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Ocean's Blue

045:wWw

ザー…

プロンテラで雨が降りはじめた。

カッ!!

 稲光が光る中、プロンテラのある屋敷の邸宅の中である老人が両手を広
げながら、高笑いしていた。
「クックックック!ついに完成する!我が研究の集大成!モロクで集めた材
料を元に加えて、このワシの頭脳明晰な頭をフル回転させる!これにより完
成する技術!そうそれは!人類が求めてやまなかった技術!」



 それは─────────────「発毛」の技術。



「フハハハハハ!何だか紫色の煙がもくもくと立ち昇って病気がプロンテラ
に蔓延しているようだが、ワシには関係ない!フッハッハッハ!!」
 発毛の狂気に取り憑かれた老人の哄笑が邸宅に響き渡った。

 ◆

「「逆毛病」…ねぇ」 
 レイが頭を抱えてテーブルに突っ伏した。国王であるトリスタン三世はす
でに城へと帰っている。食堂では食事時も過ぎたためレイ達とトレント達だ
けになっている。と、トレントがギルドメンバーのプリースト、エレンに向かっ
て言った。
「おい、エレン。俺とバステトはこれを片付けたら帰るって他の連中に伝え
ておいてくれ」
「…って真面目にやるつもりですか?」
 エレンが問い返すと、トレントがにやら〜とイヤな笑みを浮かべた。
「ああ、レイ達との格の差というか器の差?というのを教えてやろうかなと
思ってな」

 カッチーン

「上等だ…ジュニア、エリカ、イアルは適当に宿に戻っていてくれ…」
「レイ…いちいち挑発に乗ってたらキリがないと思わないか…」
 イアルが呆れて言うと、レイがにっこりと笑った。
「いやぁ、ハッタリだけで生きてる奴に負けるわけないしさ」

 カッチーン

 トレントの笑顔があからさまに引きつった。
「それは何?ケンカ売ってるのかなレイ君」
「是非そうとってもらいたいなトレント君」
「ヘッヘッヘッヘ…」
「フッフッフッフ…」
 ぎすぎすした雰囲気の中、笑顔を向け合う2人を見ながら、フィリとバステト
が涙した。
「私たち、自然と巻き込まれてる…」
「ウチのマスターアホだから…すいません…」

対戦内容:「逆毛病」をより早く解決する。

 「Ocean's Blue」 レイ&フィリ

     vs

 「トレント★樹海団」 トレント&バステト

 何だかよくわからない内に戦いの構図はこのようになった。

 ◆

 「トレント★樹海団」のブラックスミス、バステトはいわゆる参謀タイプであ
る。(トレントとプレクの「ギルド攻城戦」の企みは知らないようだが) 「トレン
ト★樹海団」の作戦立案などを一手に手がけている彼女は戦いにおける読
みもすばらしかった。
「トレント!あそこが怪しいです!」
 バステトがビッとプロンテラのある屋敷を指差した。

 そこにはモクモクと紫色の煙が立ち昇っている屋敷があった。

「いやそれ誰が見ても怪しいだろ!!」
 レイがツッコミを入れた。
「何を言ってるのですか、私は目のつけ所が他の人たちとは違うのですよ」
「いや、他が節穴だらけなんだろう…」
 気付けよ国王…とか思いつつ、レイはフィリとともにダッシュでその屋敷に
駆け出した。出遅れたトレントが怒りの声を上げた。
「レイ!手柄横取りかよ!」
「横取りも何もあからさまにアソコが原因だろーが!!」
「えーと、ディクリースアジリティ!」
 フィリの速度減少の魔法がトレントとバステトの方に飛んだ。その瞬間、バ
ステトがバットのような鈍器を取り出して振りかぶった。
「ハッ!!」

 カキーン

 バステトは内角高めにきた速度減少の魔法を綺麗に打った。場外ホーム
ランとなったそれは飛んでいった後、誰かよくわからない冒険者に炸裂した
ようだ。バステトは額の汗を手でぬぐいながら一言。
「危ない所でした」
「最近魔法を物理的に跳ね返す人多くない!?」
 フィリがこの世の不条理に叫んだ。

 ドガン!!

 レイとトレントは並んでその屋敷の扉を蹴破った。フィリとバステトもそれに
続いた。中に入った4人は異様な雰囲気にたじろいだ。

 そこは────廃墟のごとき荒れっぷりだったからだ。

 そして屋敷の中央には地下へと続く階段があった。
「ヘッ…来いってことか」
 トレントが不敵な笑みを浮かべた。
「なーんかイヤな予感がするんだが…」
「このパターンって大体ひどいめにあってるよね…」
 トレントとバステトの後について、レイとフィリも階段を降りていった。

 ギィィィィィ、バタン…

 4人が階段を降りていった後、屋敷の扉が勝手に閉まった。

 ◆

 チンチロリン…♪

「む…侵入者か…クック…ワシの野望…誰にも止められはせんぞ!」
 老人がボタンをぽちっと押した。

 ◆

 ゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロ…

 階段の上の方から何か巨大なモノが転がってくる音がしている。レイとフィ
リが顔を引きつらせた。
「ま、まさかローリングストーンって奴か」
「ええええ!?」
 レイとフィリが振り向くと、そこには異様に巨大なマリンスフィアー(大爆発
するイクラ)が転がってきていた。
「もっとタチが悪いわぁぁっぁぁぁぁあ!!」
 レイが叫んだときにはトレントとバステトの姿はすでに階段の下のほうに
消えていた。逃げ足は神速らしい。
「うああああああん!」
「だあああああああ!」
 レイはフィリを腕で抱えると猛ダッシュで階下に向かって走り出した。

 ゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロ!!

 ゴガッ!(途中の壁に引っかかった音)

「「うあ…」」
 レイとフィリが悲壮な表情を浮かべた。

 ◆

 ゴゴゴゴゴ…

 とても穏やかでない地響きを耳にした老人がほくそ笑んだ。
「クック…バァカ者どもめ…ワシの研究の邪魔をしにくるからじゃ!」


「そうかな?俺は年貢の納め時だと思うぜ」


「むっ!?」
 老人が振り返るとそこには騎士の男とブラックスミスの女が立っていた。
「世のため人のため愛のため、悪者はこのトレントが退治してやるぜ」
「その前口上て聞いてると、じんましんが出そうになるんですが」
 バステトのツッコミを無視してトレントが不敵な笑みを浮かべた。
「フン…モロクで会ったジジィがこんな悪者だったとはな」
 その老人──レイとトレントがモロクで出会ったスーパーマッドサイエンティ
ストことモルゲンシュタインがニヤリとほくそ笑んだ。
「ぬしらの集めてくれた材料は役にたっとるよ…クック」
「ホムンクルスを作るんじゃなかったのか?」
「あんなものアルケミスト達のように同情をかい物乞いする手段の一つじゃ」
 今、このじーさんは世界中全てのアルケミを敵にまわした。
「じゃが、ワシの邪魔は誰にもさせんぞ」
「できんのかよ、老いぼれ風情が」
「クック、ボタンぽち」

 ゴゴゴゴゴゴゴ…ゴガガァァァァァアア!!!

「「なっ…!!」」
 トレントとバステトの驚きの声がハモった。モルゲンシュタインとトレント達
の間の床を突き破り見たこともないゴーレムが姿を現したからだ。
「クック…ぬしらのような邪魔者が現れることは先刻承知!ゆけ!我が野
望を邪魔する者を倒せ!逆毛ゴーレム…「スタラクタイトゴーレム」!!」
 スタラクタイトゴーレムの眼がブォンという音をたてながら赤く光った。
『了解シマスタ』
 トレントが小バカにした笑みを浮かべた。
「バカかジジィ!?俺を、んなデカブツだけで倒せると思ってんのか?」
 ゴーレムが指をトレントに向けた。何かの発射口が指についている。
『脱毛剤…発射』
「嘘ですデカブツだけで倒されますゴメンなさあああうっぎゃあああ!!」
「助けてぇぇぇぇぇぇぇ!!!」
 トレントとバステトは襲い来る脱毛剤から本気で逃げ回った。

 ◆

「フィリがいなかったマジで死んでたかもな…」
「あはは…」
 レイとフィリは慎重に階下に向かっていた。先ほどはギリギリでキリエ・エ
レイソンの結界が間に合ったため、大した怪我も負わずに済んだ。
「トレント達が先に進んでるはずだが…」
 そろそろ終着点が見えてくると同時に戦闘音が聞こえてきた。
「戦ってるのかな?トレント達…」
「みたいだな」
 2人は気を引き締めた。だがそこで見たのはありえない光景だった。

 あのトレント達が「逃げ回っている」。

「「なっ…」」
 レイとフィリが驚愕の表情を浮かべた。と、トレントとバステトがこちらに気
がつき猛ダッシュでこちらに駆けてきた。
「おい!フィリ=グロリアス!結界張れ!早く!」
「え!?え!?」
『発射2秒前』
「お願いしますから今すぐキリエマジでえええええええええええ!!」
「あ、えっと…キリエ・エレイソン!!」
 トレントの悲壮な表情にビビりながらフィリが結界を張った。
「トレント、何がどうしたんだ」
「あのゴーレムが発射するのは───脱毛剤だ」
「「なっ…」」

 何て恐ろしい攻撃だ。

「冗談じゃねぇぜ、あのジジィ。俺たちの髪の毛をマジで殺る気だ」
 トレントが悪態をついた。そのジジィことモルゲンシュタインはスタラクタイト
ゴーレムの後ろで高笑いをあげていた。
「ってあのじーさん、モロクにいた…」
「ああ、そうだ。あのジジィ、俺たちを利用しやがったんだ!」
 モルゲンシュタインがにやりと笑みを浮かべた。
「小童ども…そろそろ観念してもらおう。ぬしらは若ハゲになるがよい!!」
「イヤに決まってんだろアホが!!」
 トレントが心の底から本音で叫んだ。
「フハハハ!スタラクタイトゴーレムよ!奴らの結界が切れるまで脱毛剤永
久発射じゃ!」
『了解シマスタ』
「クク…!!発射された脱毛剤は床の排水溝から回収して、スタラクタイト
ゴーレムに常時補給される仕組みじゃ!これにより永久に脱毛剤が噴射で
きるのじゃ!」
 モルゲンシュタインが勝ち誇ったように説明するのを聞き、レイ達の表情に
焦りの表情が浮かんだ。何せこちらから遠距離攻撃をする手段がないのだ。
唯一できるフィリは結界の維持で精一杯だ。フィリが悲壮な表情でレイに聞
いた。
「レイ…私がハゲても愛してくれる…?」
「もちろんさ…フィリはフィリだ」
「ラブコメいいですから!この状況何とかしましょうよ!」
 バステトが頭を抱えながら、ふとトレントの方を向いた。

 ぞくり

 バステトの背筋が凍りついた。トレントが───キレた。
「レイ=フレジッド、こいつはサービスだ」
 トレントがすらりと鞘から剣を抜いた。
「「…?」」
 レイとフィリが怪訝な表情を浮かべながら顔を見合わせた。
「クハハ!剣なぞ抜いてどうする!?投げ付けでもするつもりか!?それ
ともハゲる覚悟で近距離攻撃を挑むかね?」
 モルゲンシュタインが嘲笑った。その嘲笑を無視して、トレントは両手で
剣を握り締め振りかぶった。
「クック!何をするか知らんが我が脱毛ざ…」



「ボウリングバッシュ──────剣圧衝撃波」



「────ぇ」
 モルゲンシュタインが間の抜けた声を上げると同時に、凄まじい轟音が、
衝撃波がスタラクタイトゴーレムに炸裂した。トレントの剣から発生した衝撃
波が、ゴーレムを一瞬にして吹き飛ばした。

 ゴガァァッァァァッァァァァァァァ!!!

 スタラクタイトゴーレムが木っ端微塵に粉砕され崩れ落ちた。
「「…っ!!」」
 あまりの事にレイとフィリが驚きに目を見開いている。それはそうだ。剣圧
を飛ばすなど聞いたこともない。これが──これがトレントの『能力』。そして
これほどの威力を出したにもかかわらずトレントは息一つ乱していない。つ
まり、トレントは自然とこの『能力』を戦闘に混じえる事ができるということだ。

 トレントがモルゲンシュタインの前に立った。
「ひ…ひ…ぃ」
 腰を抜かしたモルゲンシュタインが後退りした。
「…」
 トレントは冷酷な瞳でそれを見下ろした後、モルゲンシュタインの頭頂に生
えているただ唯一、一本だけ生えている毛に手をのばした。

 ぶちぃ!!

「ぐはぁ!」
 モルゲンシュタインが断末魔の悲鳴をあげた。情け容赦なくその毛を抜い
たトレントは身を翻した。
「ワ…ワシの最後の毛が…」
 モルゲンシュタインはそれだけ言い残すとバタリ…と倒れ気を失った。

 レイの傍らまでやってきたトレントがニヤリと不敵な笑みを浮かべた。
「俺を失望させるなよ─────レイ=フレジッド」
「…っ!」

 これが「トレント★樹海団」ギルドマスター、トレント。

 数々のギルドを処刑してきた者達の長。

 レイ達の『ギルド攻城戦』は、すでに暗雲が立ち込め始めていた。

 [続]


〜あとがき〜
『ギルド攻城戦』──Ultimate Emperor's Cross
ルイーナ決戦に向けて、各ギルドがこれから動き始めます。
次回はアルデバランでのお話です。



〜Web拍手の返答〜
>ちなみにあの方はバードですよ(=x=)
>ってかビックフットのかぶり物をしたら、それはチャッキーでは?
Σ(´Д`;)

>くす>ウェウトレス
誤字脱字は仕様です(ノ∀`)b

>「AAは出来るだけ控えてるんですが」>聞かせてもらったクマー
>・・・出来るだけ?(´・ω・`)
出 来 る だ け で す 。

>騎士だけがかかる・・・次回逆毛トレント大暴れ?
何だか逆毛の話になってない今回の話orz

>とりあえずシャドウ=プラスタラスが一番あやしい件について
ノーコメントでw

>元気に登場したえれんさんといい死んだふりが特技ですね
こういうの書いてて思う。負けたら出番がそれっきりのキャラて
おかしいと思う。死んでない限り再登場普通にするだろうと…。
特にダメージが同程度ならなおさらですね。

>このトリスタン3世の仲介で結婚式だと王妃が浮気追求にきたり
>して愉快なことになりそうw
ノーコメントで(ぇ

>え?ルイーナ決戦で遂にラブコメビーム発射ですか?(・∀・)ワクワク
そこ、期待しない!

>次回予告:トレントの歪んだ性格にレイ達も歪んで行く。
>次回!逆毛とラブコメ!逆毛の中で輝け、トレント!
全然ちゃいます!



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