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Ocean's Blue

038:Resistance

 「皇帝」がチェンリムに現れてから数日後。

 レイはフィリを伴い、山岳都市フェイヨンの大会堂で行われる、ある会議に
出席していた。そうレイはついに同盟を結ぶことを決意したのだ。そしてその
会議の場には反皇帝勢力筆頭ギルド「雷獣の咆哮」のギルドマスター、ロウ
ガ=ブラストを始めとする有名人がずらりと集結していた。だがその中でレ
イを同盟の長に推す者、見極めをしようと中立の立場を崩さない者、新参者
には任せられないと猛反対する者、様々な人間達がいた。
「俺は認めない!いくらドレイクを倒したとて、実力と指揮官とでは求められ
ているモノが違いすぎる!」
「バカを言え!「絆の旋律」と「光の翼」すら敗れたんだぞ!?こんな時に旗
頭として用いるのは有能な指揮官ではなく、人望や人心を集めれるリーダー
だ!」
「確かにトップは飾り物でいいかもしれないな、我々のような連合同盟の場
合は特に…な」
「皆様ホントにそう思ってるのかしら?連合同盟だからこそ有能な指揮官こ
そが私達に求められているモノではなくって?」
 と、その時、一番奥のテーブルで成り行きを見守っていたロウガがガタリと
いう音を立てながら椅子から立ち上がった。
「このままでは話は平行線だな。だから俺からも一つ提案させてもらおうと
思う」
「ロウガ、アンタは容認派だったな。くだらねぇ甘い案とか出したら承知しねえ
し、誰も従わないと思うぜ?」
「ふむ、ではこういうのはどうだろうか。我々の元に「皇帝」アイフリード=フ
ロームヘルより挑戦状が叩きつけられてきたのは皆知っていると思う」
 そう、「皇帝の十字架」は昨日突然、手紙を反皇帝連合同盟宛に送ってき
たのである。内容は簡単、ルーンミッドガッツ王国の首都プロンテラの北部
にあるヴァルキリーレルム砦、そこでルイーナ決戦の前に前哨戦を行おうと
いうものだった。ご丁寧な事に簡単な戦力データなども添えられて…だ。
「ああ、「皇帝」が派兵する戦力は俺たちの全戦力とほぼ同等っていうあの
ふざけた手紙か、それがどうだって言うんだ?」
「この戦い、旗頭をレイ=フレジッドにしようと思う」
「は!?何言ってるんだ?それがダメだから今話して…」
「聞け、「皇帝」の戦力には例の化け物軍団の『七近衛』が3人もいる。これを
綺麗に倒せれば「皇帝」と我々の差はほぼ消える。そして何より、お前達の
中で『七近衛』と対面を張って戦おうとする殊勝な人間がいるのか?」
「な…」
「後ろから、安全な所からゴチャゴチャと口だけ出すことは誰にでもできる。
だが「皇帝」を前にして正面きって宣戦布告したのはこの中でレイ=フレジッ
ドのみだ。それもまわりのほとんどが敵だらけという絶望的な状況でな」
「俺は手は貸さないぞ…!新参者なんぞリーダーにできるか!」

 ダン!!

 突然、レイがテーブルを叩いた。
「ロウガ、反皇帝連合ってのは随分と程度の低い連中の集まりなんだな?」
「ちょっと…レイ…」
 フィリがレイの服の裾を引っ張りながらなだめようとしたが、レイの言葉は
止まらない。レイは今しがた反対した男の方を振り向いた。
「自分の意見が通らなければ放棄か、それでヴァルキリーレルムで勝ったら
認めてやるから俺たちも混ぜろって来るのかお前は?」
「な…貴様…!!」
 ガタ…と怒りの形相を浮かべながらその男が立ち上がった。
「レイ=フレジッド、少し名前が売れたからといい気になってるようだな…俺
は貴様がリーダーになるのが気に食わないだけだ」
「ならお前がリーダーやれよ、従ってやるから」
「何!?」
「お前が俺たちを勝利に導いてくれるんだろ?やってくれよ、リーダー」
 部屋中の視線がその男に集まり、その男が狼狽した。
「ち、違う。俺はリーダーはもっと適任の奴がいるから…と」
「じゃあそいつを推薦すればいいだろ。グダグダ文句を言う前にさっさと自分
の意見を言え」
「貴様…っ!!」
 ついに男がキレた。剣を抜き、レイに突きつけた…が。

 ゴトン

 その男の剣の切っ先が床へと落ちた。
「な…っ!!」

 チャキ…

 その瞬間、レイが宝剣『アイスファルシオン』を鞘に戻す音だけが響いた。
「俺の…剣が…嘘だろ」
「これで満足か?」
 今の神速の抜剣、そして斬撃。その一部始終を見ていたロウガが内心で
唸った。強い…と。そうレイは弱くはない、強い部類に入るのだ。幼少の頃よ
り『七英雄』最強とすら言われているラクール=フレジッドより戦い方を教わ
り、あの『魔軍七大勢力』の魔王ドレイクの神速の斬撃を避けるほどの動体
視力を持っている。
 この『ギルド攻城戦』においてもその実力の片鱗は見え隠れしている。初
参戦にも関わらず、トップレーサーと変わらない動きをしている。得意の武
器、弓を使わずとも…だ。
 そう異常なのは敵の方なのだ。「皇帝」アイフリード=フロームヘルは当然
としても、『七近衛』の実力も群を抜いている。たった5人で完全防衛された
城を落とすなど、どう考えても「ありえない」。さらにロウガがずっと(個人的
に)敵視していた「トレント★樹海団」、あのギルドもついに本性を剥き出しに
して襲い掛かってきたが、あのギルドも敵にまわすとなると相当に厄介であ
ろう。残虐性とは裏腹に緻密に計算高いあの行動力は下手をすると『七近
衛』以上の障害にもなりうるだろう。

 少なくともここにいる雁首揃えた烏合の衆では対抗できないだろう。

 ロウガが静かに口を開いた。
「理解して欲しい。「皇帝」は圧倒的な力によって我々を制圧しようとしてい
る。力に対抗できるのは知略などというのは詭弁だ。力には力でなければ対
抗できない。だからこそ我々にはレイ=フレジッドのようなリーダーが必要な
のだ」
 すると続いてレイが言葉を発した。
「俺は皆がイヤだというならすぐにリーダーをやめてやるさ。だが、やるなら
徹底的にやる。「皇帝」は絶対に倒す。トレントもぶち倒す。しかし、それには
俺だけじゃ無理だ。皆に協力して欲しい」
 ロウガが再度言葉を発した。
「不満、納得のいかない所など多々あると思う。だが互いに譲歩しなければ
前には進まない」
 と、そこで一人の女が意見を発した。
「しかし…何故ロウガ様がリーダーをやってくれないのですか?あなたが
リーダーをやってくれれば私たちもこんなに揉めなかったと思いますわ」
 そう、それが揉めた原因の大きな要因だったのだ。誰もが知っているロウ
ガが旗頭と思っていた所に突然、レイがいたのだ。普通は揉める。
「俺は一兵卒として動こうと思う。我々も未だかつてないほどの大軍で動くの
だから、俺が前線で先頭を切って戦った方がいいだろう。おそらく…『七近
衛』も前線にでてくるだろうしな…」
 部屋の中が静まり返った。納得半分、不満が半分といった空気だ。と、ロ
ウガが静かに言葉を紡いだ。
「レイ=フレジッドを同盟の長とし、我々はまずヴァルキリーレルム砦の奪取
に向かう。この意見に賛同する者は右手を挙げて欲しい」

 賛成269、反対17、棄権51

「ありがとう、よろしく頼む」
 レイは深々と皆の前で頭を下げた。

 これが反皇帝連合「レジスタンス」の正式な発足の第1歩となった。

 ◆

 国境都市アルデバラン──

 その一角にある喫茶店にて3人の男女が話していた。
「反皇帝連合「レジスタンス」…ねぇ、あたし達は悪政しいた権力者かっての」
「大して変わらないと思うけどなぁ」
「…」
 その3人こそ、現在『ギルド攻城戦』でその名を轟かしている世界最強のギ
ルド「皇帝の十字架」の最高幹部の面々である。

 「閃光剣」 リシア=キングバード
 「長射撃」 シャドウ=プラスタラス
 そして、「皇帝」 アイフリード=フロームヘル

 最高幹部と言われて最も違和感があるのがシャドウだ。どう見ても11〜12
歳の少年にしか見えず、この少年があの「皇帝の十字架」のトップに立つ人
間には見えないだろう。人懐っこいその表情はどうみても年相応の子供にし
か見えない。
「ねぇ!アイフリード!僕も行っていいかな?ヴァルキリーレルムにさ」
「ダメだ」
「えぇー!何でだよー!!」
 要求を神速で却下されたシャドウが仏頂面になりながら床に転がった。

 じたばたじたばたじたばたじたばた!

「やだやだやだやだー!僕も行くー!!」

 じたばたじたばたじたばたじたばた!

「やだやだやだやだー!僕も行くんだー!!」

 じたばたじたばたじたばたじたばた!

「やだやだやだやだー!僕も行くったら行くーっ!!」

 じたばたじたばたじたばたじたばた!

「やだやだやだやだー!僕も行くー!絶対行くーっ!!」
「…ふぅ」
 アイフリードが疲れたため息を漏らした後、突然、ボン!!と爆発音がし
た。爆発と同時にシャドウが黒焦げになって昏倒した。その様子を見ていた
リシアが半眼になってアイフリードを見た。
「子供を黙らせるのに下から数えた方が早いような対応だと思うんだけど…」
「シャドウは昔からワガママでな、これが一番楽だと最近気付いた」
「…そうなんだ」
「それにヴァルキリーレルムにはすでに向かわせるメンバーは決めたはず
だ。今さら変更するつもりもない」
「そうね…」
 そう、レイ=フレジッドに対して最も縁が深いあの男が総大将なのだ。

 ◆

 山岳都市フェイヨンの一角にある茶店にロウガ、フィリとともにやってきたレ
イはテーブルに突っ伏して凹んでいた。
「絶対言い過ぎた…」
 するとロウガが首を振った。
「心配ない。あの位言わないと動かない連中だからな」
「ああ…そうだな…」
 レイはテーブルに突っ伏したまま考え込んだ。誰もがリーダーが不満など
と、そういうことしか言ってなかった。誰かに引っ張られる、自分で動こうとし
ない連中の集まりだということがよくわかった。レイは幼少の頃から様々な
人間を見てきた。だからこそ、自分の手を汚さずに利益を追い求めるような
人間はよく見てきたのだ。だからこそあれだけの強い態度ででたのだ。
「でもあれで皆言うことを聞いてくれるかな?」
「無理だろうな、性根が腐った人間というのは自分の中にあるものが一番の
正義と考えているからな」
「そっか…」
 ロウガの返答にフィリががっくりと肩を落とした。
「少なくともヴァルキリーレルムの「皇帝」の勢力はこちらと同等なんだろ?
なら足並みが揃ってない分…」
「こちらが不利だな」
 レイの言葉をついでロウガが続けた。
「それとレイ=フレジッド、「皇帝の十字架」がヴァルキリーレルムに派兵す
る3人の『七近衛』が判明した」
「「!!」」
 レイとフィリは顔を見合わせた後、ロウガの方に向き直った。
「『七近衛』のメンバーの3人は…」
 ロウガの口から発せられた名前にレイとフィリが驚愕の表情を浮かべた。

 ◆

 両の拳を左右に振り上げる。

 そして、フッと息を吐くのと同時に両拳を叩きつける。

 轟音。

 この両拳、そして両脚が我が武器、一騎当千の代物。

 敵は全て叩き潰す。

 完全な無力化、そこに個人の感情など必要はない。

 敵が親友であろうと関係ない。叩き潰すのみ。

 叩き潰すのみ。


「時間…か」


 そしてその男は部屋を出た。しばらく歩くと「皇帝の十字架」の最高幹部と
呼ばれる自分と同じ『七近衛』の2人が待っていた。

 「影身鬼」 ギルティ=スターン

 「陰陽玉」 ライジング=ボーンド

 そのどちらもとてつもない実力者である。

 ギルティ=スターンは『七近衛』の中で最も残虐性のある戦いを好み、卑
怯、鬼畜と誹られることも厭わない。さらに女に対する執着力は異常であり、
最狂にして最悪の男。

 ライジング=ボーンドは『七近衛』のリーダーである。つまり「皇帝の十字
架」の実質的なナンバー2、その実力は「皇帝」アイフリード=フロームヘル
にすら匹敵するほどである。

 その2人を従えてのヴァルキリーレルム砦への遠征。


「レイ、「皇帝の十字架」の強さ、とくと味あわせてやるぜ」


 ヴァルキリーレルム砦遠征軍総大将、

 「皇帝の十字架」最高幹部『七近衛』

 「魔人拳」 キスク=リベレーション、出陣。

 敵が親友であろうと関係ない。

 叩き潰すのみ。

 [続]


〜あとがき〜
過去編を入れすぎたら話の進みが鈍亀状態になりそうだったので
話をどんどん進めることにしました(;´Д`)
メインキャラの過去編しか入れれそうにないなあ…orz
次回予告!一足先にプロンテラに到着したラクールとティア。
ラクールはプロンテラで意外な人物と邂逅する!



〜Web拍手の返答〜
>油のボスの強度は本物と一緒なのですかね?
この小説内では本物に劣るという設定になってます。
むちゃ強いという設定からは外れませんが。

>親父〜!
息子〜!(ぇ

>ねむい・・・ねむいぞ・・・・・
>タダイマトウキョウニセンプクチウ(=w=;)ノ
エマージェンシー!エマージェンシー!東京都民はただちに(以下略

>次の話は『パープルボックス』ですね(=w=)
ちゃう!ヽ(`Д´)ノ


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