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Ocean's Blue

053:Holy Shine

「報告します!「ディープミスト」、「闘刃牙」全滅!「キャラメルバスターズ」
一次撤退!「Ocean's Blue」ギルドマスター、レイ=フレジッドが「トレント★
樹海団」ギルドマスター、トレントと交戦開始!」
 次々と「レジスタンス」本陣へともたらされる情報によって「雷獣の咆哮」ギ
ルドマスターにしてフェイトの配下の一人、ロウガ=ブラストはある事に気が
ついた。
「「トレント★樹海団」の勢力が弱まっている…?」
 理由は簡単、「皇帝の十字架」の底力が押しているということだろう。そして
ロウガは気付いていた。あの男が動き出したことを。
「直々に動くとはな…、俺が出るまでもないということか」
 ロウガ=ブラストは静観を決め込むことにした。

 「トレント★樹海団」の全滅は──近い。

 ◆

 ドゥン!!

「が…ほ…」
 「トレント★樹海団」の中で最硬を誇るすけぽが──背後からの一撃で突
如倒された。その様子を見た他のメンバー、ハンターのアリシャとプリースト
エレンはすけぽを倒したその男に警戒の視線を向けた。

 「皇帝の十字架」ナンバー2のハイプリースト

 『七近衛』最強の──「陰陽玉」 ライジング=ボーンド

「これで──4人」
 その言葉にアリシャとエレンが戦慄した。プレク、フィンが倒れ、アルヴィン
が戦闘不能になっているという報告は受けている。だがそれとは別に倒され
たということか。誰にも気付かれない内に───。
「「トレント★樹海団」のクリス、バステト、奈留、そしてすけぽ。全て私が始末
した。そして次はお前達だ」
 次の瞬間、アリシャがありったけの罠を撒き散らし、高速で弓を連射した。
エレンも同様にかけれるだけの支援魔法を───
「飛竜」

 ドン

 アリシャとエレン、2人の姿が崩れ落ちた。アリシャとエレンは突如襲いか
かってきた衝撃波に耐えられず昏倒した。
「これで───6人。そして──そろそろ貴様が来ると思っていた」
 そう、ライジング=ボーンドの背後には一人の女がいたのだ。その背中に
ナイフを押し付け──その女は言った。
「今のは何?あんな能力見たことないんだけど」
 ライジング=ボーンドは先ほどアリシャとエレンに向け間合い外で蹴りを
放ったのだ。蹴りは当然あたらなかったが──衝撃波が発生した。このよ
うな技はミッドガルド大陸中を探したとしても使い手はこの男しかいないだ
ろう。ライジング=ボーンドは静かに口を開いた。
「そう急くな、「トレント★樹海団」ナンバー2、ルアーナ」

 ぴし

「!!」
 ルアーナは跳び退った。名を呼ばれたからではない。ライジング=ボーン
ドに押し当てていたナイフに突如亀裂が入ったからだ。
「さて──まずは事実の認識違いを訂正しておくとしよう」
「それはどういう…」
 ルアーナが次の武器を──グラディウスを逆手に持ち聞き返した。
「何も『能力』が使えるのはお前達だけではないということだ」
「な…!」
「トレントの剣圧衝撃波、貴様の気配消失、フィン=ロルナークの風斬撃、そ
れにまだ開花してはいないが『能力』が扱える前段階にまで実力が上昇して
いるものもいるな」
「…っ」
 ルアーナが驚愕に目を見開いた。この男は一体──。
「だがそれではだめだ。「真紅の旅人」よ、それでは──いずれ襲来する『無
限王』によって蹂躙されつくされるだろう」
「あなたは一体──何者なの…っ!」
 この男は私達が知らないことを知っている。それが恐ろしかった。
「あなたは何を知っているというの!」
「少なくとも──お前達の願いが「絶対」叶わないことぐらいはわかる。そし
て『無限王』は強い、実際に対峙すればイヤというほどに思い知らされるだ
ろう。まるで体中の血液が凍りついたかのような恐怖を覚える」

 ドン

「双竜」
 一瞬で間合いをつめたライジング=ボーンドがルアーナの腹部に手を押し
当てていた。あまりにも自然で、あまりにも迅い攻撃。
「か…は…」
 ルアーナの身体がゆっくりと崩れ落ちた。

 どさり…

 倒れ伏したルアーナを見つめながらライジング=ボーンドが口を開いた。
「戦局は──決したな」
 「トレント★樹海団」の幹部はこれで全て倒れた。残るはギルドマスターの
トレントのみだ。現在レイ=フレジッドと交戦しているというのなら、勝った方
を潰せばいいだけのこと。
 ジュニアとアイフリードの戦いはアイフリードの勝利に終わるだろう。ヴァル
キリーレルムでジュニアとは刃を交えたが、まだ──「皇帝」には及ばない。
 不確定要素である「トレント★樹海団」が消えれば、残るは圧倒的戦力差
における「レジスタンス」狩りの始まりである。

 ザ…

「…?」
 ライジング=ボーンドは突如背後に出現した気配に振り向いた。

 脆弱な──取るに足らない気配の方向に。
「貴様は…」
 ライジング=ボーンドが振り返った方向には──。

「…」
 イアルが───いた。

 ◆

「エンチャントポイズン!」
 「雷獣の咆哮」のギルドメンバーであるアサシン、ナカラナが同じくギルド
メンバーであるローグの青藍の武器と己の武器に毒を付与する。
「フィリさん!先に行ってください!」
 青藍が叫ぶ。「皇帝」勢力が圧倒的戦力で盛り返し始めてきた。そしてプ
リーストであるフィリがいなければ連戦が続いている「レジスタンス」主力の
レイ達のダメージが致命的なモノになるのは間違いないだろう。

 フィリ=グロリアスを先に進ませる。

 ナカラナと青藍はそう判断し、敵の足止めへと駆け出した。フィリは先へ
進むと思われるワープポイントへと飛び込んだ。

 視界が暗転した。

 そしてフィリの前には──見知った顔が立っていた。
「ルナ…」

 「皇帝の十字架」最高幹部『七近衛』のプロフェッサー

 「月夜姫」 ルナ=イムソニアック

「フィリ〜来ちゃったんだ〜」
 フィリが即座に身構える。こちらは防御専門のプリースト、むこうは攻守に
優れたプロフェッサー。勝敗は火を見るより明らかだ。
「ルナ…何も言わずに…通してくれない?」
「だめ〜」
 一応聞いたがやっぱり無理だ。ルナは、彼女はフィリの親友であるとともに
「皇帝の十字架」の幹部でもあるのだから。

「バイオレントゲイル」

 ゴゥッ!

 ルナの言葉とともに風の力を帯びた力場が発生した。「トレント★樹海団」
のフィン=ロルナークがあつかうような鋭い風ではなく、暖かく柔らかい風。
「サンダーストーム!」

 ドゥゥン!!

 ルナの放った魔法の稲妻が力場によって強化され、フィリの真正面に突き
刺さった。

 ぱち…ぱち…

 フィリが尻餅をついた。フィリの目の前には大穴。ルナのサンダーストーム
によってできたクレーターが広がっていた。
「フィリ〜降参して〜、私フィリを〜」
 ルナの眼が鋭い殺気を帯びた。
「傷つけたくない」
「…っ!」
 ルナは──本気だ。フィリが視線をめぐらすとルナのまわりには様々な人
間が打ち倒されているのがわかる。その中には石化したフィン=ロルナーク
の姿もあった。
「アイフリード様の邪魔はさせないよ〜」
 そこでフィリが気がついた。そうか、ルナの好きな人というのは───。ル
ナが必死なのはアイフリードのため。ルナはアイフリードの事が好きなんだ。

 私が必死なのはレイのため。

 ルナも私も戦う理由は──同じ。

「ルナ、ごめん。私、降参できない」
「…」
 ルナが眼を伏せた。そして…
「わからずや」

 ドン!ドン!ドン!ドン!ドン!ドン!ドン!

 サンダーストームの連打が次々とフィリに襲い掛かった。フィリは必死に逃
げ回る。一撃でももらったそれは致命傷となるだろう。

 ドゥン!

「きゃあっ!」
 一際大きなサンダーストームがフィリの足元に命中した。フィリの身体は
その衝撃で簡単に吹き飛ばされた。フィリはとびそうになる意識を必死につ
なぎとめていた。
「う…」
 ルナが容赦無く手をかかげる。

「ソウルバーン」

 凄まじい衝撃がフィリを襲った。フィリの魔力を全て奪い、ルナはその魔力
をフィリに叩きつけたのだ。魔力を全て奪われ、フィリがよろめいた。回復魔
法も支援魔法も何もできない状態に追い込まれてしまった。

 強すぎる。

 ルナは…本当に強い。

 もう────無理だ。



 本気を出そう。



 ゆっくりと…静水のごとくフィリは立ち上がり、フィリは右手を掲げた。
「…ルナごめん」
「…?」
「本気出すね」
「…え?」
 次の瞬間────────。

 ゴガアアアアアアアアアアアアアアアアア!!

 凄まじい魔力の奔流がフィリの右手に収束しはじめた。
「え!?」
 ルナが驚愕の表情を顔にはりつかせた。ありえない!この魔力の量は?
大きさは?そしてこんな魔法──見たことない。

 ばちばちばちばちばちばちばちばちばちばち!!

「フィリ…その力…」
「奥の手なんて殊勝なモノじゃないよ。どっちかというと禁じ手…っ!」
 フィリが苦痛に顔を歪めた。凄まじいエネルギーが暴走寸前で猛り狂って
いる。そしてルナがこの力が聖なるモノであることに気付いた。
「ホーリー…ライト…?」
 聖職者が使える聖なる光、ホーリーライト。だがこれほどの規模のホー
リーライトなど聞いたことも無い。いやこれは光などではなく輝きそのもの。

 ホーリーシャインとでも言えばよいのだろうか。

「あああああああああああああああっ!!」
 フィリが裂帛の気合いで魔力を制御している。魔力をソウルバーンで奪っ
たはずなのに何故魔法が使える?この力の源は?
「スペルブレイカー!ソウルバーン!」
 ホーリーシャインを打ち消そうとしても、ホーリーシャインの魔力を奪おうと
しても無駄だった。全て弾き返される。こんな絶対的な魔力障壁をルナは何
度か見たことがあった。
「フィリ…貴女も…アイフリード様と同じく十字架を背負っているの…?」
 フィリの背中には十字架が浮かび上がっていた。「ユミルの十字架」が。
フィリは昔、この力を気付かず暴走させたことがあった。あまりにも強力す
ぎる魔力、フィリは出来るだけこの力に頼りたくはなかった。

 だが。

「ルナ…!私は誰かを想う気持ちで誰にも負けたくないの!」
「くぅっ…!!」
 ルナが防御魔法たるエナジーコートを全力で展開した。そしてフィリのホー
リーシャインが発動した。

 カッ…!

 光が、轟音とともに、眩いた。ルイーナ砦が震動する。

「やった…かな…」
 ルナが壁を背に気絶しているのを見たフィリが崩れ落ちた。
「レイ…頑張ってね…」
 フィリはそのまま深い眠りに落ちていった。

 ◆

「何の用だ?せっかく見逃してやったのだ。大人しく帰れ」
 ライジング=ボーンドの容赦の無い言葉。イアルはそれを甘んじて聞き入
れ───なかった。
「俺は──」
 イアルは2本のダガーを逆手に持ち、静かに身構えた。

「もう逃げない」

 その言葉を聞いたライジング=ボーンドの眼に本気の色が灯った。
「そうか、ならお前も打ち倒してやろう」
「うぉぅあああああああああっ!」
 イアルが咆哮をあげながらライジング=ボーンドへと駆け出した。

 ◆

 「絆の旋律」「光の翼」の元ギルドマスターであり、現在は「Ocean's Blue」
の一員であるホワイトスミスのリゲル=ウルヴァリンとハイプリーストのミス
ティ=ホーリーは「天空台座」の側にある人物が倒れているのを発見した。

 『七近衛』 ファルス=エタニティ

「おい、ミスティ。あれ…」
「ファルスですね、「天空台座」からトレントに叩き落とされたそうですが」
 ミスティの言葉にリゲルが表情を引き締めた。
「そのトレントって奴…マジで厄介だな。ファルスをあっさりと倒すとはな」
 2人はファルスの横を通り過ぎ、ワープポイントへと飛び込もうとした。

 ドン

「うあああああああああああああっ!」
 音がした次の瞬間、ミスティが絶叫を上げて倒れた。ミスティの肩に刀が
突き刺さっている。妖気を帯びた妖刀が。そしてミスティの叫び方がも尋常
ではなかった。この世界のありとあらゆる苦痛を受けたかのような痛撃だっ
たのだ。
「ミスティ!くっ!?」
 リゲルがブラッドアックスを構えて振り返った。そこにはファルスが立ち上
がっていた。
「ファルスてめぇ…!」
「ファルスじゃないさ」
 ファルスが口元を歪めて笑った。
「戻れ『村正』」
 ミスティの肩から村正が抜け、ファルスの手に収まった。同時にミスティの
体が崩れ落ちる。ファルスは虚空を見上げて呟いた。
「ハウゼン、こいつらは邪魔だ。始末しておけ」
「てめぇ一体何者なんだ…っ!」
 リゲルの背後に突如として、ハウゼン=フロームヘルが出現する。
「運が悪かったと思って諦めることだ」
 ハウゼンの死刑宣告。次の瞬間、ハウゼンの召喚した魔王、氷狼ハティー
の巨大な口蓋がリゲルの視界に広がっていた。

 そう、フェイトがついに行動を開始したのだ。

 ファルス=エタニティがフェイトだった。

 [続]


〜あとがき〜
第2部あと8話予定です。(あくまで予定)
次回予告!絶対的な力を誇るライジング=ボーンド。
苦戦するイアルの元にアルケミストとなったティアが駆けつける!


〜登場人物紹介〜
●ファルス=エタニティ [再]
彼もまた「皇帝の十字架」最高幹部『七近衛』の一人。
が、その正体はレイの真の敵であるフェイト。
妖刀村正を操る。真の実力は不明。


〜Web拍手の返答〜
小説関係のweb拍手ありませんでしたorz


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