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Ocean's Blue

051:Sword Dance

 私は──聖騎士になったことを後悔していた。

 聖騎士になったにもかかわらずあの少女の命を救えなかった自分を侮蔑
していたのだ。聖騎士になって1年が過ぎた頃、私はある依頼を受けた。病
魔に苦しんでいる少女を救うため、薬の原材料となる幻想の花を取ってきて
欲しいと。私はすぐさま準備を整え旅に出た。長い旅になった。

 だが──私が旅を終え、戻ったときにはすでに──もう──

 自分の力の無さを嘆いた。不甲斐なさに絶望した。少女が他界したのは私
が戻った日のたったの2日前だったという。たったの2日、その2日を縮められ
なかったせいで私は救えるはずの命を──助けられなかった。自分に絶望
し、酒場で狂ったように酒を飲んだ。もうどうでもよかった。

 そんな時、あの男が現れたのだ。

「うお!酒臭っ!よしさらに飲め!」
 理論が破綻していた。さすがに腹が立ったので言い返した。
「貴方に従う必要はないと思いますけど?」
「うむないな。じゃあ飲め」
「…」
 ゆらり…と立ち上がってみた。どうせイライラしていたところなのだ。少々荒
事になっても構わない。いやそうしよう。そう私がそう思った瞬間、

「お前、最近記憶に無い夢を見てないか?」

 この男の言葉に私はハッとした。記憶に無い夢──確かに見ている。それ
もまた私をイラだたせてる原因の一つでもあったのだから。
「その顔だと図星みたいだな」
「貴方は…何者ですか」
「俺か?俺の名はトレント、「トレント★樹海団」のギルドマスター」
 これが。
「どうせ腐っててやることないなら俺に手をかせ。その夢の謎とやらを解明す
るのが俺達の目的さ」
 「トレント★樹海団」のクルセイダー、アルヴィンと。
「他にも仲間がいるぜ。酒場の外で待たせてる」
 「全く同じ記憶に無い夢」を見るトレントと「トレント★樹海団」のメンバー達
の初めての出会いであった。

 今までのアルヴィンの剣は何かを護るための剣。

 そしてこの時からアルヴィンの剣は文字通り夢を追い求める剣となった。

 「Ocean's Blue」の一員としてレイとともに戦う決意をしたエリカ。

 「皇帝の十字架」の『七近衛』として「皇帝」のために動くリシア。

 今、3者3様の信念を持つ剣が交錯する。

 ◆

 青く澄んだ輝ける刃、巨大なる閃光剣。

 オーラブレイド

 長さ30メートルはあろうかという巨大なその刀身を展開させているのは「皇
帝の十字架」最高幹部である『七近衛』が一人。

 「閃光剣」 リシア=キングバード

 その強大な力と対峙しているエリカが隣にいるアルヴィンに呟いた。
「共闘…しますか」
 エリカのその言葉にアルヴィンが静かに頷いた。三つ巴で戦って勝てる相
手ではない。リシアはエリカとアルヴィンが力を合わせても勝てるかどうかと
いう相手なのだ。
「来ないんだ?じゃあこっちからいこうかな」
 次の瞬間、リシアの姿がエリカとアルヴィンの視界から消えた。否、超ス
ピードで間合いを詰め、そして巨大な閃光剣を振り上げている。

 ゴガォン!!

 閃光剣を受け止めたエリカの盾とアルヴィンの剣がへし折れた。
「「…っ!!」」
 エリカとアルヴィンは驚愕した。この閃光剣、どちらかというと殴り潰す鈍器
のような攻撃に近い。斬られたのではなく純粋に攻撃で武具が破壊された。
「よく受け止めたけど──次はどうするのかしらね?」
 リシアが再度、閃光剣を振り上げた。

 斬り込む!!

 エリカとアルヴィンは超接近戦に賭けた。相手の間合いは長い。ならばこ
そ懐に勝機が───

「パリイング」

 カキーン!という甲高い音ともにエリカとアルヴィンの身体が吹き飛んだ。
ロードナイトの自動防御の結界に阻まれたのだ。
「無駄、あたしに死角はないの」
 リシアは無情な言葉とともにエリカとアルヴィンを閃光剣で薙ぎ払った。
「くあっ…!」
「あぐ…っ」
 壁に叩きつけられ、あえぐ2人にリシアは容赦無く閃光剣を振り上げた。

 ◆

「くっ…これが例の!」
 プレクが苦い表情を浮かべた。爆炎を受け止めたのはレイのルドラの弓。
絶対防御の盾。この弓の防御を貫ける人間はこの世に存在しない。
「ガイスト!」
 レイの掛け声とともにルドラの弓が鷹のガイストへと戻り、レイの頭上に舞
い上がる。そしてレイの両の手には炎の宝剣「ファイアーブランド」と氷の宝
剣「アイスファルシオン」が握られていた。
「うぉあああああああ!!」
 レイは裂帛の気合いとともにプレクに斬りかかった、がプレクがとっさに跳
び退ったため腕をかすめる程度だった。
「ちっ…!」
 やはりレイ=フレジッドは強い。類まれなる状況判断力とここぞというとき
に踏み出してくるその勢いを持つ戦いの天才と呼ぶにふさわしい。さすがは
あのラクール=フレジッドの血を継いでいるというべきか。

 こいつをトレントと戦わせるわけにはいかない。

「レイ=フレジッド、お前を先に進ませるわけにはいかないな」
「そこをどけ!女に貢ぐダメ男!」
「待て!聞き捨てなら───」

 げめす

 プレクが思わず踏み出した瞬間、レイの蹴りがプレクの顔面に炸裂した。
「ぐは…ぁ…」
 ばたり、とプレクが倒れ伏す。レイは静かに目を伏せた。
「確かにあんたは強かった…だが」
 カッ!とレイが目を見開いた。
「真の愛を知る俺の方が強い!!」
 ツッコミを入れる人間はこの場には誰もいなかった。

 ◆

「まったく…ザコばっかり多いね」
 敵を蹴散らしながらジュニアは先へと進んでいた。しかしルイーナ砦は防
衛に優れている。仲間同士で進もうとしてもワープポイントに阻まれ簡単に
分断されてしまう。個々の実力が生きるということだ。つまり、一騎当千の実
力を持つ『七近衛』を擁する「皇帝の十字架」にとってこれほど護りやすい砦
はないだろう。
「おっと、おしかったね」
 剣を振りかざして襲い掛かってきた騎士を2人薙ぎ倒すと、ジュニアは次の
ワープポイントへと飛び込んだ。そこには一人のアサシンが立っていた。そ
のアサシンのまわりには死屍累々という風に人が薙ぎ倒されており、そのア
サシンの男は凄まじい気を放っていることにジュニアが顔をしかめた。「皇
帝」との戦いの前に強敵とは戦いたくないというのが本音なのだ。
「君は…?」
 ジュニアの言葉にそのアサシンが名乗りを上げた。

「「CollectionBox」のギルドマスター、刃」

 ジュニアの目つきが鋭くなった。「CollectionBox」といえばトレントのこの大
反乱計画の噂が流れる元凶となったギルドであり、「トレント★樹海団」に最
も近いギルドと言える。そのギルドマスター、かなりの手練であろう。
 ゆらり…と刃が歩みを進め、そして静かに口を開いた。

「ミニスカは────いいね」

 ピク

 ジュニアがその言葉に反応した。そう、まるで戦場で本当の友人を見つけ
たかのような、暖かな空気が2人の間に流れたのだ。
「見えるか見えないか──そのラインがたまらない」
「だが見えてはならない──そのもどかしさ」
 ジュニアと刃が互いにフ…と笑いあった。
「君とは…戦場で会いたくなかった」
 ジュニアの言葉に刃が哀しげな表情を浮かべた。
「ああ…」

 次の瞬間、2人の姿が交錯した。

 ぶちぃ!

 交錯した瞬間、ジュニアが刃の右眉毛の毛をもぎとった。
「ぐはぁ!!」
 悶絶して倒れる刃にジュニアがゆっくりと歩み寄った。
「君とは…また違う場所で会いたいな」

 がす

「いずれ会えることを楽しみにしてるよ」

 げし

「僕は──先に進む」

 どがす

 刃が動かなくなるまで情け容赦なく蹴りをいれたジュニアは次のワープポ
イントへととび込んでいった。

 ◆

 リシアが閃光光を振り上げた瞬間、エリカが跳ね起きた。が、間に合わな
い。リシアの閃光剣がエリカの肩口に炸裂────しなかった。

 いや命中はしたのだ。だがダメージがエリカに伝わっていない。

「ディポーション!!」
 アルヴィンがエリカのダメージを自らに移し変えたのだ。アルヴィンの顔が
苦痛に歪む。そして、無防御のリシアに対するエリカの渾身の一撃が発動し
た。

「グランドクロス!」

 巨大なる聖十字が床に浮かび上がる。
「はああああああああ!!」
 己すらそのダメージの対象になってしまうクルセイダーの最強奥義であ
る。エリカは裂帛の気合いとともにその力をリシアに叩き付けた。
「あぐぅぅぅ!!あああああ!!!」
 その聖十字を耐え切ったリシアが閃光剣を再度振り上げた。

 潰す!

 が────

 ゴガン!!

 凄まじい音を立てリシアの頭蓋にアルヴィンのシールドブーメランが炸裂し
た。リシアはその攻撃でたまらず気を失った。リシアの身体が崩れ落ちた。

「ハァ…ハァ…やったみたいですね…」
 エリカが後ろにいるアルヴィンに語りかけた。肩口をおさえながらアルヴィ
ンがゆっくりと座り込んだ。
「みたいですね…」
 そう、2人は『七近衛』を倒したのだ。一発勝負に一発勝負を重ねたような
勝利だが勝ちには違いない。エリカもまたアルヴィンの隣に座り込んだ。も
う2人とも再度戦う気力など残っていないのだ。
「さすが『七近衛』…戦いの天才としか言いようがありません」
 エリカの呟きにアルヴィンがため息をついた。
「戦いの天才なら…私も一人知っていますよ」
「え?」
 アルヴィンはゆっくりと口を開いた。
「トレントです」

 ◆

ルイーナ砦「天空台座」──

「くははははははは!!ハハハハハハ!!」
 トレントの哄笑が「天空台座」に響き渡った。「天空台座」とは「エンペリウム
ルーム」に必ず行けるワープポイントが存在する最後の部屋である。いや部
屋というよりはその形状から巨大な台座と呼ぶにふさわしい。
「ほらかかってこいよ、オラ」
 「皇帝」アイフリード=フロームヘルがいる「エンペリウムルーム」へと必ず
行けるワープポイントがあるのだ。当然、「天空台座」には戦力を集中させて
おくべきである。そしてここには2人の『七近衛』が配置されていた。

 「魔人拳」 キスク=リベレーション

 「葬送曲」 ファルス=エタニティ

 この手練2人が圧倒的にトレントに押されていた。『七近衛』がである。
「くそったれが…本性現しやがったってわけか」
 満身創痍のキスクが苦い声で呟いた。
「それと…気になるのはあの眼──何て紅い眼だ」
 ファルスの言葉にキスクがトレントの眼を見た。

 紅い。真なる紅き瞳。

「何だありゃあ…」
 キスクがトレントの異変にそう呟きをもらした。
「お前らが知る必要がないことさ」
「へっ!そうかよ!」

 ブゥン!

 キスクの姿がかき消えた。残影という瞬間移動のスキルだ。トレントの背
後にまわったキスクは強大な力を解放した。
「阿修羅───」
「遅ぇ」
 キスクの頭を掴んだトレントはそのまま「天空台座」の床に叩き付け、そし
てトレントは足を振り上げ──キスクを踏みつけた。

 ガゴゥン!!

「が…っ…はっ…ごぶ──」
 血を吐いてキスクが気を失った。その様子を見て凍り付いていたファルス
が恐る恐る口を開いた。
「貴方は…何者なのですか」
 キスク、そしてギルティをも軽々と倒した。この上位二次職でもない騎士の
この男が。キスクにいたっては「皇帝の十字架」のナンバー3とも言われる実
力者なのだ。ファルスには信じられなかった。


「俺は──いや俺達は──「真紅の旅人」」


「何──?」
 この男は──何を言っている!?ファルスには理解できなかった。

 ボウリングバッシュ───剣圧衝撃波

 強大な衝撃波がファルスの身体を貫き、ファルスの身体は「天空台座」か
ら墜ちていった。どさりという落下音とともに辺りが静かになる。
「フン…」
 トレントが片膝をついた。さすがに『七近衛』3人を倒してきたのだ。疲労、
ダメージもバカにならない。だが──この次が本番なのだ。

 「皇帝」 アイフリード=フロームヘル

 短期決戦で一気に決着をつける。奴に勝てなければ終わりなのだから。
「仕上げに───かかるか」
 トレントが立ち上がった。

 その時だった───「天空台座」に新たな人物が現れたのは。

 [続]


〜あとがき〜
遅れまくってすいません(;´Д`)人
リアルとROの板ばさみになってます最悪だorz
次回予告、『七近衛』シャドウ=プラスタラス戦!
そしてレイとジュニアはそれぞれの宿敵へと対峙する。
必然の対決、運命の決戦が今はじまる!!



〜Web拍手の返答〜
>ギルティさん折角怪我直ったのに、出番終了はやいですね
キャラが多すぎてサクサクすすめないと話がだらだらのびるんですorz

>その魔剣クダサイ(*・ω・)出番マダカナマダカナ(*/ω\*)
つ[出番]

>ああ、R18ではなくてPG12になるんですか(・∀・)
>ザンギャクシーンモリダクサン
否定できない俺ガイル(;´Д`)


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