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Ocean's Blue

034:Selection

 ルーンミッドガッツ王国内に存在する4つの砦の所有権を奪い合う冒険者
達の戦い『ギルド攻城戦』。4つの砦のうち、国境都市アルデバラン西部にあ
るルイーナ砦、魔法都市ゲフェン南西部にあるブリトニア砦、首都プロンテラ
内北部にあるヴァルキリーレルム砦、これら3つの砦を獲得した世界最強の
ギルド「皇帝の十字架」がついに最後の砦である山岳都市フェイヨン西部に
あるチェンリム砦に姿を現した。

 「皇帝」アイフリード=フロームヘルと最高幹部『七近衛』

 「皇帝の十字架」の中核を成すそのメンバーのいずれもが武神かと見紛う
ほどの一騎当千の実力の持ち主である。そしてその全員がチェンリム砦に
襲来したのである。
 さらにある真実が判明した。一介のレーサーギルドのはずだった「トレント
★樹海団」、その本性は「皇帝の十字架」より金を受け取り、「皇帝の十字
架」に逆らう可能性を秘めたギルドを駆逐していく処刑部隊だったのだ。そし
て「トレント★樹海団」が次に目をつけたのはレイ達のギルド「Ocean's Blue」
だった。

 ◆

 動けない。完全な膠着状態。動けばその小さな波が大きな波となり、自分
に返ってくるのが理解できるからである。チェンリム砦の「エンペリウムルー
ム」には絶対なる侵略者とそれに逆らう反乱軍の頭など、重要な人物が勢
ぞろいしていた。
「我々の──」
 沈黙と膠着を破り、最初に口を開いたのはやはりこの中で最強の実力
を持つこの男、「皇帝」アイフリード=フロームヘルだった。
「──我々の目的はただ一つだ」
 油断なく、隙を見せず、レイ、ジュニア、そして「雷獣の咆哮」ギルドマス
ター、ロウガ=ブラストがアイフリードに視線を向けた。
「全ての砦の完全支配、我々に屈し隷奴と化すか、それとも我々に滅ぼさ
れるか」
「「「…っ!」」」
 レイ、ジュニア、ロウガの表情が忌々しげなモノへと変化した。アイフリー
ドの発言があまりにも傲慢で勝手なものだったからである。
「随分と勝手な言い草だな」
 ロウガがアイフリードに向けていた視線が険しくなった。だがアイフリード
は淡々とした表情でそれを受け流す。すると沈黙を保っていたキスクが愉
快気な表情を浮かべながら口を開いた。
「なぁに、隷奴っつってもパシリ程度で許してやるよ。それでぶっ潰される心
配が消え失せるんだから感謝してもらいたいもんだぜ?」
「ふざけんな!誰がお前らなんかに従うかよ!」
 言い返したレイにキスクがニヤニヤ笑みを返した。
「レイ、お前はもうちっと賢いと思ってたんだがな。『ギルド攻城戦』ってのは
力が支配する世界だ。その中で最強の御方に従うのは当然の理だろ?」
「ああ、その通りだな。なら「皇帝」が最強だって誰が証明したんだ?」
「…」
 レイのその反論にキスクが沈黙した。かわりにその視線が冷たい殺気を
帯びたモノへと変化した。そしてキスクがゆらりと前へ進み出た。
「わからねぇなら…」

 ダン!!

「わからせてやるよ!!」
 爆発するような音を立てながらキスクが跳躍した。その瞬間、ロウガ=ブ
ラストもまた動いた。キスクとロウガが空中で交錯する。

 3…、4…、5連撃!!

 物凄い音を立てながら両者が激突する。両者が床に足をついた時には、
ロウガは一筋の切り傷、キスクは頬に一筋の切り傷を負っていた。
「フン…さすがはロウガ=ブラストと言ったところか…」
 キスクが頬から流れ出る血を拭いながら、楽しげに口元を歪めた。
「…」
 ロウガは沈黙したまま、キスクに向きなおった。と、その時。


「キスク、随分と楽しそうね、あたし達も混ぜてもらえないかしら?」


 その声は「閃光剣」リシア=キングバード。そして「エンペリウムルーム」に
新たに現れたのは6人。キスクを除く、残る6人の『七近衛』である。キスクは
リシアの方に視線を向けた後、口を開いた。
「おいおい、随分と早いな。他のギルドの始末は終わったのか?」
「ええ、この砦に残っているギルドは「Ocean's Blue」、「雷獣の咆哮」、「トレ
ント★樹海団」、そしてあたし達「皇帝の十字架」だけよ」
 リシアのその言葉にレイ達の表情が青ざめた。
「「「な…っ!!」」」
 つまりリシアはこう言っているのだ。チェンリム砦にいた無数のギルド、そ
れら全てを彼女らは駆逐してきたと言っているのだ。
「レイ、驚いてるわね。でも心配しないでいいわ。フィリやあなたの大切な仲
間には手を出してない…というか助けてあげたくらい」
「くっ…!」
 リシアの言葉には含みがある。つまり今は助けたが逆らえば他のギルドと
同じ命運を辿ることになる、リシアはそう言っているのだ。
 そして追い討ちをかけるように放たれる「皇帝」の言葉。

「答えをもらおうか。我々に屈するか、滅ぼされるか」


















 ─────その時。

 レイはある違和感に気がついた。

 ─────ドクン

 心臓が早鐘のように打ち始める。

 ─────ドクン!

 この感覚は…間違いない。

 ─────ドクンドクンドクン!!

 いる。

 ─────ドクンドクンドクンドクンドクンドクン!!!

 この中にいる。

 間違いなく────奴が────いる!!

 確証はない。だが断言できる。母をさらい、幸せを奪っていった悪鬼。そう、
『幻影』ウェルガ=サタニックが言っていた「人間」の主。

 レイの真の「敵」が。

 「皇帝の十字架」、「皇帝」と『七近衛』の計8人、この8人の中の誰かが
───真の「敵」。「妖刀村正」より生み出せし魔物「彷徨う者」を操り、13
年前、母であるマリア=ハロウドを奪った真の「敵」が!!

 そしてレイは感じ取った、まるで共鳴のごとく。

 『レイ=フレジッド、どうした?お前が憎い自分はここにいるぞ』…と。

 真の「敵」の、奈落よりも深く暗い憎悪の篭った宣戦布告を。


 ──────ならば。













 レイはアイフリードに視線を向けた。
「アイフリード、お前に屈するわけにはいかない」
 その言葉にジュニアやロウガだけでなく、この場にいた全員が驚いた。
キスクがレイに怪訝な表情を向けた。
「レイ…てめぇ正気か?」
「正気さ、キスク。俺はお前達に「絶対」に屈さない」
「く…っ、このバカヤロ…」
 キスクが苦さの篭った呻きをもらした。キスクはもしかしたらレイ達をこれ
以上傷つけたくなかったのかもしれない。だが──これは必然。そのキス
クですら、こちらを欺いている可能性があるのだ。

 この8人のいずれかが真の「敵」であることは間違いないのだから。

「──いいだろう」
 「皇帝」アイフリード=フロームヘルが口を開いた。
「私としても、このような形で決着がつくのは不本意だったからな」
 アイフリードがジュニアに視線を向けた。ジュニアが明確な殺意を持った
視線でもってそれを返す。
「…」
 アイフリードはジュニアの視線を受け流し、拳を振り上げ──

 ズガンッ!!!

 今の今まで自分が乗っていたエンペリウムに一気に叩きつけた。

 ピシ…ピシッ…ゴガァァァァァァァア!!

 その一撃でチェンリム砦のエンペリウムが瞬く間に崩壊した。


 砦 [Chung-Rim Guild] を [皇帝の十字架] ギルドが占領しました。


 エンペリウムが崩れ落ち、『ギルド攻城戦』史に新たな1ページが刻まれる
中、「エンペリウムルーム」の床に降り立ったアイフリードが口を開いた。

「我々「皇帝の十字架」は国境都市アルデバラン西部に存在するルイーナ
砦──そこでお前達を待つ」

 アイフリードが身を翻した。

「その場、その刻、決着をつけよう」

 「皇帝」アイフリード=フロームヘルはその言葉を紡ぐと同時に「エンペリウ
ムルーム」を去っていった。そして「皇帝」の後ろについていくように『七近衛』
もまた「エンペリウムルーム」から一人、また一人と去っていく。

「ま…待て!!」


 
ドガン!!


 レイの制止を邪魔するかのようにレイの足元に極太のソードナイフが突き
刺さった。
「な…っ!?」
 レイが慌てて振り向くと、そこにはニヤニヤ笑いを浮かべたあの男がいた。
「トレント…っ!」
 トレントは見下すような視線でレイ達を見た。
「半負けの分際で無視とはいい度胸だな」
 そう「皇帝の十字架」と相対するために立ち塞がる大きな障害。

 処刑部隊「トレント★樹海団」

「まぁ依頼人があの様子じゃ今回は見逃すしかないわけだが…」
 トレントがニヤニヤ笑いを浮かべながら言葉を続けた。
「次に出会った時、お前ら…死ぬぞ?」
 するとジュニアがゆらりと陽炎のごとく大鎌を出現させた。
「いや…君に次が無いと僕は思うけどね」
 ジュニアはこの場で最大の障害であるトレントを倒すつもりのようだった。
レイ、そしてロウガも同意見だった。確かに3人がかりならおそらく勝てる。
トレントの後ろに「トレント★樹海団」のプリースト、奈留がいるがその戦力
も考慮したとしても。いずれにせよ、厄介な敵をこれ以上残したくないという
のが3人の本音だった。
「フン…3人がかりか…それは構わないが、ジュニア=サイドライク…後ろ
を見ないと痛い目にあうと思うがな」
 トレントの言葉にジュニアが慌てて背後を振り返った。

 チャ…

 小さな音ともにジュニアの首、頚動脈のある部分にナイフが押し当てられ
る。ジュニアは未だかつて無いほど驚愕した。

 ナイフを押し当てるは「トレント★樹海団」ナンバー2、ルアーナ

「さて───俺が教えてなければお前は死んでたわけだが、それでもやる
か?」
 トレントが淡々と言い放つ。確かにそうだ。ジュニアはルアーナの気配を全
く読めなかった。「魔界の貴公子」ともうたわれる自分が…だ。その時、レイ
はある可能性に考え付いた。
「そうか…それがあんたの『能力』ってわけか…」
 その言葉にルアーナが微笑みで返した。それは紛れも無い肯定。つまり、
「トレント★樹海団」ナンバー2、ルアーナの能力は───
「ルアーナの能力は『気配を完全に消す』事さ。どんな達人でもルアーナの
最初の気配を気取ることはあまりにも難しい」
 トレントの簡単な解説にレイ達が色を失った。ジュニアですら感づくことが
できなかったのだから、他の誰でも無理だろう。あまりにも非常識な能力に
レイ達が驚きを隠せない中、トレントが口を開いた。
「『能力』持ちは俺とルアーナ、フィンの3人だ。何で俺達に変な『能力』がある
かは置いといて…だ、レイはフィンの『能力』は見たことあるんだろ?」
「──ああ」
 あの『能力』も非常識だった。風を剣にまとわせ、全てを斬り裂く──『魔軍
七大勢力』の魔王すらも。あの時は味方だったが、今回は敵にまわるのだ。
「ってことはバレてないのは俺の『能力』だけかよ…。ああ、ちなみに「いきな
りナイフ投げ」とかはただの技術だ。これが決め手になる戦いとかあって随
分便利なんだぜ?」
 トレントのその言葉にレイがハッとした。自分との戦いの際、トレントはその
ナイフ投げすら見せなかった。完全に遊ばれていたということ気がついたレ
イが悔しげに歯噛みした。

「──レイ」

 トレントの口調が突然、殺意を帯びたものに変化した。
「お前が何で「皇帝」と戦いたがるかは知らん。だが俺達にも目的がある。だ
からこそ障害となる奴には容赦しねぇ。戦うつもりなら覚悟しろ。死ぬ気でか
かってこい。全力でかかってこい」
 その言葉を茶化すようにジュニアが口を挟んだ。
「それは──金のためかい?」
 その言葉に虚をつかれたトレントが口元に笑みを浮かべた。
「まぁ、そう思っててくれて構わないさ」
 と、その時、トレントの後ろにいた「トレント★樹海団」のプリースト、奈留が
口を開いた。
「マスター、そろそろ時間が」
「ああ、わかったよ」
 トレントはそう答えると、ルアーナに合図した。ルアーナはジュニアを解放
すると姿を消した。そこでレイがトレントに向かって口を開いた。
「俺はお前に負けるつもりはない」
「俺もお前に負けるつもりはないぜ」
 すぐさま言い返したトレントと視線が交錯し──先に面倒くさそうに視線を
そらしたのはトレントだった。トレントは奈留とともに「エンペリウムルーム」の
出口に向かって歩き始めた。そしてレイとすれ違いざまにトレントはこう言い
放った。
「アルデバランで待ってるぜ」
 と。


 トレント達が去った後、「エンペリウムルーム」には敗北感を噛み締めるレ
イ、ジュニア、ロウガの3人と、奈留の結界でぶっ飛ばされて床でのびて忘
れ去られているガイストの姿だけが残った。

 [続]


〜あとがき〜
第2部のメインというかキモになるルイーナ決戦。
それにいたるための序章がようやく終わりました。
次回からは、各キャラの過去も交えた話が続きます。(予定)
果たしてレイ達はこの圧倒的な戦力差を覆せるのかっ!!
しかしトレントの『能力』はラヴコメビームですかという
意見な多すぎな気がします。何でやねん〜〜!!orz



〜Web拍手の返答〜
>今、WSの彼と、廃プリの彼女が他ギルドを
>急襲すればやれるっ(その後終わるけど
そんな事言ったらダメですよ!
パンパンパンパンパーン!!
       ☆))Д´)
  ∧_∧ ∩☆))Д´)
 ( ・∀・)彡☆))Д´)
   ⊂彡☆))Д´)
     ☆))Д´)
一応補足しとくと、彼ら2人はギルド攻城戦から撤退しました。
単発キャラって奴ですな。機会があったらまた出すかも

>新大阪かぁ、声かけてくれたらいいのにw
>仕事場すぐ近所(=w=)ノ
誰がどこに住んでるとかいまいちわかりませんorz

>トレントさんもおーさか就職ガンバ。
>おーさかには神に魔人に酔いどれがいます(=w=)ノシ
む…大阪で就職したら楽しそうだな…w

>ふ・・・素人だな(-x-)大阪にはたこ焼きふりかけに
>たこ焼きようかんがありますよ(=_=)
ない!大阪にはたこ焼きなど存在しなかった!俺は信じない!(ノД`)


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