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Ocean's Blue

044:Epidemic

 ヴァルキリーレルム砦での戦いから1日、反皇帝勢力「レジスタンス」は初戦
の勝利に酔いしれていた。敗北する可能性も高かったというのに、「皇帝の十字
架」最高幹部の『七近衛』を2人も撃破、ルイーナ進撃への自信へとつながる有
意義な決着であった。ただ一点、「トレント★樹海団」に砦を盗られた(取られた
でなく盗られた)事を除けば──だが。
 翌日、ヴァルキリーレルム砦に再侵攻した「レジスタンス」は驚愕した。砦のい
たるところに罠が仕掛けてあったからだ。

 トーキーボックス

 その罠を踏むと文字が書いてある看板のようなモノが飛び出るだけの無害な
罠である。あまりにも常軌を逸した事態に皆躊躇したが、とりあえず誰かがその
罠の一つを踏んでみた。すると看板が飛び出してきた。

 『キミタチ暇人?』

 「レジスタンス」は翌日の話し合いでルイーナ砦での決戦では「トレント★樹海
団」を皆殺しにする案が満場一致で採択されたという。

 ◆

 プロンテラの宿の一室にて。
「とりあえず勝ててよかったね、はいこれ」
「ああ、ありがと」
 フィリからコーヒーを手渡されたレイがコーヒーに口をつけた。
「うあ…苦いなこれ!」
「激苦!コーヒートレントスペシャルだぜ!ってトレントから渡されたコーヒーなん
だけど」
「いやいやいやいや!アイツから物もらうなよ!アイツ味方に下剤混ぜた薬とか
渡してたんだぞ!」
「う〜ん、じゃあ捨てちゃお」
 どさどさどさどさ、フィリがトレントから貰ったコーヒーの豆が入った袋をさかさま
にして全部ゴミ箱に捨てた。すると豆の間にはチョンチョン(でっかいハエ)の死
骸が混ざっていた。
「…」
「…」
「フィリ…、やっぱアイツ殺した方が世のためだよな?俺飲んだぞコレ…」
「う、う〜ん、聖職者としてはそういうのは推奨できないけど…なんかそんな気も
する…」
 と、フィリが思い出したようにポンと手を打った。
「そういえば、敵が誰なのかヒントくらいはわかったの?」
 フィリの質問にレイが考え込んだ。
「ああ、じゃあ今の段階でわかってることを整理するぞ」


 ・「皇帝」 アイフリード=フロームヘル
「皇帝の十字架」のギルドマスター。最強のハイウィザードの男。ジュニアとの因
縁がある。。詳しい経歴は不明だがジュノー出身らしい。強力な魔力を持ち、禁
呪すら操れるという点から怪しさ大爆発。

 ・「陰陽玉」 ライジング=ボーンド
アイフリードを影のようにサポートするハイプリーストの男。実力はアイフリードと
そうかわらない。アイフリードと出会う前は何をやっていたか不明。かなり怪しい。
拳に聖なる力を宿して戦うらしい。

 ・「魔人拳」 キスク=リベレーション
レイとフィリの友人にしてヴァルキリーレルムでレイ達と戦ったチャンピオンの
男。アイフリードに昔命を救われたことがあるらしい。多分、敵ではないと思わ
れるが、根拠もしくは証拠がない。

 ・「閃光剣」 リシア=キングバード
レイとフィリの友人にしてロードナイトの女。キスクの情報によると昔は箱入りお
嬢様だったらしい。もしキスクが違うと判明すれば、リシアの容疑も晴れることに
なる。残念ながら現段階ではわからないが。

 ・「葬送曲」 ファルス=エタニティ
レイとフィリに最初に接触した『七近衛』のクラウンの男。北欧神話などの伝承を
数多く(吟遊詩人系列なので当然だが)口にしている。自らの事を『道化師』と呼
んでいたが、クラウン=道化師である。怪しさレベルは高い。

 ・「長射撃」 シャドウ=プラスタラス
「皇帝の十字架」最年少、スナイパーの少年。アイフリードと最も長い付き合い
らしい。ただ年齢が11歳程度で、レイの母がさらわれたのが13年前、つまりシャ
ドウは生まれていない頃の事件であり、この少年は犯人ではない。

 ・「影身鬼」 ギルティ=スターン
女に執着するチェイサーの男。ヴァルキリーレルムで「雷獣の咆哮」のギルド
マスター、ロウガ=ブラストに敗北。重傷を負っている。頭が悪そう(強いけど
小物っぽい)なので違う気がするが、証拠がない。

 ・「月夜姫」 ルナ=イムソニアック
レイとフィリの友人にしてプロフェッサーの女。いつもほんわかふわりと間延びし
た口調で話すのが特徴。友人であるため、違うと信じたいが、彼女もまた違うと
いう証拠がない。

・「トレント★樹海団」 トレント
うざい。別の意味で敵。


「…レイ」
 フィリが汗を一筋、額からたらした。
「よっぽどトレントにムカついてるんだね…」
「かなりな…」
 レイが額をひくひくさせながら呻いた。
「実際の所、やりあわないとわからないだろうな。少なくともアイツらが何かを企
んでいるのは間違いないんだしな」
「そうだね…」

 戦うべき相手は「皇帝」アイフリード=フロームヘル

 あまりにも強すぎる、最強の敵。

「レイ」
 フィリがレイの手を両手で握った。
「ん?」
「頑張るのはいいけど、私のこともほっとかないでね?」
 レイが苦笑した。
「わかってるって、じゃあ街にでも行くか」
「うんっ」
 レイの言葉にフィリが笑顔で答えた。

 ◆

「レイ=フレジッド、そしてフィリ=グロリアスだな?」
「な──?」
 宿を出た瞬間、レイとフィリは王国軍の兵士に突如取り囲まれた。
「そうだが…これはどういうことだ!」
 レイがフィリをかばいながら槍を向ける兵士達に怒りの声を上げた。
「私達とともに来てもらおう」
「…っ!!」
 有無を言わさない物言いにレイの眼に殺意がともる。理不尽すぎる。そこにイ
アル、エリカ、そしてジュニアの3人がやってきた。
「うわ!レイ何やったんだよ!?」
「レイさん…これは一体…?」
「レイ…だからあれほど野外プレイはやめろって言っただろ!」
 レイが顔を引くつかせた。ジュニア殺す…とか思いつつ、兵士達に叫んだ。
「理由を説明しろ、さもなければこちらも強硬手段で解決するぞ」
「ほう?少しばかり名前が売れたからといって…調子に乗るな小僧?」
 兵士達の後ろから一人の中年の男が、妙な貫禄を持った男が現れた。その中
年男の顔を見て…レイが頭を抱えた。その中年男は凄い笑顔を浮かべていたか
らである。
「オッサンかよ!」
「久しぶりだな、レイ」
 中年男の顔を見たエリカが顔を引きつらせた。
「う…あ、王様?」
「「「は?」」」
 フィリとジュニアとイアルの間の抜けた声がハモった。何とその男はこの国──
ルーンミッドガッツ王国の国王、ヴァン=トリスタン=ルーンミッドガッツ三世ことト
リスタン三世だったからである。
「とっさに彼女をかばうぐらいだ、随分大切にしているようだ」
「悪いかよ…っていうか何でオッサンがわざわざここに来るんだ」
「レイさん!?王様にオ…オッサンって!?」
 エリカがビビりまくりながらレイに言うと、トリスタン三世が答えた。
「ああ、気にするな。彼と私は友人だ」
「そうそう、オッサンで十分」
「レイ…一応この国の王なんだから、もう少し敬って欲しいとか思うぞ私は…」
「あ〜そういえばオヤジがさ、オッサンの昔話してくれたんだ。浮気現場を奥さん
に見つか…」
「うああああああああ!やめろおおおおおおおおおおおおおおおお!!」
 トリスタン三世の叫びがレイの声をかき消した。そしてトリスタン三世がレイに
掴みかかった。
「ラクールか!ラクールが言ったのか!」
「ああ、オヤジから聞いた」
 トリスタン三世が近くの兵士を呼び寄せた。
「ラクールに懸賞金をかけろ!何としても捕らえるのだ!」
「王様無理です!前も似たような事をしましたが、全て真正面から突破されまし
た!」
「くそう!ラクール許すまじぃぃっぃぃぃ!!」
 その様子をぽかんと見ていたフィリが一言。
「王様の印象が…がらがら…と崩れた気が…」

 ◆

 宿の食堂でレイ達5人とトリスタン三世は向かい合うように座って話をしていた。
「疫病調査?」
 レイが問い返すとトリスタン三世がうむと頷いた。
「現在プロンテラ騎士団でな、原因不明の伝染病が流行っている。その調査をし
て欲しいのだ」
「…あのさオッサン…」
「む?」
「オヤジから聞いてると思うんだけどさ…俺さ凄い忙しいんだが…」
「デートに行こうとしていたではないか」
 レイががたりと立ち上がって、トリスタン三世に詰め寄る。
「他の奴に頼めよ!」
「何だ、王国の危機と愛とどっちが大事だ!」
「愛に決まってるだろ!!」
 ジュニアが肘でレイを小突いた。
「レイ…凄く恥ずかしい事言ってる自覚ある?」
「う…」
 レイが少しうめいてから椅子に座り込んだ。フィリはというと隣で赤い顔をしてい
た。トリスタン三世はパンっと手を合わせた。
「頼む!1日でいい!優れた冒険者の視点があれば解決が早まるかもしれんの
だ!だからレイ頼まれてくれ!」
「う〜ん…」
 レイが渋っていると、突如、食堂の入り口に人影が現れた。














「話は聞かせてもらったクマー!!」

    |┃三     ∩___∩
    |┃      | ノ      ヽ
    |┃ ≡   /  ●   ● |  
____.|ミ\___|    ( _●_)  ミ
    |┃=___    |∪|   \
    |┃ ≡   )   ヽノ   人 \ ガラッ




「「な!?」」
 レイ達が揃ってそちらを見た。こんなわけのわからない登場をするバカはレイ
達の記憶では一人しかいないからだ。
「ト…トレント…」
 そこにはビックフットという大熊のかぶりモノをしたトレントが立っていた。トレン
トの後ろには「トレント★樹海団」のメンバーであるブラックスミスのバステトとプ
リーストのエレンが立っていた。トレントはクマのかぶりモノを投げ捨てるとズカ
ズカとレイ達のテーブルの所に歩み寄ってくると、トリスタン三世に耳打ちした。

 レイ達に聞こえるよう、わざとらしい耳打ちを。

「王様〜、こんな実力もないザコどもに頼むよりは俺らに任せませんか?」

 ムカり

 レイが顔を引きつらせながらトレントに詰め寄った。
「ほ…ほぅ?トレント…突っ込みたい事が山盛りなんだが…それ以前にケンカ
売ってるわけか?」
「ほう?突っ込んでみろよ」
 トレントが挑戦的な口調で聞き返すと、レイが口を開いた。
「お前な!マジでいい加減にしろよ!何だあのコーヒー豆は!なんでチョンチョン
の死骸とか入ってるんだよ!死にはしないだろうけど気分悪すぎだろうが!俺飲
んだぞクソ!トーキー防衛!?ざけんな!暇人なわけあるか!そもそもお前ら
が横から割るから一日損したんだよわかるかオイ!で、何だ!?クマのかぶりモ
ノの意味あんのか!?意味あんのかよオイ!何が話は聞かせてもらったクマー
だ!!バカですかお前は!しかもお前チェンリムでの言葉は何だったんだよ!
アルデバランで待ってるって言った!言ったよな!待ってろよ!何で普通に現れ
るんだよ!全然待ってねえよ!!」
 積もり積もったモノが吹っ切れたかのようにまくしたてるレイを見たトリスタン三
世が冷や汗を流した。
「何か…イヤな事があったのかね…?」
「ええまぁ…色々と…」
 フィリが苦笑いを浮かべた。トレントは食堂のウェイトレスに向かって一言。
「おねーさん、コーヒー3杯よろしく」
「話聞けぇぇっぇぇっぇぇぇぇ!!!」
 レイの叫びが食堂内に響き渡った。

 ◆

「本題に移ろうか」
 同じテーブルに「Ocean's Blue」5人と、「トレント★樹海団」3人が座るという奇
妙な構図であるが、何とか場をおさめた(レイが暴れだしてトレントも何故か暴
れだした)トリスタン三世は話を切り出した。
「まずこの疫病に関してだが…まずは見てもらおうと思う、君」
「はっ!」
 命令を受けた兵士が一人の騎士を連れてきた。実直そうで真面目な好青年の
ようだ。トリスタン三世は沈鬱な表情で話始めた。
「彼は見た目はなんともないが病魔におかされている」
 レイ達の表情に緊張の色が浮かんだ。
「君、やってみてくれ」
「はっ!では!」
 兵士がその真面目そうな騎士の後ろにまわり、髪を逆立てた。すると、突然真
面目そうな騎士の雰囲気がいっぺんした。











「うはwwwwwwwwみwwwwなwwwwぎwwwwwwwってwwwwwきwwwたw
wwwwwぜwwwwwwwwwwwwwwwwwwっうぇ」




「「な…!」」
 突然の豹変振りにレイ達が驚愕した。トリスタン三世が静かに口を開いた。
「私達はこれを…「逆毛病」と呼んでいる。原因はわからないが騎士のみに感染
する危険な病気だ。逆毛にすると非常に危険なほど気分が昂揚し、危ない行動
も取り始める」
 トリスタン三世はガタリと椅子から立ち上がった。
「ルーンミッドガッツ王国、国王の名において頼みたい。是非、この病気の原因を
特定して欲しい。解決して欲しい、頼まれてくれるか?」
「「…」」

 誰もが「ムリだ…」と思ったのは言うまでもない。

 [続]


〜あとがき〜
続きます、この話(正気か!?
というか全然ラ○コメちゃいますなorz
次回予告、「逆毛病」をめぐってレイ達とトレント達の戦いが勃発!
「ギルド攻城戦」の番外編的な話になります(・x・)



〜Web拍手の返答〜
>この『(∩゚д゚)アーアー聞こえない聞こえな〜い』すっごく気に入りましたw
顔文字を小説に入れるのは出来るだけ控えてるんですが、
今回はとてもいれたかったのですorz

>反皇帝同盟の勝利おちょくって樹海団むっちゃ疎まれそう=x=;;
疎まれてるどころか、皆殺しが今回の話で確定しましたw

>そういえばオートスペル一度も発動しませんでしたね。宝剣2刀だからかな?
>INTなしボルトが3本降っても相手平気な顔してそうですけど^^;
ふ…ふ…ルイーナ決戦をお楽しみあれ(ぇ

>フィンさんの攻撃防いでキスクに負けてたら盛り上がらなかった・・・
>フィンさんの腹痛は物語を救った?ォィ
彼の腹痛は今後10話くらいは続く予定になってます。

>ふっ・・・我々の知る所に一人いるだろう・・・
>全てを超越して無常に闘う蕎麦好きが(=_=)
あのお方は蕎麦を食いすぎだと思うのですよ!

>ギルド狩りはギルメンを殺す場所と思っているギルマスは
>どこぞの皇帝みたいに慕わられるのでしょうか?
それを俺がしたらタコ殴りにあいます(ノ∀`)

>今度はどのペアのらぶこめだろう(*´¬`)
ラブコメでもなんでもないぜ、フゥーハハハー!…すいませんorz

>次回予告:アルデに着いたトレント。目的…?。
>次回!カプラ本社襲撃!ラブコメの嵐巻き起こせ、トレント!
その予告違う!

>トレントさんマジ外道
外道言われたorz


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