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Ocean's Blue

052:Ultimate Destiny

 ルイーナ砦での戦いは続いていた。

 そんな中、「トレント★樹海団」のナンバー3、フィン=ロルナークはある強
敵と対峙していた。

 「月夜姫」 ルナ=イムソニアック

 「皇帝の十字架」の最高幹部である彼女は音も立てずゆっくりと移動して
いた。フィンはルナの隙をさぐっていた。そう、フィンの持つ「全てを斬り裂く
能力」で一気にケリをつけるのだ。
「「…」」
 無言の対峙、油断すれば一気にもっていかれるような緊張。そして──

 ルナの足が床に落ちていた小石に当たった。

 次の瞬間───フィンの神速の斬撃が──

「ストーンカース!!」

 フィンは石化した。フィンの出番は終了した。

 ◆

「くそっ!数が多すぎる!」
 敵の合間を駆け抜けながらイアルが言葉を吐き捨てた。すでに味方の半
数以上は削られ、「レジスタンス」の勢力は大苦戦を強いられていたのだ。
数の面から順当にいけば最初に「レジスタンス」が潰されるだろう。

 ザ…

 混戦の中、イアルが背後を振り返った。そこには「トレント★樹海団」と思わ
れるハンターの男が立っていた。
「お前は?」
「「トレント★樹海団」のハンター、クリス」
「退いてくれるわけないよな」
「轢いてはあげるけどね」
「ちっ!」
 次の瞬間、クリスが雨あられと矢を放った。その全てに毒が塗られている
毒矢だった。
「くそっ!」
 イアルはハイディングでそれを避けた後、一気にクリスとの間合いを詰め
た──が、足元の異変に気がついた。

 フリージングトラップ

「しまっ…!」
 イアルの足元が凍りついた。だめだ、動けない。次の瞬間、クリスが弓を引
き絞り、静かに口を開いた。
「残念だけど君の負けだ。さようなら」
「く───そおおおっ!」

 だが次の瞬間、クリスの身体が横に吹き飛んだ。

 クリスの身体は壁に叩きつけられ、そのままクリスは気を失った。

 一撃。

 たった一撃で──クリスは倒された。

 足元の凍結から解放されたイアルが震える声を絞り出した。
「お…まぇは…」
 乱入してきた第3者は──ハイプリースト。

 「皇帝の十字架」のナンバー2、「皇帝」に匹敵する実力者。


 『七近衛』筆頭──「陰陽玉」 ライジング=ボーンド


 だめだ。やられる。こいつは──強すぎる。イアルは敗北を覚悟した。そ
れだけの威圧感と強者のみがまとうオーラをライジング=ボーンドは持って
いたのだ。ライジング=ボーンドはイアルの前に立ち、口元を歪めた。

「どけ」

 何も言い返せず、何も出来ず、イアルは──道を譲った。イアルは──戦
う前から──敗北してしまったのだ。ライジング=ボーンドはイアルの隣をす
れ違いざまに笑った。
「「Ocean's Blue」、そして「トレント★樹海団」恐るるに足りないな」
 何も──言い返せなかった。

 ライジング=ボーンドの気配がイアルの付近から消えた後、イアルが静か
に震え出した。悔しさと恐怖──自分の不甲斐なさから。
「ちく──しょおおおおおおおおおおおおおおおおっ!!」
 イアルは拳でルイーナ砦の床を叩き付けた。

 ◆

 ルイーナ砦の最東端にある尖塔の下では「レジスタンス」勢力の「雷獣の
咆哮」と「トレント★樹海団」についた「CollectionBox」が激しい戦闘を繰り広
げていた。その中でも最も際立つ戦いを繰り広げていたのは──

 「雷獣の咆哮」のローグ、ケイル
 「雷獣の咆哮」のウィザード、ジャンク

 対するは

 「CollectionBox」のナイト、タル
 「CollectionBox」のナイト、クルーゼ

 ケイルとジャンクが仕掛ければ、タルとクルーゼの絶妙なコンビネーション
によって致命打をもらいそうになる。タルとクルーゼが仕掛ければ、ジャンク
が魔法の弾幕をはり、その隙にケイルが襲い掛かってくる。

 互角。

 だがその均衡が突然崩れるときがきた。
「ぐぅっ…!!」
「クルーゼ!?」
 クルーゼが突然腕を押さえて後退したのだ。タルがクルーゼの腕を見る
と、そこには一本の矢が刺さっていた。
「な──これは…!?」
 タルが疑問を口にした。タルの疑問ももっともである。なぜなら近くに弓手
などいないのだから。

 どんっ!

「が…っ!!」
 次は「雷獣の咆哮」のケイルの肩に矢が突き刺さっていた。どこに射手が
いる?見えない射手が──両軍に混乱をもたらしはじめた。
「ケイルとクルーゼの腕に刺さった矢の角度から推測すると──」
 ジャンクが信じられないといった表情を浮かべた。
「最西端の尖塔の頂上に…射手がいる!」
「嘘だろ!?」
 ケイルが驚きを口にした。ここはルイーナ砦の最東端である。この巨大な
砦の端から端まで矢をとどかせる者など───
「一人だけいたね──そういえば」
 タルが苦々しい表情で呟いた。

 「皇帝の十字架」最高幹部──『七近衛』

 「長射撃」 シャドウ=プラスタラス

 「皇帝」アイフリード=フロームヘルの昔の恋人、リーナ=プラスタラスの
弟にして、上位2次職のスナイパーの少年。その弓の腕は弓が扱えた時の
「神雷」レイ=フレジッドにもひけをとらないであろう。

「へへ、僕のシャープシューティングからは逃げられないよ」

 最西端の尖塔の頂上でシャドウが不敵な笑みで弓に矢をつがえた。
「皆手近なワープポイントに避難して!あの尖塔から見える範囲全てがシャ
ドウの攻撃範囲だから気をつけて!」
 タルの指示によって「CollectionBox」のメンバー達が一斉にワープポイント
へと走っていった。これもシャドウの狙いだろう。ワープポイントに入ることは
そのまま分断されることに他ならない。そうやってじわりじわりとこちらの戦
力が削られている。

 ここは「皇帝の十字架」の砦なのだから。

「うまいな」
 壁に隠れたタルの隣で脂汗をにじませながらクルーゼが苦々しい表情を
浮かべた。
「攻撃は常時、砦の反対側から行う。捕まりそうになったらシャドウはワープ
ポイントへと逃げるだろう」
「それってシャドウを倒すのは不可能に近くない?」
「不可能だな。砦のランダムワープをうまく利用した戦術だ。それに──」
「それに?」
 クルーゼの目蓋が閉じそうになっている。
「矢に恐ろしく強力な睡眠薬がぬってあるようだ…」
「寝るだけならいいじゃない」
「いいわけあるものか、ルーンミッドガッツ王国のギルド攻撃城の規約の大
前提は「不殺」、そして気絶したものに追撃しないということだ。戦場で眠る
ことは個人の勝手であり、追撃は可能だ」
「それって──」
 はっきり言って最悪である。眠らせられた後に思いっきり襲われるというこ
とだ。クルーゼは途切れ途切れの声でタルに希望をたくした。
「タ…ル……このまま…では…皆が…や…られる…頼…む……シャド…ウ
を止…め…」
 クルーゼの手がぱたり…と地面に落ちた。クルーゼは寝た。
「クルーゼ!クルーゼー!!」
 タルは哀しみにくれた後、きっと西の尖塔を睨み付けた。
「何とか──あそこにたどり着かないと…!」
 だが不意に言葉が割り込んだ。
「シャドウを止める前に…貴女を倒させていただきます」

 「雷獣の咆哮」幹部──ウィザード、ジャンク

「くっ…!あなた状況わかってるんですか!?」
 タルの非難にジャンクが静かに口を開いた。
「ええ、わかってますとも。先日のギルド会議で決まったのは「トレント★樹
海団」とそれに組する者は一族郎党皆殺しという案でしたから」
「…」

 巻き添えかいっ!

 タルが心の中で絶叫した。と、次の瞬間、

 ざくざくっ!

 ジャンクの足とタルの腕にシャドウの矢が突き刺さった。この2発を最後に
この区画で起きている者は誰もいなくなった。

 ◆

 ルイーナ砦──「西の尖塔頂上」

「へへっ、これでいっちょあがりっと」
 シャドウがニヤリと口元に笑みを浮かべた。次の獲物はどいつにしようか。
だがシャドウは気付いていなかった。ライブカメラと人を避けるようにしてここ
にある人物がやってきていたことを。

「シャドウ──オイタはだめですよ?」

「───え…?」
 シャドウがその声に振り返ると、そこにはいるはずのない人物が──そこ
にいた。そう死んだ人間が。
「姉…ちゃん…?」

 リーナ=プラスタラス

 死んだはずの姉が何故。いや、その亡骸はアイフリードが火葬し、そして
その遺灰はエルメスプレートに還されたはずだ。
「久しぶりね、シャドウ。元気にしてた?」
 かわらない笑顔。シャドウは激しく動揺した。
「あ…う…ああ…」
 大好きな姉。アイフリードと3人でいれればそれでいいと思っていた姉。ア
イフリードと幸せな時を過ごしていた姉。シャドウが泣いているときそっと抱
きしめてくれた姉。優しく、そして温かかった姉。

 そして──この世にいるはずのない姉。

「ねぇ、シャドウ?」
 リーナは、いやフェイトに仕える「死者の巫女」ミサキ=リフレクトはにっこ
りとシャドウ=プラスタラスへと微笑みかけた。
「死んで?」
 次の瞬間、シャドウの全身から血が噴き出した。

 ◆

 突然、人気が少なくなった。

 まるで、運命に導かれるかのように。

 レイ=フレジッドとジュニア=サイドライクはそこに立っていた。

「ジュニア」
 先に到着していたのはジュニア。レイはジュニアの後姿に気付き、声を
かけた。このランダムワープの中でよくまた再会できたものだ。
「レイ、これを見て欲しいな」
 ジュニアが指す先には一つのワープポイントがあった。これまで何度も
通ってきたワープポイントと同じ形状。これも当然ランダムワープ。

 だが──これこそが2人には運命の扉にしか思えなかった。

「これさ」
「着いちまうな」
 ジュニアの言葉にレイが言葉を続けた。
「いざこういうモノを前にすると──躊躇しちゃうな。覚悟してきたのに」
「俺もだよ」

 この先にあるのは──決戦の場。

 ガン!!

 2人は拳と拳を強く付き合わせた。レイは左手、ジュニアは右手。
「負けるなよ、ジュニア。俺達は勝ちにきたんだからな」
 レイのその言葉にジュニアがニヤリと笑みを返した。
「その言葉そっくりお返しするよ」
 2人は決戦への一歩を歩み出した。

 そのワープポイントに入り視界が一瞬だけ暗転した。



 そこは血溜まりの中と表すと最もあてはまる場所だった。

 そこは静かに水が足元に流れる荘厳な場所だった。



 その場の名は「天空台座」と呼ばれている。

 その場の名は「エンペリウムルーム」と呼ばれている。



 ここで虐殺がおこなわれたかと思われるほどの凄まじい血溜まりの中に
『七近衛』キスク=リベレーションが意識を失って倒れていた。

 世界最大のエンペリウム…おそろしく巨大な「ロードオブエンペリウム」が
その荘厳な部屋の最奥へと鎮座していた。



 キスクの傍らには一人の男が立っていた。

 「ロードオブエンペリウム」の前に一人の男が立っていた。



 レイが降り立った「天空台座」。

 ジュニアが降り立った「エンペリウムルーム」。



 そこには、

 そこには、



 宿敵



 「トレント★樹海団」の長にして「裏切りの軍団」を率いる王、

 「皇帝の十字架」の長にして世界最強の魔術師と詠われている、



 「裏切りの王」 トレント

 「皇帝」 アイフリード=フロームヘル



 今宵、決戦の刻──────。

 ◆

 キスク=リベレーションを打ち負かし、ファルス=エタニティを「天空台座」
の下へ叩き落したトレントは新たな人物の登場──しかもそれがレイ=フレ
ジッドであることに残虐なまでの歓喜に震えていた。
「ハハハッハハ!来ると思っていたぜ…レイ=フレジッド!!」
 魔剣エクスキューショナーを天高く掲げたトレントがレイへ視線を向けた。
「決着つけようぜ!俺達の因縁によ!!互いの夢を喰い潰さなければ俺達
は前へと進めねえ!この因果の交差路で俺はお前を喰い殺す!」
 紅蓮の宝剣「ファイアーブランド」、輝氷の宝剣「アイスファルシオン」をゆっ
くりと構えたレイが口を開いた。
「トレント」
 レイの眼は未だかつてないほどの闘志に燃えていた。
「決着をつけよう。俺はお前の夢を喰い潰して前へと進ませてもらう!」

 ◆

 「ロードオブエンペリム」の前からゆっくりと歩み寄りながら「皇帝」アイフ
リード=フロームヘルが口を開いた。
「来たな──「魔界の貴公子」バフォメットジュニア=サイドライク」
 ジュニアが静かに口を開いた。
「その名は捨てたよ、君に敗北したときにね」

 そして───今日この刻。

「アイフリード、君を倒し僕はその名を取り戻す」
「ジュニア、貴様を倒し俺はさらなる高みへと進む」
 その言葉が引き金。

 決戦が─────────始まった。

 [続]


〜あとがき〜
あとがき書くことないよ(゚Д゚)
次回予告!
「皇帝の十字架」ナンバー2、ライジング=ボーンド進撃開始。
圧倒的力で狩りを行うライジング=ボーンドが発した言葉に
樹海団は戦慄する。この男は──何かを知っている。



〜Web拍手の返答〜
>クルセにディボーション使えなかった気が
>しますがきのs(ウワーナニヲスル
ゴノレゴ、次の標的は奴だ

>ぶちぃ!って!ぶちぃ!って!(jrGJ)
眉毛抜かれたら悶絶しますよ(;´ー`)?

>ファルスって何か印象うすい気が・・・
キャラが多すぎて退場させるのに苦労してますorz

>(´・ω;;;;;;;;;;;;;;;;
刃さん大活躍でしたね★


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