前へ  小説目次へ  次へ

Ocean's Blue

049:Truth

 少年の名はリーフ。

 少女の名はリーナ。

 2人の名の似た少年と少女は月明かりの下、運命に導かれるかのように出会っ
た。リーフはリーナとその弟が自分の父によってこの街に連れて来られた事を後
で知った。リーフの父は人々から慕われ、そして敬われるほどの人徳を持ち合わ
せており、そして、強かった。リーフの父は孤児院からリーナとその弟を引き取っ
たのだ。

 ◆

 突然、その男女はレイの前に姿を現した。
「よーっす!お前がレイ=フレジッドだな!!はっはっは!!」
「うわ、何だお前」
 背中をバンバン叩かれたレイがむっとした顔で睨み返す。するとその男──ホ
ワイトスミスの男が親指でびっと自分を指差した。
「俺の名前はリゲル=ウルヴァリン、で、そっちのハイプリーストの女が俺の彼女
のミスティ=ホーリー。美人だろ?ん?ん?」
「あ…ああ」
 美人だろの部分に思わず頷いてしまったレイは向こうの方にいるフィリからか
なり痛々しい視線を感じて身をすくませた。いやまて、俺はフィリが一番だと叫
び出したい衝動をおさえ込みつつレイは平静を装った。
「はじめまして、レイ様。ご活躍のほどはよく聞いております」
 天津撫子のような仕草でお辞儀するミスティ。さらにリゲルがレイに詰め寄っ
た。
「俺たちさ、以前『ギルド攻城戦』に「絆の旋律」「光の翼」っていうギルドで出て
たんだけどさ、「皇帝の十字架」にやられちまって撤退してたわけだ。だけどやっ
ぱ!時代は『ギルド攻城戦』っしょ!ってことで俺たちを「Ocean's Blue」に入れて
くれ!」
「───は?」
 レイの目が点になった。するとミスティがよよよと泣き崩れた。
「「レジスタンス」の他のギルドに入れてもらおうとしても、「絆の旋律」と「光の翼」
での私達の名前が売れすぎてるみたいで、躊躇されるのです…」
 確かに「絆の旋律」と「光の翼」は世界ナンバー2とナンバー3のギルドであり、
ヴァルキリーレルム砦を主力でおさえる大同盟であった。そんなギルドの頂点の
人間がほいほい来ても小さなギルドの人間は入れづらいだろう。
「迷惑はかけん!頼む!俺たちも一緒に戦わせてくれ!!」
「う、う〜ん…」
「頼むぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!!」
「だーっ!わかったから泣くな!俺の服で鼻水ふくなおいいいいいっ!!」
 レイが悲鳴を上げた。

 こうして、かなり唐突に「Ocean's Blue」に新しく2人のメンバーが増えた。

 ◆

 ある噂を聞いた。リーフの父は10数年前の大戦、「トリスタンの悪夢」ですで
に死亡していると。だが優しい父は目の前にいる。父にその話をすると、事情が
あって身を隠している、昔の仲間に会えないのは寂しいと言っていた。

 ◆

──賢者の都市ジュノー

「ティアちゃん転職おめでとう」
「ありがとうございます!」
 ラクールの言葉にアルケミストへと転職したティアが頭を下げた。そして頭を上
げたティアはラクールが難しい顔をしているのに気がついた。
「どうしたんですか?」
「いや…ティアちゃんって『ギルド攻城戦』のためにアルケミストなったんだよ
な?」
「? そうですけど」
「ルイーナ決戦明日みたいだな」
「…」
 ティアの頭がその言葉を理解するのに数秒を要した。

 ジュノーからアルデバランに行くためにはペコペコを使っても最低で1週間はか
かる。そして一番大事な戦いは明日。ていうか決着は明日でつく。
「うそおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!?」
 絶叫するティアの隣でラクールが冷や汗をたらした。
「うーむ…エルメスプレートでバーベキューとかするんじゃなかったな…」
 2人は旅を堪能「しすぎ」だった。
「でも、うあ、私、なんのために、転職しにきたん、だか」
 取り乱すティアの肩にラクールが手を置いた。
「大丈夫だ。とにかくペコペコに乗れ」
 その力強い言葉にティアは勇気づけられた。
「は、はい」
 ティアはペコに乗った。するとラクールが紐を取り出しティアとペコペコを厳重に
縛りつけた。
「ラ…ラクールさん何を?」
「舌を噛むなよ…ペコペコに乗って走るより、俺がペコペコごとかついで走ったほ
うが速い!!」

 ぐわっ!

 いきなりラクールがペコペコごとティアを持ち上げた。案の定ペコペコが暴れ出
したため、ラクールがボディブローで黙らせる。
「超マッハでアルデバランまで連れて行ってやるぜ!!うおおおおっ!!」
「それって私だけかついだ方がはや…うっきゃああああああ!!」
 ツッコミを最後までする前にラクールが猛スピードで駆けはじめた。音速を超え
たその走りの中、ティアは走馬灯を見ているような気分になったという。

 ◆

 リーフとリーナはともに暮らすうちに互いに強く惹かれていった。2人の恋はい
つしか愛へとかわるのにそう時間はかからなかった。

 ◆

 アルデバランは水の都市とも言われている。街の中にある川の水流は人々を
なごやかな気分にさせる。ジュニアがその川を見下ろしながら、目を伏せた。

 「皇帝」アイフリード=フロームヘルとの再戦。

 正直言って勝てるか微妙だった。「皇帝」もまた以前より強くなっている。しかも
圧倒的に。おそらくは…自分の大鎌クレセントサイダーを周囲に展開させる「空
間支配」の能力だけでは勝てないだろう。

 ならば、奥の手まで使わなければならない。

 だが、それで勝てなかったら?敗北が恐ろしい。負けたくない。でも負けるかも
しれない。相手は、あの「皇帝」だ。確実な勝利など存在しない。
「はぁ…」
 ジュニアがため息をついた。するとジュニアの後ろで誰かがクスっと笑った。
ジュニアが思わず振りかえるとそこにはエリカがいた。
「ため息なんてらしくないですよ」
「聞かれていたのか…」
「負けるのが怖いですか?」
「…っ!」
 いきなり真顔で聞いてきたエリカにジュニアが面食らったような表情を浮かべた。
「僕は…」
「勝てますよ」
「ぇ」
「私は信じてます」
 エリカの力強い言葉にジュニアはさらに面食らったような表情になった。
「自信を持ってください。そして私達に勝つところを見せてください。私は…ジュ
ニアが負けるところなんて見たくないです」
「…ああ」
 ジュニアがいったん目を伏せた後、ゆっくりと目を開いた。その眼は完全に火
がついた者の眼だった。
「エリカ、ありがとう。僕は勝つ!」
 ジュニアは力強い宣言とともにエリカの尻を手で撫で回した。
「…」

 にっこり

 エリカが天使のような笑顔のまま、レイピアをゆっくりと鞘から抜いてから、そう
時間がたたないうちに、ジュニアの断末魔が響き渡った。

 ◆

 ある日、リーナに舞を見せてもらった。舞は美しく、リーフにはリーナがまるで天
女のように見えた。そしてその舞を見せてもらった日、破綻が訪れた。

 ◆

 「トレント★樹海団」のアジトではトレントが今度のルイーナ決戦での作戦をまだ
話してなかったメンバーに作戦を通達し終わった頃だった。
「以上だ、質問はあるか?」
「「…」」
 皆、唖然としている。そして作戦のことを知っているメンバーですら、改めて聞
かされて信じがたいモノを見るような目でトレントを見た。
「質問がないなら今日は解散だ。俺は先に寝る」
 トレントはそう言い残すとさっさと部屋から出て行ってしまった。騎士のフィン=
ロルナークが隣のアサシンのプレクに聞く。プレクもまたこの作戦を立案した人
間の一人だ。
「本当に成功するのか?」
 プレクが目を伏せた。
「そうなるだけの仕込みは終えている。あとは仕上げるだけだ」
「…っ」
 フィンは戦慄した。「レジスタンス」そして「皇帝の十字架」は本当に食われるこ
とになるかもしれない。「レジスタンス」と「皇帝の十字架」が疲弊したところを襲う
などというものではない。どちらも直接潰すのだ、「トレント★樹海団」が。

 その時、「皇帝」をはじめとする全ての人間が思い知るだろう。

 トレントのシナリオ通りに動かせられていたということを。

 ◆

 父のいる家に帰った後すぐ、リーナが自分の弟を殴り倒し、リーフに襲いか
かったのだ。首を絞めあげてくるリーナをリーフは信じがたいものを見るような
目で見た。

 あのリーナが、何故。

 優しかったリーナが、何故。

 そして、リーフは、見た。

 リーフの父が今まで見たこともない陰湿で邪悪な笑みを浮かべていた。リーフ
の父は嬉しそうに語った。
「これで私はまた一つ真理へと近づいた。欠陥品の貴様らでも役に立つというこ
とだ、わかるかリーフ?」

 何が真理だ。

 わけがわからない。

 そして、リーフはリーナともみ合ううちに、彼女を短剣で刺してしまった。

 ◆

「こんな所にいたんだ」
 フィリがアルデバランの中央にある時計塔の前に立っていたレイに声をかけ
た。レイはフィリの方に振り返った。
「フィリ、ここにある時計塔は神魔の時代から時を刻んでいる。だけど俺の時間
は…母さんがさらわれたあの日から止まっている」
「…うん」
「家族として平穏に過ごせた時間を全て奪われた。その中でフィリとともに旅がで
きたことは俺にとっても大切な時間になった。だけど、家族としての時間はまだ止
まったままなんだ」
 レイは時計塔を見上げた。
「明日…必ずウェルガ達は仕掛けてくる。そこが…決着の舞台だ」
「レイ…」
 そこでレイがにやっと笑った。
「決着をつけたら、アルベルタに帰らないとな」
「うん。ちゃんと私のことマリアさんに彼女ですって紹介してね」
「う〜ん、その紹介はどうかなぁ…」
「えーっ、ちゃんと説明してよーっ」
「いや彼女じゃなくて…」
「…っ」
 フィリがピンと来たのか真っ赤な顔になる。慌ててフィリがレイから離れた。
「わ、私、まだ明日のルイーナ決戦の準備があるから先に戻るね!」
「あ、ああ」
 つられて真っ赤になっていたレイが頷いた。

 たったったった…

 フィリが走り去った後、レイが目を伏せた。



 スゥ…


 そしてレイがゆっくりと眼を見開いた。

 その眼には静かな闘志と強い決意が満ちていた。

 必ず────勝つ!!

 ◆

 リーナは死んだ。あんなに、簡単に人は死ぬ。

 リーフの慟哭が、悲哀が、憤怒が。


 憎悪へと変化した。


 殺す。八つ裂きにして、はらわたを引きずり出して顔を踏み砕く。この世でまさ
るモノのないほどの苦しみと、絶望と、死をくれてやる。


 リーフは…いや

 「皇帝」 アイフリード=フロームヘルはその日、リーナの亡骸に誓った。


 そう、今もまだこの世界でのうのうと生きているあの父、 

 『七英雄』 ハウゼン=フロームヘルを殺すと。


 アイフリードはリーナの弟であるシャドウ=プラスタラスとともに旅に出た。ハウ
ゼンを殺すための力を得るために。『ギルド攻城戦』など、アイフリードにとっては
通過点に過ぎない。英雄と呼ばれるモノ、「神雷」レイ=フレジッド、「魔界の貴公
子」ジュニア=サイドライク、を倒す。そして英雄のハイエンドたる『七英雄』に挑
み、そしてこれを殺す。

 全てはハウゼンを殺すための、復讐のための戦い。

 「皇帝」アイフリード=フロームヘルは砦の大回廊へと集合した「皇帝の十字
架」全てのメンバーの前に立った。

 ◆

 闇、深い闇───奈落。

 その闇の中央に黒紅に輝く複雑な魔法陣が展開されている魔法陣の中央にい
る人物──フェイトの口元にニヤリと笑みが浮かんだ。
「全ての因子はルイーナに集まる。運命とは皮肉なモノだな、ハウゼン」
 ハウゼンは静かに目を伏せた。
「全ては必然、つまり運命という現象はこの世には存在せぬ。必然を起こすのは
神魔の所業」
「ならばその女については貴様は神魔にも勝るな」
「そうかもしれませぬ」
 ハウゼンの背後には一人の女ダンサー、いやその上位2次職といわれるジプ
シーが静かに佇んでいた。その女はレイがドレイクと戦う前、アルベルタで出
会った──ミサキ=リフレクトであった。ミサキに視線を向けたフェイトが笑った。
「ミサキ=リフレクト、愛しのリーフに明日会わせてやることができる」
「ありがとうございます」
「ああ、リーフと再会した後は…」

 フェイトの笑みが歪んだ。

「好きなだけ八つ裂きにするといい」

 バッとフェイトは身を翻すと、闇の中へと声をかけた。
「ウェルガ、明日は手はずどおりにやれ」
 ウェルガが静かに頷いたのを見たにフェイトはさらに別の闇へと視線を向け
た。そこには一人の暗殺者がいた。
「では行こうか、ロウガ=ブラスト。『ギルド攻城戦』へ」
「ああ」
 ロウガ=ブラスト。イアルの兄にして、レイ達とともに戦う「雷獣の咆哮」のギ
ルドマスター、ロウガ=ブラストの姿がそこにあった。

 闇が、少しずつ、レイ達に忍び寄っていく。

 ◆

 『ギルド攻城戦』史上最大の戦い、ルイーナ決戦の火蓋がきって落とされようと
していた。後世の歴史学者達はこの戦いのことをこう呼ぶようになる。

 「Ultimate Emperor's Cross」───究極の皇帝の十字架

 全ての戦いの決着は明日つく。

 [続]


〜あとがき〜
予定を繰り上げますた。・゚・(ノ∀`)・゚・。
次回からルイーナ決戦がはじまります。
次回予告、「トレント★樹海団」ギルドマスターであるトレント の策略が
「レジスタンス」「皇帝の十字架」を苦しめる!
そんな中、エリカが対峙したのは「トレント★樹海団」のクルセイダー、
アルヴィンだった!


〜登場人物紹介〜
●リーナ=プラスタラス(ミサキ=リフレクト?)
性別:女
JOB:ジプシー
「皇帝」アイフリード=フロームヘルが過去に愛した女性。
5年前に死亡しており、ミサキ=リフレクトとの関係は不明。

●リゲル=ウルヴァリン [再]
性別:男
JOB:ホワイトスミス
Guild:「Ocean's Blue」
元「絆の旋律」のギルドマスター。
頼れるアニキタイプ。ミスティとは恋人同士。
ブラッドアックスという強力な斧を所有している。

●ミスティ=ホーリー [再]
性別:女
JOB:ハイプリースト
Guild:「Ocean's Blue」
元「光の翼」のギルドマスター。
礼儀正しく天津撫子なタイプ。リゲルとは恋人同士。
支援魔法に関しては世界トップクラス。

●ハウゼン=フロームヘル [再]
性別:男
JOB:プロフェッサー
フェイトと行動をともにするプロフェッサーの男。
ラクールと同じ『七英雄』
「皇帝」アイフリード=フロームヘルの実の父。

●ロウガ=ブラスト [再]
性別:男
JOB:アサシンクロス
Guild:「雷獣の咆哮」
フェイトと行動をともにする暗殺者。
イアルの兄にして「雷獣の咆哮」ギルドマスター。
ロウガが敵であることをレイ達はまだ知らない。



〜Web拍手の返答〜
>トーキー防衛をした主犯のハンターは何か集中で狙われそうだ・・・
トーキー防衛をした主犯のハンターは盾を
背中にぶつけられて背中痛になってます。

>やっべクマTUEEEEEEEEEEEEEEE!!!!!!!
クマさんは最強です!Σd(゚∀゚*)

>アフォじゃないぞヽ(`д´)ノそろそろカッコイイ読み所希望(*ノωノ)
>つーかどんどん私のイメージg
ルイーナ決戦での対戦カード真っ先に決まりました(ぇ

>今回は異様にギャグが笑えました、癌呆とかミタナとか、
>ラブ米も好きですけどこういうネタ米のが好きです。
ギャグって中々思いつかないんですよね(;´Д`)
オールギャグにしようとしたら死にまs

>このラブコメはいつ18禁になるのですか?(・∀・)
    _, ,_  なるかボケー――――――い!!
 ( ゚Д ゚)
  ⊂彡☆))Д´)



前へ  小説目次へ  次へ

トレントの樹海TOPへ

広告 [PR]スキンケア  転職 化粧品 無料 ライブチャット