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Ocean's Blue

046:Lie

 昔々、遥か太古の時代、3つの世界がこの世には存在しました。

 神々が住まう世界──アスガルド
 巨人族、つまり魔族が住まう世界───ヨトゥンヘイム
 そして、我々人間の世界──ミッドガルド

 この3つの世界は世界樹イグドラシルの幹によってそれぞれ繋がりを持っ
ており、イグドラシルの頂上部分にアスガルド、枝葉の部分にヨトゥンヘイ
ム、根っこの部分にミッドガルドが通じていたのです。

 そして神々の世界アスガルドの中央にはグラストヘイムと呼ばれる宮殿が
ありました。そこには神々の中でも最も偉い神様──主神オーディンが住ん
でいました。

 ◆

「あれ?グラストヘイムって魔法都市ゲフェンの北西にある魔物がヤバいぐ
らいいるあのグラストヘイム?」
「ええ、そうですよ。グラストヘイム古城は元々アスガルド──イグドラシル
の頂上にあったものです」
 国境都市アルデバランの喫茶店の一つで、1人の青年と1人の少年が熱心
に話しこんでいた。この2人、ただの兄弟にも見えるが実は全然違う。この2
人は現在、『ギルド攻城戦』において世界最強と言われているギルド「皇帝
の十字架」の最高幹部『七近衛』なのである。

 青年は「葬送曲」 ファルス=エタニティという名のクラウン

 少年は「長射撃」 シャドウ=プラスタラスという名のスナイパー

 ファルスの話──北欧神話の話は続く。
「つまりグラストヘイムは神魔の最終戦争たる『ラグナロク』において、ミッド
ガルドへと落下してきたことになりますね」
「うはぁ…丸ごと落ちてくるってどんな力があったら出来るんだ…」
 シャドウが目を丸くしながらその話に聞き入る。
「古代の神族と巨人族にはそれだけの力があったということです。アース神
族の主神オーディン、ムスペルヘイムの長にして巨人族の最強の炎獄王ス
ルトなど、名を挙げればキリがありません。そしてその神々に最も近い力を
持つと言われているのが『魔軍七大勢力』の魔王達です」
「バフォメットとかダークロードとか?」
「そうです。そしてその神々に近い力を持つバフォメットに戦いを挑み、生還
した我々の主「皇帝」アイフリード=フロームヘルは──神に最も近づいた
人間の一人かもしれませんね」
「う〜ん…」
 シャドウが難しい顔をして考え込んだ。それを見たファルスがにっこりと笑
みを浮かべた。
「どうしました?私にできることなら解決しますけど?」
 シャドウがその言葉を聞いた途端、喫茶店のウェイトレスを呼んだ。
「今日ファルスが奢ってくれるんだったよね。んじゃウェイトレスさん、ジャン
ボパフェミックスレジェンドをお願い〜」
「かしこまりました〜」
「…」
 このガキャ、ファルスの笑みが引きつった。

 ◆

 同じく国境都市アルデバランの一角にあるアルケミストギルド。ティア=グ
ロリアスとラクール=フレジッドの2人はここにやってきていた。
「はい、後はこの書類に目を通した後、ジュノーの審査員の所に行けばオッ
ケーですよ」
「はい!」
 ティアがアルケミストギルドの受付の女性から書類を受け取った。その書
類にはアルケミストになるための心得がいくつか書いてあった。


「アルケミの掟」
・闘わなきゃ現実と。
・自虐的になるな。
・後悔するな。
・期待するな。
・黙ってソロで狩れ。


「…」
 ティアの額から汗が一筋零れ落ちた。
「いや!私は頑張るし!」
 ティアはラクールがいる待合室の所へと歩いていくと、そこにラクールの姿
はなかった。代わりに一枚の紙切れが椅子の上に放置してあった。


『ティアちゃんへ。ヒマなんでちょっと大地割ってくる』


「…」
 何か桁が違う事が書いてあるような気がするが、ひとまずわかっているこ
とはラクールはヒマ潰しにどこかに行ってしまったということだ。
「どうしよう…街でも歩いてこようかなあ…」
 どのみち今日の宿は決めているのだ。夕方までに戻ればラクールと落ち
合えるだろう。それにアルデバランは初めてきたのだ。
「よっし、街探索に出発!」

 ◆

 アルデバランの各所──カプラ本社などをまわったティアは水路の近くに
ある椅子に座り込んだ。
「ひっろーい…ここ」
 すると近くの傘付きのテーブルに2人の男女が座っていた。冒険者のよう
で、男はアサシン、女は騎士のようだ。
「──で、「皇──を──」
「ですが、───の戦力では─」
 会話の断片が聞こえてくるところから推測すると『ギルド攻城戦』の話のよ
うだ。
(この2人も『ギルド攻城戦』にでているのかな?)
 だとしたら、どちらの勢力についているのだろう。反皇帝勢力「レジスタン
ス」か、それとも「皇帝の十字架」か。何となく興味が沸いたティアはそちらへ
と耳を傾けた。
「あまりにも途方もない考えです。私はあの人が恐ろしいと思います。早め
に手を切ったほうが得策ですよ」
 騎士の女の言葉にアサシンの男がニヤリと笑みを浮かべた。
「そうかな?俺はついたほうが楽しいと思うよ、トレントにね」


──────トレント!?


 トレントにつく──どういうことだろうか。「トレント★樹海団」は「皇帝の十
字架」の傘下のギルドであり、一勢力の主ではないはずだ。騎士の女が言
葉を荒げた。
「ですが!トレントの元で「皇帝の十字架」に反旗を翻すなど、あまりにもリ
スクが大きすぎます!」


─────ちょっとマテ


 自分はとんでもない話を聞いているのではないだろうか。トレントが?皇帝
に?反旗を翻す?しかもこの2人、「トレント★樹海団」の人間ではないよう
だ。つまり、今度のルイーナ決戦において、トレントの大反乱計画が準備さ
れているということではないだろうか。だとしたら、今度の戦いは乱戦どころ
の騒ぎではない。荒れに荒れまくるだろう。

「余計な事聞いちゃったみたいだね。ティアちゃん」
「───っ!!」

 ティアの心臓が飛び上がりそうなほどはね上がった。ティアが声のした方
に恐る恐る振り返ると、そこには「トレント★樹海団」のナンバー2であるロー
グ、ルアーナの姿があった。気配を完全に消す『能力』を持つ女である。
「あ…あぅ」
 ルアーナがにっこりと笑った。
「ごめんね。ルイーナ決戦まで大人しくしてもらおうかな」
「───っ!!」

 だっ!!

 弾かれたようにティアが逃げ出した。ここで、こんな所で捕まるわけには絶
対いかない。ルアーナは逃げ出したティアの背中を見ながら背後の気配へ
と向かって言った。
「クリス、逃がしたらダメだからね」
「ああ」
 そう言葉を残し、クリスと呼ばれた男の気配がルアーナの背後からスゥ…
と消えた。その後、ルアーナがさきほど会話をしていた2人に話しかけた。
「刃、タル、覚悟は───決まった?」
「「─────っ」」
 アサシンの男──刃と騎士の女──タルが黙りこくった。
「私達のマスター、トレントにつくか。現状に満足するか」
 ルアーナの言葉を受け、刃が静かに口を開いた。
「わかったよ。俺のギルド「CollectionBox」はルイーナ決戦で「トレント★樹
海団」につく。ただし───条件がある」
 ギルド「CollectionBox」のギルドマスターの刃と「トレント★樹海団」のナン
バー2であるルアーナは互いの腹を探り合うかのごとく、視線を合わせた。
「それで──その条件とは?」
「ああ──」
 刃が静かに口を開いた。


「『ギルド攻城戦』に参加する全ての女性に──ミニスカを採用してほしい」


 刃は隣にいたタルによって即座に斬り倒された。

 ◆

 ラクールのいる所まで逃げ切れれば何とかなる!!ティアは背後から迫り
来る追っ手の男、「トレント★樹海団」のハンター、クリスを振り切ろうと走っ
ていた。クリスの目が鋭く細まった。
「無駄だよ」
 クリスは罠を自分の足元に設置した。
「スキッドトラップ!」
 ブゥン!クリスが強制移動の罠のせいで加速し、さらにクリスが移動先に
スキッドトラップを置いた。その繰り返しにより異様なスピードでクリスがティ
アの元に追いついた。
「何かそれせこいよぉぉぉ!」
 ティアの魂の叫びも虚しく、ティアはクリスに捕まってしまった。
「さてと、大人しくしてね。大人しくしてくれないと強制的に大人しくしてもらう
からさ」
 いつの間にか血がべったりとついた棍棒を持っているクリスがにっこりと
笑った。というか笑顔が怖い。
「───っ!」
 ティアはその時、クリスの背後に見慣れた人物の姿を発見した。ラクール
だ。助けを求めてティアが声を張り上げ────

 ばご

 容赦無し。クリスから脳天を棍棒でどつかれたティアが気絶した。
「さてと戻るかな」
 クリスはティアをやけに手馴れた手つきで布でくるみ、肩にかついでルアー
ナの元へと戻っていった。



ピチャン…ピチャン…

 天井からしたたり落ちる水の音でティアは目を覚ました。
「ううん…」
 まだ頭がガンガンする。思いっきり頭がどつかれたのだからしょうがない
が。そしてティアは自分が置かれた状況を把握した。
(捕まって…監禁された!?ここって地下牢…?)
 ティアは両手をそれぞれ別の天井からさがっている鎖につながれていた。
(さ…最悪…どうしよう)
 ティアはそこでふと右を向いた。


 三角木馬。


 ティアの顔が引きつった。硬直した。
(み…見間違い…)
 ティアは恐る恐る左を向いた。

 
 首輪。鞭。


 ティアの顔がさらに引きつった。肩が小刻みに震えだした。
(み…見間違い…)
 ティアは恐る恐る正面を向いた。そこには「wc」と書かれた紙が貼り付け
てある扉があり、中から声が聞こえてきた。
「うがぁぁあああ…あ…アホトレント…めぇぇぇ…腹がぁぁぁ腹がぁぁぁぁ」
 地獄の底から響いてくるような苦悶の声である。


「ひ…」
 そこでティアの中で何かがキレた。
「いやぁぁぁぁぁ!!ここって拷問部屋じゃん!いやあああああ!!」
「そう…ここは「トレント★樹海団」のアジト、アルデバラン支部の地下拷問
室。今日も今日とていたいけな少女の悲鳴がこだまする」
 そう言って現れたのは先ほどティアを殴り倒したハンター、クリスである。
「ままままままさか拷問する気!?」
「うん、する」
 即答。
「いやあああああああああああああ!!」
 ティアがじたばたと暴れたが、鎖のせいでまともに身動きがとれない。
「じゃあまず、このスケスケの服を着てもらおうか」
「ヒィィィィィィィィィーッ!!」
 ティアの表情が顔面蒼白になった。


 ごづ!!


 突然、クリスの後頭部に鈍痛が走り、クリスはたまらずその場で気絶した。
クリスが倒れた後、そこに立っていたのは「トレント★樹海団」のプリースト、
奈留だった。
「大丈夫?」
 奈留がクリスをさりげなく踏んだ後にティアの元へとやってきた。奈留は鍵
を取り出すとティアの鎖を外した。
「逃がして…くれるの?」
「ええ」
「でも何で…?」
 奈留は憂いをおびた瞳でかすかに微笑んだ。
「だって…こういう場面って逃がした人間はいい人っぽいでしょ…?」
「…」
 ティアの表情が引きつった。
「り…理由それだけ…?」
「えぇ♪」
 ティアは心の底から思った。やっぱり「トレント★樹海団」にロクな奴はいな
いと。足並みは揃っているのが不思議なくらいだ。
(ああ…そういうことなのかな…?)
 要するに全員が360度足並みが揃ってないせいでちょうど良く同じ方向に
向いているだけなのだろう。つくづくイヤなギルドである。


 アジトの裏口まで奈留に案内されたティアは素直に頭を下げることにした。
助けてもらったことに違いはないからだ。
「ありがとうございました」
「いえ、気をつけてね」
「はい!」
 ティアはたったった…という足音とともに立ち去っていった。ティアの後姿が
見えなくなった後、奈留がクスリと笑った。
「これでいいですか?」
「上出来」
 そう言って奈留の後ろに現れたのは「トレント★樹海団」のナンバー2、ル
アーナである。
「ちゃんとトレントのシナリオ通りに動き始めてるしね。猿芝居ありがとうね」
 ルアーナの後には──「CollectionBox」のタルが立っていた。タルは不敵
な笑みを浮かべながらルアーナに頷き返した。ちなみに「CollectionBox」の
ギルドマスターである刃が頭から血をだくだく流しながらタルの足元に倒れ
ているのには誰もツッコミをいれることはなかったという。

 ルイーナ決戦は大荒れの兆しを見せ始めていた。

 [続]


〜あとがき〜
書くこともないので次回予告だけ。
「皇帝の十字架」の最高幹部であるキスクとリシア。
2人はコンロンでその男に出会った。
輝く凍れる闇氷の龍をまといし「皇帝」に。


〜登場人物紹介〜
●刃
性別:男
JOB:アサシン
Guild:「CollectionBox」
「トレント★樹海団」と手を結んだギルド「CollectionBox」のギルドマスター。
よくセクハラ発言の後、タルに斬り倒されている。

●タル
性別:女
JOB:騎士
Guild:「CollectionBox」
刃の暴走を止める「CollectionBox」の歯止め役…に見えるが、
よく暴走気味になる人。刃に対するツッコミ担当。

●クリス
性別:男
JOB:ハンター
Guild:「トレント★樹海団」
どう見てもまともな人物にしか見えないが実はかなりの危険人物。
トリッキーな技を多用する。



〜Web拍手の返答〜
>アルケミ・・・ある毛み・・・毛がある・・・
>だからアルケミを利用したのかぁぁぁぁ(違
  _, ._ なわけあるか─────い!!
(;゚ Д゚)
  ⊂彡☆))Д´)

>私の出番はまだですか(*ノωノ)
本人によく似た人物がでております(´ω`)


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