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Ocean's Blue

048:Rebellion

 国境都市アルデバランに移動した「Ocean's Blue」の面々を待っていたの
は意外な人物だった。何とフィリの姉であるミリア=グロリアスとプロンテラ
聖騎士団副長補佐であるエリカの従姉妹のセレス=ドラウジーがレイ達の
前に姿を現した。
「久しぶり、皆」
「久しぶりですね、エリカ。活躍は聞いてますよ」
 どうやら2人は今度アルデバランでの『ギルド攻城戦』の件についてここに
きたらしい。

 ◆

「「ライブカメラ?」」
「そそ」
 フィリ達の声がハモった。聞きなれない単語だったからだ。
「ようするに映像伝達機のことよ。遠くにいてもそこの様子が見えるの」
 ミリアの説明にレイが小首をかしげた。
「それをどうするんですか?」
「つけるの、戦いの前にルイーナ砦のあちこちに」
「へ?」
「レイ君、実は自分の立場よくわかってないんじゃない?」
「何が…ですか?」
 ミリアがやれやれとため息をついた。
「『ギルド攻城戦』は勝ち負けのトトルカチョをはじめとして、巨額の金が動く
の。しかも今回はルーンミッドガッツ王国中が注目してるわよ。何せ無敗を
誇った「皇帝の十字架」が派遣部隊であったとはいえ、「ヴァルキリーレル
ム」で負かされてるんだからね。その負かした集団のトップにいるのがあな
たでしょ?」
「…何か…異様に話がでかくなってないですか…」
 レイが頭を抱えた。
「それで、この激しい『ギルド攻城戦』という戦いを一目見たいという要望が
国に殺到してたわけ。だからお父様が各街の商人や財閥を動かして、ライ
ブカメラを設置することになったわけよ」
 そこでエリカの従姉妹であるセレスが口を挟んだ。
「国王陛下もこの話には乗り気でして、プロンテラ騎士団や聖騎士団なども
手伝いにでていますよ」
「おっさん…」
 レイがさらに頭を抱えた。仕事しろよ、国王。

 と、そこでミリアがにこにこしながら聞いた。
「それで、勝てそう?「皇帝の十字架」に」
「正直厳しいです…と言いたいんですが、いい情報も入ってきましたよ」
「どんな?」
「「皇帝の十字架」の傘下には「トレント★樹海団」っていう処刑部隊がある
んですが、どうやら「皇帝」に反旗を翻すみたいです。これは親父と旅して
るティアからの手紙に書いてあったんですが」
「「トレント★樹海団」って…あの悪名高い…」
「多分それです」
 イアルが口を開いた。
「だけどよ、あいつらが何の勝算もなしにそういうことをするとは思えないん
だが。俺は凄い不安だ…」
「ですね。私もそう思います」
 エリカが嫌そうな顔をしながら言った。あのギルドには散々痛い目に合わ
されているからだ。そしてそれを抜きにしてもとてつもない化け物が向こうに
はいるのだ。

 「皇帝」 アイフリード=フロームヘル

 魔王すら殺す、最強の魔術師が。いつもうるさいジュニアが無言で目を伏
せた。静かなる闘志を瞳に秘めて。

 ◆

 反皇帝勢力「レジスタンス」としてレイ達と同盟を結んでいるギルドの中で
もっとも大きく、そして強いギルド、それが「雷獣の咆哮」である。ギルドマス
ターはイアルの兄であるロウガ=ブラストである。その「雷獣の咆哮」の最高
幹部であるローグの青藍、同じくローグのケイル、ウィザードのジャンク、そ
してアサシンのナカラナの4人はロウガとともに宿の一室に集まっていた。
「この前はご苦労だった」
「といっても負けただけですけどね…」
「左に同じ…」
 ケイルとジャンクはどんよりと落ち込んでいた。そんな2人を見たロウガが2
人の肩をぽんぽんと叩いた。
「大丈夫だ。あとでエロ本やるから」
「「俺達えらい低レベルですね!!」」
 ケイルとジャンクが思わず抗議した。それを適当に流しつつ、ロウガが青
藍とナカラナに視線を向けた。
「お前たちは「トレント★樹海団」について探れ。あのトレントの事だ。きっとロ
クでもない事態を引き起こすつもりだろう」
「それなんですけど」
 ナカラナが首をかしげた。
「それなんですけど、確かに「トレント★樹海団」は「皇帝の十字架」に反旗を
翻すようです。そして「トレント★樹海団」といくつかのギルドが接触をとった
のも間違いありません。ですが、たかだか数ギルドで「レジスタンス」や「皇
帝の十字架」を揺るがすことなんてできないと思うんですが」
 青藍がナカラナの言葉を続けた。
「それと「トレント★樹海団」には特殊な能力を使える者達がいる話は以前し
たと思いますが、レイ=フレジッドの報告によるとギルドマスターのトレントの
能力は「剣圧」を飛ばすことだそうです」
「…」
 ロウガは厳しい顔をして黙り込んだ。トレント達は邪魔だ、これは間違いな
い。不確定要素である「トレント★樹海団」の勝利はあってはならない。「レジ
スタンス」が「皇帝の十字架」に勝たなければならないのだから。
「邪魔をするというのなら…叩き潰すしかない」
 その瞬間、ロウガの眼に炎が宿ったように他の4人は感じたという。

 ◆

 国境都市アルデバランの衛星都市ルイーナ──

 そこにある砦、「皇帝の十字架」の本拠地であるルイーナ砦の中のある一
室で、2人と2人が向かい合わせに座っていた。

 「皇帝の十字架」ギルドマスター、アイフリード=フロームヘル
 「皇帝の十字架」ナンバー2、ライジング=ボーンド

 その対面には

 「トレント★樹海団」ギルドマスター、トレント
 「トレント★樹海団」ナンバー2、ルアーナ

 応接室に緊迫した空気が流れる。一触即発な空気の中、トレントだけがニ
ヤニヤ笑いを浮かべていた。トレントはアイフリードに向かって口を開いた。
「わざわざお招きくださってありがとうございます、「皇帝」様々」
 トレントの軽口に付き合わず、アイフリードが話し始めた。
「街で妙な噂を聞いた。どうやら私のギルドの子飼いの処刑部隊が反旗を
翻すかもしれないという妙な噂をな」
「へぇ、そいつは妙な噂だ」
 トレントが口元に不敵な笑みを浮かべた。
「反旗を翻すつもり…じゃなくて反旗を翻すが正しい表現だしな」
「ちょ…トレント」
 ルアーナがたしなめるが、もはや手遅れだった。
「…」
 アイフリードの隣にいるライジング=ボーンドの眼が鋭くなり、アイフリード
が蔑むようなため息をついた。
「金がいるから私の子飼いになったというのに、貴重なパトロンを失ってもい
いというわけか」
「ああ、構わないね。俺が「皇帝の十字架」を潰してしまえばいいわけだし
な。砦をとれば金が入ってざっくざっくだ。ま、あんたらは内にでっかい癌を
わずらっていたわけだ。もう呆れるぐらいの「病気」をな。合わせて癌呆とか
言ってみたりしてな、はっはっは」
 処置無し。この男は本気で「皇帝の十字架」にケンカを売るつもりなのだ。
「ならば──今この場にくること自体が危険だとは思わないのか?」

 ザン!ザザン!!

 部屋に6人の男女が雪崩れ込んできた。それはキスクをはじめとする「皇
帝の十字架」の最高幹部『七近衛』だった。トレントとルアーナは完全に包囲
されてしまった。

 だが、トレントは、動じない、ただ、不敵な笑みを浮かべるだけ──

 スッ…

 トレントが懐に手を入れたのを見た「皇帝」と『七近衛』の全員が警戒する。
トレントが静かに口を開いた。
「アイフリード、貴様は強烈なカリスマで人を惹きつけ、ここまでギルドを成長
させた。カリスマこそが強烈な一本柱なんだ。──だが」
 トレントの眼が妖しく光ったように皆感じた。
「そのカリスマ、俺が摘み取ってやる」
 トレントが懐から手を抜き放った。そしてトレントの手には──


 動物の「あれ」が握られていた。「あれ」とは一言で言えば「くそ」のことだ。


「「なっ…」」」
 どよめく「皇帝の十字架」の最高幹部の面々をよそにトレントががたりと立
ち上がり、それを振りかぶった。
「ふん!!」

 べちゃ!

 トレンとは「あれ」を一番近くにいた『七近衛』、キスクへ投げつけた。
「うぎゃああああああああああ!!きったねえええええええええ!!」
 避け損ねて顔面にくらったキスクが絶叫を上げる。さらに追加を懐から取
り出したトレントが他の連中にも投げつけまくりはじめた。その間にルアーナ
は気配を消して脱出していった。

「ふざけるな」

 ばちん!!

 アイフリードの一言ともにトレントの持っていた「あれ」が消し飛んだ。電撃
だろうか、手に「痺れ」とさっき持っていたものの「臭さ」を感じながらトレント
がゆっくりとアイフリードと対峙した。
「ここで死ね。トレント」
「…ちっ」

 ゴガゥン!!

 次の瞬間、部屋の中に出現した強大な電磁球がトレントの身体を吹き飛
ばした。壁を突き破り、トレントの姿がその場から消え失せた。
「逃げたな」
 ライジング=ボーンドが一言呟き、アイフリードが頷いた。トレントが電磁球
の反動を利用して背後に跳んだことにアイフリード達は気がついていた。さ
らにアイフリードの足元にはトレントが投擲したと思われるソードナイフが
深々と床に突き刺さっていた。そのソードナイフには紙が貼り付けてあった。
「…」
 アイフリードが静かにその紙を手にとって読んだ。


 『ミタナ(゚Д゚)』


 「皇帝の十字架」は翌日の話し合いでルイーナ砦での決戦では「トレント★
樹海団」を皆殺しにする案が満場一致で採択されたという。 

 ◆

 同じ頃─

 アルデバランのある建物の一室、「トレント★樹海団」と接触したギルドの
一つ、「CollectionBox」のアジトでは一悶着起こっていた。
「おい刃!お前勝手にトレントと手を結んだそうだな!」
 一人の騎士の男が「CollectionBox」のギルドマスターである刃につかみ
かかった。刃は不敵な笑みを浮かべた。
「クマーゼ…だって女の子はミニスカだぜ…?」
「意味がわからん!それに俺の名前はクルーゼだ!」
「だって熊だしね」
「意味がわからん!それに俺は熊じゃない!」
 「CollectionBox」の騎士、クルーゼが刃の胸ぐらをつかみあげた。
「あれほど勝手に決めるなと言っただ・ろ・う・がああああああ!」
 刃がカクリと身体の力を抜いた。
「熊に会ったら死んだフリ、これ最強」
「話を聞けあほがあああああああああ!!」
 クルーゼは刃を持ち上げると複雑な間接技から、強烈な身体のひねりを
加えつつバックドロップ気味に刃の脳天を床に叩き付けた。

 ぎゅるりらっ!!ずがん!!

 その様子の一部始終を見ていた「CollectionBox」の騎士の女、タルが驚愕
の表情を浮かべた。(刃を助ける気はない)
「あれは伝説の覆面レスラー!アルティメットクホグレンの大技!オーバー
クホスペシャル…!?あんな大技、いつの間に会得していたというの!?」
「技はどうでもいい!」
「いやそれがあるなら、レスラーでも食っていけ……いやなんでもないけど」
 クルーゼに睨まれたタルが視線をそらした。
「とにかく俺は反対だ。トレントは何を考えてるかわからん!」
「そうでもないさ」
 ゆらりと刃が身体を起こした。
「クルーゼ、他のメンバーにも言っておいて。「CollectionBox」はトレントにつ
くってね」
「どういう…つもりだ」
「ルイーナ決戦が楽しみだってことさ…」
 刃の雰囲気に押されてクルーゼが一歩下がった。

 実に楽しみだ。





 ミニスカが。





 刃はクルーゼとタルの予想をはるかに超えた…アホだった。

 ◆

 「トレント★樹海団」とひと悶着あったあと、「皇帝の十字架」のナンバー2、
ライジング=ボーンドは自室に戻った。そしてその直後、口元に不敵な笑み
が思わず浮かんだ。
「不確定要素も計画のうちだ…実に楽しみだ。ルイーナ決戦がな」
 ライジング=ボーンドは部屋の片隅に無造作においてある「刀」に目を向
けた。そう、「刀」が部屋の片隅においてあった。
「実に因果なものだ、この「刀」で再び運命が交錯するということはな」
 ライジング=ボーンドの眼が危険なモノへと変化した。

 [続]


〜あとがき〜
遅れてすいませんorz
次回予告、ある──少年の物語。
その少年はその日、少女に出会った──
(次回予告になってない)
次回の話、そしてその次の決戦前夜の話の次からルイーナ決戦開始です。


〜登場人物紹介〜
●クルーゼ
性別:男
JOB:騎士
Guild:「CollectionBox」
「CollectionBox」の幹部の一人。苦労人。
何故か熊呼ばわりされている。



〜Web拍手の返答〜
>アイフリード様イイΣd(゚∀゚*)
こうサブキャラが目立って主人公の影が薄い…orz

>ラブコメ成分が抽出されました、これは危険です!
何のことだかわかりませんな(−−

>これが噂のラブコメですか(*ノωノ)おいちゃん恥ずかしくて読めn
何のことだかわかりませんな!(−−;

>敵も味方もらぶこめ〜、あっちでこっちでらぶこめ〜
何のことだかわかりま…ええい!
うるさいうるさいうるさぁぁい!。・゚・(ノ∀`)・゚・。


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