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Ocean's Blue

027:ギルド結成

「う…あぁぁああぁぁあああああああ!!」
 レイはフィリの腕を振りほどき激情にまかせるまま彷徨う者に殴りかかっ
た。拳が彷徨う者に当たった瞬間、彷徨う者が砂に変化して崩れ落ちる。
「な…っ!!」
 レイは驚きの声を上げると手を思わず引いた。彷徨う者は完全に砂になり
消滅した。そしてそこには一振りの刀が───

 ビョゥ!!

 その刀が物凄いスピードでレイの隣を飛びさり、フィリの頭上をかすめ、2
人の背後にいた男の手に収まった。レイは振り返りその男の姿を確認する
と、感情に憎悪をこめ、その名を呼んだ。
「ウェルガ=サタニック!!」
「久しぶりだな、レイ=フレジッド、元気そうで何よりだ」
 レイはフィリの隣まで駆け寄ると、ウェルガを睨み付けた。レイはそこで気
づいたのだがウェルガの他にも目深にフードをかぶった魔術師がウェルガ
の背後に立っている。レイは誰かわからなかったが、ラクールなら気付いた
だろう。この魔術師は『七英雄』のハウゼンだ。
「これは…どういうことだ…っ!!」
「クク…簡単な事だ。『彷徨う者』とは実際には存在しない魔族、この刀…
『妖刀村正』を媒介とし、我らが新たな主が生み出せし影」
「新たな…だと?」
 ウェルガがクックと嘲笑った。
「そうだ。我らが新たなる主となったあの『人間』は我々に言ったよ。計画は
詰めの段階に入ろうとしているとな。我々は今まで意味なく動いていたわけ
ではない…」
 ウェルガの背後の魔術師…ハウゼンが口を開く。
「13年前、我々の主に手によってマリア=ハロウドは凍れる死者の都へと
『封じられた』、それすら我々の計画の一部であったということだ」
「あなた達は何を…しようとしているの…っ!」
 フィリの言葉を受けてウェルガが愉快気に笑った。
「クック…それを言う必要があるのかね?それに案ずる事はない。フィリ=
グロリアス、君も我々の計画の一端を担っている」
「私…も?」
 レイがフィリをかばうようにフィリの身体を自分の背後に押しやる。
「ウェルガ、それでお前は何を俺に伝えに来た?」
「ほう…何故そう思うのかね」
「殺しに来たならとっくに俺は殺されてるさ。弓が引けないんだからな」
 ウェルガがその答えに満足したのか口元に笑みを浮かべた。
「…いいだろう。我らが主からレイ=フレジッド、貴様へ伝言だ」
「…何?」
「我々は計画の詰めとして、ルーンミッドガッツ王国の主催している『ギルド
攻城戦』を利用させてもらう」
「「なっ…」」
 レイとフィリの驚きの声が口からもれた。
「そして我らが主からの伝言はこうだ。我らが主も『ギルド攻城戦』に参加し
ている。止めたくば、見つけ出して力づくで止めてみろとな」
 ウェルガの背後にいたハウゼンが再度口を開いた。
「信ずる信じずはお前たちの自由だ。お前たちが参加するにしろ…しないに
しろ…我々の計画に揺るぎはない」
 レイがウェルガを強く睨み付けた。
「それを俺に伝えて…お前らにメリットはあるのか?」
「クック…ちょっとした余興だと思ってくれればいい。では…レイ=フレジッド、
フィリ=グロリアス、いずれまた会おう」
「ま…待てっ!」
 ウェルガとその背後にいた魔術師は、レイの制止など意に介さず、姿を消
した。レイは今にも爆発しそうな激情を押さえ込みながら、決意した。

 奴らと決着をつけよう…と。

 レイとレイのまわりの人々の真の平穏を取り戻すには奴らを倒し、後顧の
憂いを完全になくさねばならない。例え弓が引けなくとも、戦わなければなら
ない。

 ◆

 それから1週間後、グロリアスの屋敷にはドレイク襲来の際までともに旅を
していた仲間達…ジュニア、エリカ、イアル、ティア、そしてガイストがやって
きていた。さらにレイの父であるラクール=フレジッドの姿もあった。
 レイ、フィリ、オールド、ミリアの4人も同じ室内におり、計9人と1匹が今後を
どうするかの話し合いをするために集まったのだ。
「これは罠の可能性が高い。だけど奴らは言ったんだ。『ギルド攻城戦』を利
用すると、そして奴らの主とやらは…それに参加していると」
 レイの言葉を受けてイアルが口を開いた。
「レイ、俺達が聞きたいのはそーゆーことじゃないぞ。俺達はお前が今後ど
うするかを聞きに来たんだ」
「俺は…『ギルド攻城戦』に参加しようと思う」
 ジュニアが口を挟んだ。
「たった一人で?そりゃ無謀だね。弓も引けないのに」
 レイは言葉を絞りだした。

「だから、皆に助けてほしい…」

 レイが心の底から絞り出したその言葉を受けて、ジュニアやイアル、エリ
カ、ティアが笑みを浮かべた。
「当たり前だろ、俺達は仲間なんだからな」
「困ってる友人を助けないのは魔族の名折れさ」
「私も協力させてください」
「レイお兄ちゃん!私もやるよ〜っ!!」
 そんな彼らの友情に目頭を熱くしながら、今度はオールドが口を開いた。
「では、レイ君に私から餞別だ。弓が引けないのなら別の武器を使えばい
い。剣は多少扱えるのだろう?」
「まぁ、それなりには…オヤジに鍛えられてた時期もありましたし」
 オールドはミリアに目配せをすると、ミリアがいったん部屋をでて、一つの
大きめの箱を持って戻ってきた。それを見たラクールが驚きの表情を浮か
べた。
「おい、オールド…それは」
「ラクール殿、私は今こそこれを託すべきと思いますが?」
「…わかった、好きにするといい」
 オールドはミリアの持ってきた箱をおもむろに開いた。そこには──


 紅蓮の炎のごとき真紅の刃を持つ炎の宝剣

 蒼氷のごとく透き通った輝きを持つ氷の宝剣


 これら2本の宝剣が鞘に納まった状態で箱の中に鎮座していた。
「これは…?」
 レイがオールドに尋ねると、オールドが口元に笑みを浮かべた。
「20年前の大戦『トリスタンの悪夢』のおり命を落とした2刀宝剣士、『七英雄』
菊丸=クレバーの使っていた対宝剣、炎の宝剣『ファイアーブランド』、氷の
宝剣『アイスファルシオン』だ」
 昔、死んだ仲間に想いを馳せているのか、ラクールは沈黙したまま言葉を
発さない。
「これを君に託そうと思う」
「な…っ!こんな大切な物を…ですか!?」
 驚きの声を上げるレイにオールドが諭すように言った。
「大切だからこそ…君に託すのだ。菊丸殿はこれらの武器を使い、自らを犠
牲としてまでダークロードから多くの人々を護った。己を犠牲にするという行
為が正しいとは言えないが…その心の根底にあるものは君も菊丸殿も同じ
だ。だから…これを君に託す」
「オヤジ…」
 レイはラクールの方に視線を向けた。ラクールは昔の戦いで失った大切な
仲間の武器をレイに託すことに文句はないのだろうか。
「レイ、菊丸の奴ならこう言うだろうな。『心に正しき信念を持つ者になら自分
の武器を託せるでござる』…とな。お前に…それはあるか?」
「ある。俺はこれ以上ウェルガ達をのさばらせておくつもりはない」
 即答したレイが嬉しかったのかラクールが口元に笑みを浮かべた。
「なら使え。菊丸もそれを望んでいる」
「ああ」
 レイは2本の宝剣を手に取った。と、同時にガイストが主の冒険者復活を喜
ぶがごとくレイの肩にとまった。
「ガイスト、またよろしくな」
 ガイストが嬉しげな声をあげて鳴いた。

 と、そこでフィリが手を上げた。
「あっ!それでギルドの名前はどうするの?」
 そこで皆、忘れていたことを思い出したように目を見開いた。
「考えてなかったな…『ギルド攻城戦』に参加するんだから、ギルドの名前も
考えないといけないんだった」
 レイがそう言うと、フィリが微笑んだ。
「私にいい案があるんだけど…いいかな?」
「あ、ああ」
「『Ocean's Blue』はどう?」
 その言葉に皆が感嘆のため息をもらした。代表してレイが言う。
「いいんじゃないか?どうだろ皆、俺達のギルドの名前は『Ocean's Blue』
ってことで」
 反対を唱えるものは誰もいなかった。

 だが、それとは別の事で意見を上げるものがいた。レイの父、ラクールだ。
「だが、覚悟しとけよ。『ギルド攻城戦』に参加するということは「皇帝」と対立
するということに他ならないからな」
 その言葉にその場にいる誰もが息を呑んだ。

 「皇帝」アイフリード=フロームヘル

 『七英雄』に匹敵する実力を持ち、世界最強のギルド「皇帝の十字架」を率
いる全てのギルドの頂点に立つハイウィザード。その勢力、影響力は凄まじ
く、ミッドガルド大陸にある4つの砦のうちの2つを「皇帝の十字架」が所有して
いるほどである。
「大丈夫だよ」
 ジュニアが最初に口を開いた。
「もしそうなったら…僕も本気を出す」
 ジュニアの静かな闘志を感じ取ったのか、皆が一様に安堵したような雰囲
気が流れる。ジュニアは強い。魔族の中では『魔界の貴公子』と呼ばれ、知
らぬものはいないほどの実力者なのだ。
「なるほどな、ならいいか。それと俺は『ギルド攻城戦』には参加できないか
らな」
「「「えっ!?」」」
 ラクールの言葉に皆が一様に驚きの声をあげた。ラクールが深々とため
息をついて呟いた。
「ヴァンの奴がな…『七英雄』は『ギルド攻城戦』には参加できないっていう法
律を作りやがったんだよ。ヴァンが参加したら職権乱用だし、俺が参加した
ら全ギルドを軽く制覇して無敵になるからだとよ」
 ちなみにヴァンとは、この国の国王であるヴァン=トリスタン=ルーンミッド
ガッツV世のことである。ため息をついた自分の父にレイが力強く言い切っ
た。
「オヤジ、心配すんなって。俺が何とかしてやるよ」
「フン…弓が使えなくなってメソメソシクシクとフィリちゃんに抱きついて泣い
てた奴がよく言うぜ」
「ちょっ…何でオヤジがその事知ってんだよ!」
「おお、やっぱりそうだったか」
「ぐあ…」
 レイはラクールにカマをかけられたことに気づき頭を抱える。同時にフィリ
も顔を紅潮させてうつむく。それを聞いたまわりの面子が口々に色々と言っ
ている。
「羨ましいねぇ〜ラブラブで〜」
「私の胸で泣いていいよ…とか言ったの?お姉ちゃん?」
「ふーしっかりしてくれよ、ギルドマスター」
 最後のイアルの発言にレイの動きが止まった。
「待て、俺がギルドマスターなのか?」
 するとさも当然と言うようにイアルが言った。
「当たり前だろ、俺達はお前がリーダーだからついていくんだよ、なぁ?」
 他の面子がうんうんと頷く。
「わかったよ…俺がギルドマスターやってやるよ!」
 先ほどの恥ずかしさを打ち消すかのごとく、ヤケクソのようにレイが言い
切った。すると、ミリアがまた別の箱を部屋の中に持ってきた。
「ミリアお姉ちゃん、これは?」
 ティアが質問するとミリアがその箱を開いた。箱の中には黄金の輝きを持
つ金属が鎮座していた。それは神の金属と呼ばれるエンペリウムだった。
「ギルドを作るには国の承認を得る事と、エンペリウムで作った自分たちの
ギルドエンブレム…紋章が必要でしょ?これを持って明日、製鉄所のほい
さんの所に行きなさい」
「ほいさんですか?」
 レイが聞き返すと、ミリアが頷いた。
「ああ見えて、あの人はエンブレム作りの達人よ。この街でエンブレムを作ら
せようと思ったらあの人の右に出る者はいないわ」
「わかりました」
 どのみちほいの所に行く必要はあったのだ。製鉄所の仕事を休止し、冒険
者に復帰する意向を伝えにいく必要があったのだから。

 こうしてミッドガルド大陸に新たなギルドがまた一つ誕生した。


 ギルド名「Ocean's Blue」

 ・レイ=フレジッド(備考:ギルドマスター)
 ・フィリ=グロリアス
 ・ジュニア=サイドライク
 ・エリカ=フレームガード
 ・イアル=ブラスト
 ・ティア=グロリアス

 ────以上6名

 [続]


〜あとがき〜
「Ocean's Blue」第1部は次回で完結し、
その次からは第2部です。
つーか裏設定を考えてはいるんですが、
何話で終わるかは自分でも全くわかってません。
こ〜書いてみて初めてわかる、みたいな(゚∀゚)


〜登場人物紹介〜
●レイ=フレジッド [再]
性別:男
JOB:2刀宝剣士(実際はそんな職業はない)
Guild:「Ocean's Blue」
『ラグナロク』によって弓が引くことができなくなった。
昔、ラクールによって剣術を叩き込まれていた時期があったため
『ギルド攻城戦』では炎と氷の対宝剣を持って戦う。
「Ocean's Blue」のギルドマスター。
通り名は「神雷」と呼ばれている。



〜Web拍手の返答〜
>ゲロって臭うとうぇっときて自分も誘発されますよね。
>集団で吐くとスパイラル?
吐く時は迷惑にならないよう人のいない所で吐きましょうorz

>東京は恐ろしい街じゃ(=w=)ノ(帰りたい
そーいや50〜60年周期くらいで東京で大地震が起きてますが、
さっぱり起きませんね。全然起きないでオッケーですけどね。

>禿率いるMOB軍団が砦もっててGG編に続くんですね?
>血騎士深淵ハティ嵐登場かっw
禿TUEEEEEE!でも、禿は今回の話の通りの役回りです。


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