を向けた。

「虫を潰すのに…理由がいるのか?」

 ドレイクの冷徹な言葉にオールドを含む全員の表情が凍りついた。
「理由などないが…強いて理由を上げるとするならば…暇潰しという所か」
 ドレイクのその発言にフィリが大声で反論した。
「ふざけないで!そんな理由で…っ!!」
 その言葉を受けてドレイクが嘲笑した。
「ほう、我を恐れず言葉を返せるものがいたか。だが小娘よ、力無き者が語
る言葉に意味など無い。我を止めたくば…力で示せ」
「ダブルストレイフィング!!」

 ゴゥン!!

 その瞬間、レイの放った矢の衝撃波がドレイクに突き刺さった。レイはドレ
イクの前に対峙していた者達へと振り返らず叫んだ。
「いったん退くぞ!」
 レイのその言葉を受け、皆が半ば恐慌状態に陥りながら逃げ出した。

 港から離れていく人間達を遠めに見つつ、ドレイクが言葉を吐いた。
「力無き者は喰われる定め、餌を逃がさぬ檻を作るのも一興」
 ドレイクは腰に差してあった血塗られたサーベルを抜き放つと、嵐が渦
巻き始めている空へと向けた。
Watery Grave
 ドレイクが吐いたその言霊によって港町アルベルタは黒く濁った水のドー
ムで覆われていった。
「この街に住まう人間ども、残り少ない余生を苦しめ」
 ドレイクの言葉と同時に幽霊船から無数の死霊が港町アルベルタへと侵
入を開始した。

 ◆

 死霊がアルベルタを蹂躙するがごとく飛び交っている。

 たった1時間前まではあんなに平和だった街が、今は絶望に包まれてい
る。レイ達はグロリアス家の屋敷に逃げ込むと、侵入されないように木の板
を扉や窓に打ち付けた。
「付け焼刃な上に時間稼ぎになるかもわからないけどな」
 イアルはそう言いながら、手早く木の板を打ち付けていった。レイはアルベ
ルタの地図を居間の大テーブルの上に広げた。
「幽霊船が現れたのはここだ。ドレイクはここから動かないだろうな」
 オールドが険しい表情でレイに質問した。
「レイ君、黒く濁った水が街を囲むように包んでいる。これは一体…」
「おそらくそれは俺達人間を逃さないようにする結界でしょう。つまり逃げ道を
塞ぎ、さらに俺たちの増援すら不可能にしています」
「…っ!近隣にフェイヨンの弓兵団がいるというのに…助けすら呼べないの
か…」
「それに…ドレイク相手では誰が援軍に来ても変わらないでしょう」
 レイは苦々しい声でそう言った。しかもまだアルベルタに到着していない
ジュニアとエリカの2人もまた、この街に入れないということだからである。こ
の非常時にあの2人が抜けるのは戦力的に痛すぎる。
「それに無いものねだりをするのは無駄もいい所です。手早く作戦を立てて
何とかしましょう。被害が拡大する前に」
 レイのその言葉を受けてフィリが地図の一点を指差した。
「幽霊船の真反対のここなら、結界が少しは弱いんじゃない?ドレイクを無
理に倒すより、ここを破って逃げた方がいいかもしれないよ」
「ドレイクの魔力を上回ることが出来るやつがいれば結界を破れるが…」
 レイはフィリに視線を向けた。
「そんな奴はいないだろうな。ここには…」
「…うん」
 そもそも人の身で魔軍七大勢力の魔王に対抗できるのは、ラクール=フ
レジッドなどの『七英雄』か「皇帝の十字架」のギルドマスター、アイフリード
=フロームヘルくらいであろう。
「こんな事は言いたくないのだが…」
 オールドが言いにくそうに呟いた。
「レイ君、君なら…対抗できるのではないか…」
「…」
 オールドの言葉を受けて、レイが沈黙した。

 沈黙が部屋の中を支配する。

「…ダメだよ」
 フィリが声を荒げた。
「そんなのダメ!お父様は自分が何を言っているのかわかってるの!?」
 突然、怒気をあらわにしたフィリに一番驚いたのはレイだった。
「フィリ…まさか知ってるのか」
 フィリは目に涙を浮かべながら叫んだ。
「レイのお父さんが教えてくれた!レイは身体に爆弾を抱えてるって!そし
てそれを使うと…何か大切なものを失ってしまうって!」
「…っ!親父の奴…余計な事を…」
 レイが苦々しげに呟くと、フィリが唐突にレイを抱きしめた。痛いほどに。
「ダメ…自分を犠牲にしようだなんて考えないで…お願い…」
「…」
 涙ながらにそう言うフィリに、レイは言葉を失った。すると、その様子を静観
していたミリアが言葉を発する。
「私もフィリと同感、自己犠牲なんて何の役にも立たないわ。だけど、私たち
にドレイクを倒す手段がないのも事実よ。さっきの会話からすると、レイ君が
ドレイクを倒せるかもしれない手段を持っているのも事実」
 皆がミリアの言葉に耳を傾けた。ミリアは険しい表情で言葉を続けた。
「だから、私たちでやれるだけやって、それでもダメならレイ君に犠牲になっ
てもらう。酷い言い方だけどね」
「お姉ちゃ…!」
 反論しようとしたフィリの言葉をレイが手で制す。
「わかりました。どの道それしかないでしょうし」
「レイ…っ!」

 なおも反論しようとするフィリをレイが抱きしめ返した。
「フィリ」
「…やだよ、レイが犠牲になるなんて…」
「フィリ、聞いてくれ」
「私はそんなのイヤ…」
 フィリが涙をこぼし、レイの服が涙で濡れていく。
「フィリ、俺は諦めない」
「レイ…」
「絶対に諦めない。絶対に皆で生き延びる。絶対に…皆を、フィリを護ってみ
せる。そして、俺自身からも何も失わせやしない」
 その言葉にフィリが目を見開いた。
「レイ…私…」
「信じてくれ」
「うん…わかった。私、レイを信じる」
 レイとフィリは1時間前の続きをするかのように唇を重ねた。レイはそっと唇
を離すと、にやっと笑った。
「続きは帰ってきてから…な?」
「…うん」
 そんなラブラブな2人を見てイアルが一言。
「この非常事態にヨユーですな……って!!」

 ドォゥン!!ドォゥン!!

 グロリアスの屋敷が揺れ始めた。
「うあ!死霊がいっぱい取り付いてるよ!」
 木の板の隙間から外の様子を見たティアが悲鳴を上げる。グロリアス家の
外では無数の死霊が中に侵入すべく壁に向かって体当たりを始めていた。
「幽霊って壁をすり抜けれるモンと思ってたけどな」
 イアルが軽口を叩く。それを聞いたレイ達が表情が少しだけ和らいだ。諦
めたわけではない。むしろその逆、やる気十分な証。勝てる可能性は0に等
しいが、それでもまだ『負けてない』。
 さっきまでは誰もが「死ぬ気」で戦うつもりだった。だが今は違う、皆「生き
て帰る」つもりで戦おうとしている。それでいいのだ。生き抜く意思は何よりも
強いものだから。
「じゃあ一世一代の大勝負…行くとするか!!」
 レイがガイストを肩に乗せ、ハンターボウを手に取った。仲間たちも己が武
器を取って身構えた。

 ドガシャァァ!!

 壁と木の板を破って屋敷の中へと侵入してきた死霊達とレイ達の戦いがは
じまった。

 ◆

 「トレント★樹海団」のナンバー3であるフィン=ロルナークは思いっきり事
態に巻き込まれていた。実は彼がアルベルタにいるのはギルドマスターであ
るトレントの策謀だった。
「あのクソギルドマスター絶対許さねぇぇぇ!!」
 トレントは先月、『山岳都市フェイヨンに集まれ』という手紙をギルドメンバー
全員に出していた。だが何故かフィンだけ『港町アルベルタに集まれ』と
いう手紙を送っていた。理由は簡単、トレントの悪ふざけである。フィンは先
ほど助けたカプラ職員から渡された手紙でその事実を知った。
「しかもすんげぇ魔王に襲撃されてるし!最悪すぎやああああああ!!」
 フィンは死霊であるレイス達を蹴散らしながら、心の中でトレントを1000回
は八つ裂きにした。

 =トレントからの手紙=
『おお、フィンすまん。ギャグだネタだ許せ。集合場所フェイヨンだから頑張っ
て来いよ。3秒でな。ああ、怒るなよ?ちょっとした茶目っ気だって♪』

「許せるかアホォォォォォォォ!!」
 要するに、フィンはトレントの茶目っ気で生命の危機に陥れられていた。


 〜その頃のトレント〜

 山岳都市フェイヨンにやってきていたトレントはくしゃみをした後、一言。
「ん、ステキな俺の噂を誰かがしてるな」
「多分、フィンが怨嗟の声を吐いてるだけだと思うんだけど…」
 ルアーナがトレントのその言葉にツッコミを入れていた。

 ◆

「っっらぁぁあああああ!!」
 イアルは裂帛の気合いとともに死霊達をダガーで斬り裂いた。その後ろか
ら援護するようにレイの放った無数の矢が死霊達を撃ち落していく。2人が怪
我を負えば、フィリがヒールなどの回復する。
「インクリースアジリティ!」
 フィリの支援魔法がイアルとレイにかかり、イアルとレイの移動速度が増
す。ガイストはフィリを護るようにフィリの傍を低空飛行していた。

 基本的な連携こそが勝利への近道である。

 レイ達3人は少しずつ、ドレイクの待つ幽霊船へと近づいていた。ちなみに
オールド、ミリア、ティアの3人はグロリアス家に立て篭もって戦っている。
「幽霊船がそろそろ見えてきたな」
 レイのその言葉にイアルとフィリの表情が引き締まった。

 港町アルベルタは死霊達の攻撃を受け、すぐに廃墟になると思われてい
たが、そうではなかった。アルベルタにやってきていた冒険者達が力を合わ
せて死霊達の排除に当たっていたからだ。そしてドレイクに挑んだ冒険者達
もいたようだが、その全てがドレイクによって無慈悲に殺されていた。
 だがドレイクを倒さねばアルベルタに未来は無い。
「行くぞ」
 幽霊船へと続く道にいた最後の死霊を撃ち落したレイはフィリとイアルとと
もにドレイクの前へと躍り出た。

 ◆

 これで何組目かは忘れたが、ドレイクは再び現れた人間達と対峙し、それ
が先ほど逃げ出した者達と気づき嘲笑した。
「逃げられぬと知り、向かい来るか」
 レイがハンターボウの狙いをドレイクの眉間に定めた。
「その余裕、身をもって後悔させてやるぜ!」

 ゴッ!!

 レイの放った矢がドレイクの眉間に突き刺さった。ドレイクの眉間に突き刺
さった矢はそのまま腐食してボロボロに崩れ落ちた。
「…いいだろう」

 ザ…

 ドレイクが幽霊船から飛び降り、ゆっくりとレイ達の前へと降り立った。物
凄い威圧感に3人の表情が強張る。そんな3人へゆっくりと間合いを詰めな
がら、ドレイクが言い放った。
「我は『幽鬼なる海魔』、絶対なる海の覇者にして、至高の魔王」
 ドレイクから発した凄まじい<気>が爆発した。
「我が名はドレイク。我が力、死に行くまでに思い知れ」
 決戦の火蓋は切って落とされた。

 [続]


〜あとがき〜
色々展開が予想できるこのお話。
この後、どーやって第2部に続くのかっ!とか思われないですかね。
無論、ちゃんと考えてます。
ていうか小説の裏設定を書いた紙を見たら言葉がビッシリ。
自分でよく書いたなとか思いましたよorz


〜登場人物紹介〜
○ドレイク
魔軍七大勢力、『幽の眷属』を率いている魔王。
「幽鬼なる海魔」と呼ばれている幽霊船長。
詳しくは次回のお話から。



〜Web拍手の返答〜
>らぶこめ作家本領発揮バンザイヽ(´ー`)ノ
何のことだかさっぱりわかりません^^

>レイが未練ない男だったらアルベルタは滅んでましたか?
それはもう凄いことになってたかもしれませんっ

>ガンホー転生情報出しません!
>ガンバッテマス!!_| ̄|○
癌○社員:すぐに転生情報出したら金取れないだろwwww
癌○社員:小出しにしていっぱいお金をむしり取らないとねwwww

>青汁もきれたぞ〜(=w=)ノシ
ていうか飲んだんかぃ!


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