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Ocean's Blue

033:Confrontation

 『ギルド攻城戦』に参加しているギルドの間である噂があった。先日まで
『ギルド攻城戦』に参加していたギルドが、ある日突然解散もしくは撤退し
ていくのである。それらのギルドには決まって共通点があった。

 皆、心を折られているのである。

 圧倒的実力差を見せつけられたかのような、自らの卑小さを思い知らされ
たかのような、そんな表情を浮かべているのだ。
 そしてまたそうなった原因として最も危険視されていたギルドの一つが「ト
レント★樹海団」だった。だが証拠を残さず、また一介のレーサーギルドが
そのような事を行えるのか。そして、そうすることで彼らに何の得があるの
か。辻褄が合わないため、それは噂の域を出ることはない。だが、スケー
プゴートを生み出しているとだけの噂があるのみである。
 真実はありえないと思われているところに存在することが多い。

 世界最強のギルド「皇帝の十字架」

 一介のレーサーギルド「トレント★樹海団」

 この両ギルドに繋がりがあろうなど誰も夢にも思わない。しかし、それは現
実であり、レイ達に襲い掛かってきたのはまぎれもなくトレント達である。

 ◆

 「エンペリウムルーム」でレイとトレントが凄まじい攻防を繰り広げていた。
レイは両手にそれぞれ持った対となる宝剣を駆使し、トレントに何とか食い
下がっていた。
「この間まで弓を使っていたというのに大した剣捌きじゃないか、「神雷」…レ
イ=フレジッド!!だがそれじゃあ俺は倒せないぜ!?どうした!魔軍七大
勢力の一角を落とした実力を見せてみろ!」
 トレントは速く、重い斬撃を繰り返しレイに浴びせかけた。レイはそれを受
け流し、避けながら、心の中で舌打ちしていた。トレントは自分の素性を調
べ上げている。それは早い段階から自分達を潰そうと、おそらくはモロクで
遭遇した辺りですでに目を付けられていた可能性がある。
 と、トレントがレイから間合いを取った。
「フン…自分達が何故狙われるか不思議だっていう顔だな。なら教えてやろ
うか?「Ocean's Blue」の構成員のうち、ギルドマスターのお前はあのラクー
ル=フレジッドの息子にしてドレイクを討滅した英雄、フィリ=グロリアスと
ティア=グロリアスはアルベルタの内乱を鎮めたグロリアス家の出、イアル
=ブラストは「雷獣の咆哮」ギルドマスターであるロウガ=ブラストの弟、さ
らにエリカ=フレームガードはプロンテラ聖騎士団の副長補佐セレス=ドラ
ウジーの従姉妹、おまけにジュニア=サイドライクは魔族…それもとびっき
り高位にいる奴だ」
「…っ!!」
 ジュニアが魔族であるということも調べ上げられていることにレイが絶句し
た。だがそれも当然だと納得できる。こいつらは「皇帝の十字架」と繋がりが
あるのだ。情報量は半端ではないだろう。
「トレントの事、正直ナメてたよ。だけどその認識が甘かった事は自覚した。
それに俺はここで負けるつもりはない」
「なるほど、あくまで抵抗するってことか。で、具体的にどうするんだ?」
 トレントが聞き返した瞬間、トレントの頭上からガイストがトレントに向かっ
て猛スピードで体当たりを仕掛けた。が、トレントの上部に結界のような壁が
出現、ガイストを弾き飛ばした。
「ガイスト!」
 レイが慌てて弾き飛ばされたガイストをキャッチする。トレントの頭上に結
界…キリエ・エレイソンを展開していたプリースト、「トレント★樹海団」の奈
留が口を開いた。
「マスターとの戦いに手を出すことはいたしませんが、第3者の介入を許す
つもりもありません」
「くっ…」
 鷹もダメなのかよ!というツッコミを入れたい衝動を押さえ込みレイがトレ
ントを睨みつけた。するとトレントが薄笑いを浮かべた。
「手詰まりか?それとも…仲間が助けにきてくれるとでも思ってるのか?」
 レイはいったん目を閉じ、目を一気に見開きながら言った。
「ああ、そう思ってるさ」


 「Labyrinth


 聞いたこともないような言葉、脳裏に直接響くような音の調べ。だがレイに
とってはそれが最高の援軍の到着であることを知らせる音であることがわ
かっていた。
 無数の大鎌がトレントの周囲に出現し、それらが魔力を帯びた斬撃を繰
り出した。何の脈絡もない致命的な全方位攻撃がトレントに襲い掛かった。
「…っ!!来たな!」

 ガキガキガキィィィィィン!!

 超高速の剣速でトレントはその大鎌を弾き返した後、不敵な笑みを浮かべ
た。「エンペリウムルーム」に姿を現したジュニア=サイドライクの姿を見て。
「ジュニア=サイドライク、随分と早いご到着で。ウチのギルドのトップツーと
トップスリーをぶつけたというのに楽勝モードか?」
「彼女らに本気を出すなという命令を出していたのは君だろう。全然歯応え
がなかったよ」
「…フン」
 トレントは口元に笑みを浮かべた。その通り、トレントはルアーナとフィンに
『能力』を使わずに5分程度足止めしておけと命令していたのだ。
「そうだな。大体俺のシナリオ通りだ。だが…ついさっき、1時間程前に依頼
人から連絡が入ってな」
「…何?」
 レイとジュニアが怪訝な表情を浮かべた。
「ジュニア=サイドライク、お前の相手は俺じゃない。お前の相手は…アイツ
さ」
 トレントが視線を「エンペリウムルーム」の中央にある巨大なエンペリウム
の上部へと向けた。その視線を追ったレイとジュニアはエンペリウムの上部
に佇んでいる一人の魔術師の存在に気がついた。
「「……っ!!!」」
 レイとジュニアが息を呑んだ。

 それはここにはいてはいけない人物。

 いるはずのない人物。

 世界最強のギルド「皇帝の十字架」を率いる大魔術師。

 「皇帝」アイフリード=フロームヘル

 ◆

 気を失ったエリカ=フレームガードの傍に佇んでいる「トレント★樹海団」
のクルセイダーのアルヴィンとプリーストのエレンの前に一人の女が姿を
現した。その女を見たエレンがその女の名を呼んだ。
「あなたは…「閃光剣」リシア=キングバード」
「こんにちは。あたしが出る幕もなく決着がついちゃったみたいね」
「ええ、今回は2人がかりでしたし」
 エレンの言葉にリシアが笑みを浮かべた。
「あ〜らら、カワイソ。でも2人がかりでディボーション有りだったとはいえ、
反撃を喰らったわけでしょ?貴女達も随分必死よね」
「…」
 アルヴィンとエレンはその言葉に少しカチンときた。だがここで事を起こす
わけにはいかない。この女は「皇帝の十字架」の最高幹部『七近衛』の一人
なのだ。戦っても勝ち目はほとんどない上に、依頼人にケンカを売るわけに
もいかない。
「リシアさん、「皇帝」が来ているというのは本当ですか?」
 アルヴィンの問いを受けてリシアが口元に笑みを浮かべた。
「それどころか、『七近衛』も全員来てるわよ」
「「なっ…!!」」
 アルヴィンとエレンは驚きの声を思わずもらした。

 ◆

「そこまでだよ、すけぽ」
 ティアに止めを刺そうとしていたすけぽの腕を道化師…つまりクラウンの
男が手に取って押しとどめた。すけぽが驚いて振り返ると、そこには「皇帝
の十字架」の『七近衛』の一人、「葬送曲」ファルス=エタニティの姿があっ
た。
「…了解」
 すけぽはティアへの攻撃を中止した。トレントより上位にいる依頼人直々
の命令なのだ。トレントからの命令は遂行できないことになるが、仕方のな
いことだ。そもそも年端もいかない女の子を傷つけるというのはすけぽ的に
も勘弁してほしかったというのが本心なのだ。
「…っ」
 状況がわからず怯えた目をしているティアにファルスが微笑みかけた。
「心配しなくても何かするつもりはないよ。君から手を出した場合は別だけ
どね」
 ティアは怖かった。すけぽは確かに震えるほど怖かったが、この男はさ
らに恐ろしく怖い。まるで奈落のごとく底が見えない恐ろしさを持っている。
ティアは「皇帝の十字架」の最高幹部の圧倒的な存在感からくる恐怖から
少しでも逃れようと気を失ったまま倒れているイアルの服を掴んだ。

 ◆

「ルナ…何で…」
 「トレント★樹海団」のメンバーであるバステトとアリシャの攻撃を受けてい
たフィリはある人物によって助けられた。だが、それはフィリにとって新たな
衝撃だった。その人物は自分の幼馴染であり、親友であり、そして現在はア
ルベルタにいるはずの道具屋の娘、ルナ=イムソニアックだったからだ。
「ごめんね〜フィリ〜、私って「皇帝の十字架」の最高幹部なの〜」
「…な」
 「皇帝の十字架」の最高幹部、つまりルナは『七近衛』ということになる。
「なっ…何で!?ルナは道具屋の娘で…っ」
「別にギルドに入ってても普段は自由でしょ〜?」
「うっ…そっそれは」
 フィリは思いっきり納得する理由を言われて口ごもった。ギルドというのは
ギルドで行動するときにメンバーが集まるもので、別段いつもメンバーが一
緒にいるわけでもない。おまけに一緒にいないときの行動は当然のごとく自
由だからだ。
「あとね〜リシアと〜キスクと〜、ほら〜フィリがプロンテラで会った『道化
師』って名乗ってた人〜、この3人も『七近衛』〜」
「─────は?」
「『七近衛』〜」
「いやそうじゃなくて!それって…まじ?」
「まじ〜」
 追加でトリプルショックを受けたフィリが完全に硬直した。何と言うか知り合
いが根こそぎ敵になりまくっている気がする。

 バステトがその2人の様子を見ながらぼやいた。
「何だか私たちいきなり蚊帳の外ですね…」
「切ないですねぇ…」
 アリシャがうんうんと頷いていた。

 ◆

「ア…イフリィィィィィイィド!!!」
 突然、ジュニアの声質が凶暴なものに変化した。それをエンペリウムの上
から見下ろしながらアイフリードが口を開いた。
「久しぶりだな、ジュニア=サイドライク」
「ああ、君の顔は忘れられないね…殺してあげるよ…!!」
 と、レイが今にも飛び出そうとするジュニアの肩を掴んだ。
「落ち着け、今戦えば負けるのは俺たちだ」
「…っ」
 ジュニアはレイの言葉に冷静さを取り戻した。レイが「エンペリウムルーム」
の入り口に視線を向けた。そこにはチャンピオンの男、そしてレイのよく知る
男が佇んでいた。
「キスク───説明してもらおうか」
 キスク=リベレーション、「皇帝の十字架」最高幹部『七近衛』にして、「魔
神拳」と呼ばれ恐れられる存在。そして、アルベルタでのレイの親友の一人。
そして、キスクが口を開いた。
「俺やリシア、ルナは『七近衛』だったってことさ」
「へぇ…簡潔だがわかりやすい解答をありがとな」
「もっと驚けよ、楽しみがいのない奴だな」
「悪いがお前を楽しませてやる趣味はない」
「へいへい、そーかいそーかい」
 キスクはいつもの調子でおどけているが、レイは気づいていた。キスクは
強い。恐らくは先ほどまでレイが戦っていたトレントと同格かそれ以上。
 と、そこでアイフリードがキスクの背後に視線を向けた。同時にキスクが
背後を振り返りながら口元に笑みを浮かべた。
「へっ…最後の役者が来やがったか」

 ザ…

 最後に「エンペリウムルーム」へと姿を現したのは、反皇帝勢力筆頭ギルド
のマスターにしてイアルの兄、「雷獣の咆哮」ギルドマスター、ロウガ=ブラ
ストだった。
「随分と豪勢な顔ぶれだな」
 ロウガが簡潔にそう感想を漏らした。

 「Ocean's Blue」
 「雷獣の咆哮」
 「トレント★樹海団」
 「皇帝の十字架」

 この瞬間が、これら4つのギルドマスターが初めて同時に顔を合わせた最
初の瞬間でもあった。

 [続]


〜あとがき〜
第2部『ギルド攻城戦』のメイン、話の核となるギルドは
今回の話の最後に出揃った4つのギルドです。
ちなみに前話で新たに出た『七近衛』の動向は次話で書きます。
別に忘れていたわけではなく、話の都合上とゆーことで。
次回予告、ついに姿を現した「皇帝」アイフリード=フロームヘル。
そして「エンペリウムルーム」に集結する全ての『七近衛』。
その時、レイはある事に気がつくのであった。



〜Web拍手の返答〜
>一組以外2:1でとかえげつない
>・・・・・・好きですよ、そういうの。ぇ
ギルド攻城戦は数が物を言います!ガンホーの原理です!

>足止め成功ってことはDレイス<ルアーナ&フィン?
この小説内ではあまり明確な実力表示をしないようにしてます。
(一部除く) 実力表示をしすぎると逆転した時に違和感がでますので

>そういえば銀髪かきあげたりとかしてたけど
>ジェントルクホ以来頭装備なしですか?
>どっかに書いてましたっけ
隠れユーモアです。小説トレントは頭装備がありませんw

>しまったぁ><もう小説が追加された
>これのネタかんがえてねぇ(=w=;;
フフ!就職活動が終わらないと小説が書けませんorz ストックヤベェヨ

>トレントさんのセカンドネーム考えてみました。
>『トレント=ジュジーン』うむ、完璧狽пi==)
そう言えば某ネタの人が「俺の事はフィン=ネタナークと呼べ!」
って言ってました。


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