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Ocean's Blue

050:Betrayal

 ザァ…

 ルイーナ砦に風が吹き付ける。それはこれから始まる嵐の前の静けさを
象徴するように静かに風の音が響き渡る。

 「レジスタンス」の戦力 … 約7100
 「皇帝の十字架」の戦力 … 約12900

 2倍近くの戦力差がある両者は砦の中と外でにらみ合いを続けていた。そ
して、もうひとつの勢力「トレント★樹海団」の姿はそこにはなかった。ただ、
「トレント★樹海団」のギルドマスター、トレントの姿のみそこにあったのだ。

 何を考えている、あの男は?

 トレントは誰もが向ける怪訝な視線をニヤニヤと受け流していた。
「気に入らないな」
 レイの隣にいたリゲルがトレントの態度にそう言葉をこぼした。


 そして────決戦の火蓋は切って落とされた。


 計20000を超える軍勢がぶつかり合う。だが──異変はすぐに起きた。「レ
ジスタンス」と「皇帝の十字架」の双方に、「レジスタンス」の約2/3と、「皇帝
の十字架」の約1/2が突然──

───味方を攻撃し始めた。

「ハハハハハハハハ!!」
 トレントの哄笑がルイーナ砦に響き渡る。
「さぁ、「裏切りの軍団」よ、思うがままに敵を…潰せ!!」

 ◆

「何が起こってるんだ!?」
 レイがライブカメラを通して送られてくる大混乱した状況に切迫した声をあ
げた。何故!?どうしてだ!?その隣でロウガが厳しい表情をしていた。
「トレントめ…!」
 このままではフェイトの計画に支障が出る。ロウガは即座に「トレント★樹
海団」を潰す算段を立て始めた。


 そしてその状況を険しい表情で見ていたのはレイ達だけでなく「皇帝」側も
同じであった。「皇帝」アイフリード=フロームヘルはライブカメラの映像を見
て表情を怒りにゆがめた。
「トレントめ…小ざかしい真似を…」
「我々の約半分がトレントに寝返ったか、この展開は予想外だな」
 『七近衛』筆頭、ライジング=ボーンドがそう呟く。


 強烈なカリスマを持つレイ、そしてアイフリード。それをトレントは寝返らせ
た。その手段は、金、ただその一文字に尽きる。高額の金と「レジスタンス」
「皇帝の十字架」を滅ぼし、砦取得後の無期限砦貸し出し、トレントは裏切っ
たギルドの全てにその条件を提示した。
 上昇欲があり、そして忠誠心に薄いモノ達、処刑部隊として動くうちに身に
付けた人に対する観察眼を使いこなし、トレントはこの大反乱計画に全てを
賭けていた。直前で裏切るとの噂を流したのも、「トレント★樹海団」が動く、
全てのギルドが裏切るとの布石をうつため。そして、それは見事に裏切りの
芽を開花させ、「トレント★樹海団」は一気に最大勢力へと踊り出た。情報を
少しも漏らさず、そして一気に開花させる。通常ならありえないことである。

 「レジスタンス」の戦力 … 約2600
 「皇帝の十字架」の戦力 … 約6300
 「トレント★樹海団」の戦力 … 約11100

「この裏切り者がぁ!!」
「死ね、トレント!!」
 襲い来る敵を見やるトレントは剣に手をのばした、「鎖で封印していた方の
魔剣」に。トレントは一気に鎖を引きちぎった。
「ザコが、相手にならねぇよ」

 ぞん!!

「ぐああ!」
「がはっ!」
 魔剣エクスキューショナーで刺客を斬り倒したトレントは全身に返り血を浴
びた。その様はまさに紅き魔のごとき悪鬼だった。
「だが──数だけじゃどうしようもない連中もいるからな」
 トレントは不敵な表情でそう呟いた。そう、「Ocean's Blue」の面々、「皇帝
の十字架」の最高幹部『七近衛』などはいくら数がいても倒すことは不可能
だろう。そしてトレントは自分の背後にいる複数の気配にこう言い放った。

「だからこそ、お前らがいるんだ」

 トレントの背後には「トレント★樹海団」のギルドメンバー達が集合してい
た。トレントはニヤリと表情を歪めた。

「征け!邪魔する奴は全て叩き!!潰せ!!」

 ゴゥッ!!

 「トレント★樹海団」のギルドメンバー達の姿が風とともに消える。一人残っ
た「トレント★樹海団」ナンバー2、ルアーナがトレントに聞いた。
「トレントはこれからどうするつもり?」
「決まってんだろ…」
 トレントが身を翻し、砦の奥へと歩き始めた。

「俺は…「皇帝」アイフリード=フロームヘルの首を────獲る」

 ◆

「レイ=フレジッド、もはや乱戦だ。我々も砦内に進むほうがいいだろう」
 「雷獣の咆哮」ギルドマスター、ロウガ=ブラストがそう言った。
「ロウガ、要するにさっさとエンペリウムまで到達して割りに行けってこと
か?」
 リゲルがロウガの方に視線を向ける。レイもまた少し疑問を抱いていた。
「短期決戦でケリをつけるのはアリとは思うが、トレントのおかげでうちの戦
力が相当とぼしくなったのは間違いない」
「ああ、だからこそ雑魚にはあまり構わず先へ進め。ルイーナ砦の構造な
らそれができるはずだ」
 ロウガの言葉に皆がピンときた。ルイーナ砦にはある特徴があるのだ。

 ランダムワープ

 そう砦の各部屋をつなぐ部屋はワープポイントでつながっている。だがそ
の部屋の行き来は完全にランダム。一発で「エンペリウムルーム」につける
こともあれば1000回入ってもつかないこともある。ただ「天空台座」と呼ばれ
る部屋からは必ず「エンペリウムルーム」へと飛べるようになっているそうだ
が。つまり敵をかいくぐってランダムワープに早く到達し、そして「皇帝」を撃
破する。これしかないとロウガは言っているのだ。
「仕方ないか。皆、作戦は今の通りだ。皆、必ず勝つぞ!!」
 レイの言葉に皆が奮起した。

 ◆

「どうする?アイフリード」
 ライジング=ボーンドの言葉に「皇帝」アイフリード=フロームヘルが静か
に口を開いた。
「確かに驚かされたのは事実だ。だが──この程度で我々を潰そうとはお
こがましいな」
 「エンペリウムルーム」には「皇帝の十字架」最高幹部である『七近衛』が
全員集合していた。アイフリードは静かに口元を歪めた。

「何故我々が最強たるか──今一度教えてやらなければならないようだ」

 量ではなく質。一騎当千でなく一騎当万の圧倒的戦力。

「征け『七近衛』──真の「皇帝の十字架」の実力をとくと味あわせてやれ」

 ルイーナ決戦開始から──約12分

───「皇帝の十字架」最高幹部、『七近衛』出陣

 ◆

「ハァァァァァ!!」

 ドガン!!

 裂帛の気合いとともにエリカは目の前にいる敵を薙ぎ払った。
「やはり──多い!」
 三つ巴の戦いとなっているが、「レジスタンス」はその中で一番数が少ない
のだ。よって敵が最も多いことになる。あまりの乱戦ぶりに、エリカはレイ達
とばらばらになってしまった。

 だが──目指す場所は一つ…「エンペリウムルーム」である。

「先に──進ませてもらいます!マグナム──ブレイク!!」
 エリカが巻き起こした炎に10人ほど敵が吹き飛ばされる。その刹那、エリ
カは猛烈な殺気を感じた。
「─っ!!」
 とっさに身をかがめると、今までエリカの頭があったところに剣がもの凄い
スピードでかすめていった。
「あなたは!」
 エリカが片手を軸にして体勢を立て直すとそこには見知った顔があった。

 「トレント★樹海団」のクルセイダー、アルヴィン

 黄金蟲とともに戦い、チェンリム砦では刃を交えたあの聖騎士である。
「アルヴィンさんですか…」
「お久しぶりです。うちのマスターの命令ですので、覚悟してもらいますよ?」
「…っ!」
 エリカはレイピアを隙無く構えた。アルヴィンの実力は自分より頭一つ出て
いる。気を抜けば一気にやられるだろう。

 次の瞬間、エリカとアルヴィンの姿が交錯した。

 ガキィィィィン!!

「「ハァァァァ!」」
 2人が渾身の力を込めて技を放った。
「「ホーリークロス!!」」

 ガギィィィィィィ!!

 2つの聖十字が凄まじい轟音をかなでながらぶつかり合う。そし次の行動
を起こしたのはアルヴィンだった。
「シールド───ブーメラン!!」
「──くっ!」

 ゴガン!

 超高速で飛んできたシールドをエリカが自分の盾で受け止める。ギャリ
ギャリギャリギャリともの凄い勢いでエリカの盾がえぐれ、エリカがついに
支えきれずに吹き飛ばされた。壁に叩きつけられたエリカが咳き込む。
「ハァァァァ!!」
 アルヴィンがその隙をぬって駆けて来る。殺った──アルヴィンが剣を
エリカの肩に振り下ろした。

 ガキィン!!

 その攻撃はエリカが展開した見えない壁によって防がれた。
「オートガード!?」
 アルヴィンが驚愕して背後にとんだ──が、エリカがその瞬間に技を発
動させた。
「マグナムブレイク!!」

 ゴゥ!!

 紅蓮の炎がアルヴィンを包み込む。──だが、アルヴィンは剣を振りかざ
し、その剣風でその炎を吹き飛ばした。

 やはり───強い

 エリカが唇を噛んだ。同じ聖騎士で実力は向こうが上、決め手がない。こ
のままではジリ貧になる。
「アリシャがやられたのもあながち──まぐれというわけでもなさそうですね」
 アルヴィンがそう呟きながら間合いを少しずつ狭めてくる。


 だが───その状況は一気に加速した。

「こんにちは──私も混ぜてもらっていい?」

「「な…」」
 その第3者を見た瞬間、エリカとアルヴィンの表情が凍りついた。それはあ
まりにも有名で、そして強すぎる人物だったからである。

 「皇帝の十字架」最高幹部──『七近衛』

  「閃光剣」 リシア=キングバード

「まずあんた達で慣らし運転させてもらうわね」
 リシアがにっこりと笑みを浮かべた。

 ◆

 同じ頃、レイもまた別の人間と対峙していた。

「お前は確か──」
 レイの言葉を遮って、その敵が話し始めた。
「俺は「トレント★樹海団」のアサシン、プレックスター。通称はプレクだな」
 ヴァルキリーレルム砦で一度2人は出会っている。レイがプレクを瞬殺した
が。プレクはニヤリと笑みを浮かべた。
「すでにトレントの計画は動き始めた。もう止める事はできない、例え貴様で
も、そして「皇帝」でもな」
 こいつ。レイはすぐにピンときた。トレントのこの大反乱計画の中枢に近い
場所にこのプレクというアサシンが関与しているということに。
「貴様をトレントに会わすわけにはいかない。レイ=フレジッド、お前はここ
で倒れろ」
「冗談きついな。俺はこんな所で止まるわけにはいかないんだ」

 ザ…

 両者の間で殺気が充満する。

 プレクが静かに懐に手をいれた。
「レイ=フレジッド、今回は俺の本気を見せてやろう。俺の女から与えられた
真の力をな」
「…女だと?」
 プレクは静かに懐から手を抜いた。その指にはダイヤが握られていた。
「コモドに住んでいる俺のハニーさ…、ダイヤを渡すことで俺に愛をくれる」
「いやちょっと待て、それって貢ぐって言わ──」
 レイのツッコミは途中で遮られた。
「見るがいい。カチュアから与えられた俺の真の力を!」

 ぱきぃぃぃん…

 ダイヤがプレクの指の中で砕け散る。その瞬間、プレクの武器に異変が起
こった。禍々しいオーラが宿っているのだ。
「いくぞ!レイ=フレジッド!」
「ちっ!」
 両者の間合いがゼロとなり、凄まじい攻撃の乱打が起こる。レイがいった
ん間合いを取ろうと、後退した瞬間、それは起こった。
「鎌イタチ」
 プレクの言葉とともに文字通りカマイタチがレイの身体に突き刺さった。
「ぐっ…」
 次の瞬間、間合いをつめたプレクがカタールをレイの腹部に押し当てた。
「爆炎」
 大爆発が起こった。

 ◆

「デメ…ェ…ドレン…ド…そのぢがらはいっだい…」
 地に倒れ伏した『七近衛』──ギルティ=スターンが途切れ途切れに怨嗟
の声を吐く。その姿は無残で全身を斬り刻まれ虫の息であった。

「言っただろうが、俺の邪魔をするなってな」

 「トレント★樹海団」のギルドマスター、トレントの眼が冷酷に光った。そうト
レントは「皇帝の十字架」の最高幹部の一人を瞬殺したのだ。
「くくく…俺の『能力』については知ってたんじゃないのか?」
 蔑んだ笑みを浮かべながらトレントがギルティ=スターンを見下ろした。
「ぐ…このグソ野郎がぁぁぁ!」
「くたばれ」
 トレントがギルティの頭を踏みつける。

 ドガン!!

 床が割れ、ギルティの頭部が床にめり込んだ。そして、トレントは周囲を見
回した。そこに設置されてあるライブカメラに向かってトレントが言い放った。

「見てるかアイフリード、次は貴様の番だ。首を洗って待っていろ、くくく…」



 「エンペリウムルーム」でその宣戦布告の様子を見ていた「皇帝」アイフ
リード=フロームヘルの口元に笑みが浮かんだ。
「いいだろう…来るがいいトレント、まずは貴様から血祭りにあげてやる」
 それは誰もが恐れるほどの残虐な笑みだった。

 [続]


〜あとがき〜
第2部の最終決戦が始まりました!
ぶっちゃけ話数未定です(;´Д`)
敵が多い上に乱戦なのでどうなることやら…orz
次回予告!リシアの圧倒的強さの前にエリカとアルヴィンは共闘をする!
さらに戦いは加速し、ジュニアの前に「CollectionBox」のマスターが現れる!



〜Web拍手の返答〜
>ここはカップル一杯のところですね。
>トレントさんの相手はでないんですか?
あほらしいので出しません(;´Д`)
まだ企業秘密ですが、他のキャラはまだまだ色々とありますよーヽ(゚∀゚)ノ


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