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Ocean's Blue

054:Courage & Pride

「お前は俺とともに暗殺者の最高峰たるブラストの家系と誇りを継ぐ」
「まさか同じ時代に2人の神童が生まれようとは!」
「だがやはり兄には劣るようだ。やはり長兄こそが最強ということか」
「アサシンにならないだと?お前はブラスト家の誇りを忘れたか!?」
「お前がどういう道を歩もうと俺は応援するつもりだ」
「出て行け。アサシンギルドに貴様の居場所などはない」
「「雷獣の咆哮」ってギルドを作ったんだがしばらくいたらどうだ?」
「俺はレイ=フレジッド、お前の名は?」
「あ〜ん、レイ誰だコイツ」
「親父、こいつはイアルってちゃんと名前があるって」
「お前、目が腑抜けてないか?」
「あはは、昔からサバイバルには慣れてるから」
「君たちは何のために冒険者になった?」
「フン…こうやって自分の事にすら本気になれない奴がな…」
「人を助けるなんてほざくんじゃねえ!!」
「本気で何かをやるのがバカらしいと思ってる。だが愚痴はウダウダ言う。や
られたら仕方ない。群れないと何もできない。そして自分だけ安全な所で見
ている。お前…なめてんのか!!」

 心のどこかで──わかっていた。

 自分に何が足りないかを────。

 ふと気付くとイアルは天空に浮かぶ宮殿の上に立っていた。
「うおっ!?俺は確かライジング=ボーンドと戦おうと…」
 まさか──天国ですか!?イアルが真剣に悩み出したときイアルの前に
光が現れた。その光の中から現れたのはアース神族の最高神たるオーディ
ンにつかえし戦乙女の残留思念。

 ヴァルキリー

「ようこそいらっしゃいましたバルハルラへ。新たなエインフェリアの戦士よ」
「お前は…?」
「俺は一体…何でこんな所にいるんだ?」
「貴方は転生する資格があるとみなされました。転生しますか?」
「質問答えろよ、話聞けよ」
 イアルが真顔でつっこむとヴァルキリーがよよよと泣き崩れた。
「中間管理職なもので…」
「…何なんだ」

「あなたに足りないものが何か───自覚できましたか?」

「!?」
 イアルがばっとヴァルキリーの眼をのぞきこんだ。全てを見透かすようなそ
の瞳を見た後、静かにイアルが口を開いた。
「ああ、わかってしまえば簡単なことだった」
 俺に足りないのは、一歩踏み出す勇気。ただ──それだけのこと。
「エインフェリアの戦士達もまた、悩み苦しみ、そして前へと進んでいきます」
 ヴァルキリーが静かに語り出した。
「あの「皇帝」アイフリード=フロームヘルですら、悩み苦しみそして前へと進
もうと尽力しているのですよ」
「あの完璧超人もなのか…」
「完璧超人などいませんよ。いるのは──震え折れそうになる心を必死でつな
ぎとめ、心を、信念を強く持つ人々です」
 ヴァルキリーが手を天に掲げた。
「導いてください、人々を。護ってあげてください、人々を。新たなるエインフェ
リアの戦士───チェイサー、イアル=ブラスト」

 光が弾けた。

 ◆

「うおおおおうぁあああああああああああああああああっ!!!」
「ぬぅうううううううう!!」
 ドドドドドドドドドドド!!!という凄まじい音を立てながらイアルのダガーと
ライジング=ボーンドの拳が激突した。イアルの勢いを抑えられず後退した
ライジング=ボーンドが顔をしかめた。
「この力…先ほどとは違う!まさか貴様…っ!」
 イアルがバックステップで間合いを取った後、宣言した。
「「Ocean's Blue」のチェイサー、イアル=ブラスト参る!」
 戦いの中で上位2次職へと転生したということか!
「いいだろう!貴様を私の最大の障害とみなそうではないか!」
 ライジング=ボーンドが咆哮をあげた。

 ◆

「転生…したかイアル」
 ライブカメラでその様子を見つめていた「雷獣の咆哮」ギルドマスターにし
てイアルの兄、ロウガ=ブラストは静かに眼を伏せた。
「ロウガ=ブラスト覚悟!」
「くたばれやああああ!!」
 斬りかかって来た敵ギルドの何者かが近寄った瞬間、ロウガが無造作に
手を振った。黒紫色、三日月状の衝撃波──ソウルブレイカーがそれらの
敵を薙ぎ払った。
「イアル」
 ロウガが静かに眼を開いた。その眼には覚悟の色が浮かんでいた。
「いずれお前と俺は殺しあう運命にあるようだ」

 レイについたイアル。

 フェイトに仕えるロウガ。

 運命が2人の兄弟を血塗られた道へと引き込もうとしていた。

 ◆

 上位2次職にも力ある者となき者にも差がある。そしてイアルはたった今、
転生したばかりなのだ。徐々にその差が、実力が浮き彫りになっていく。
「らぁああああ!」
 イアルの垂直蹴り上げを避けきれずライジング=ボーンドがたたらを踏ん
だ。が、ライジング=ボーンドはそのまま後方へと跳び、脚を一蹴した。
「飛竜」
 ドガン!という音ともにイアルの身体が吹き飛んだ。
「く…っそが!」
 イアルは受け身をとりつつ、ライジング=ボーンドへと視線を向けた。

 いない。

「こっちだ」
 背後からの声。
「しまっ…!」
「いかに強かろうと──武器を壊されれば無力となる」
 ライジング=ボーンドの淡々とした声。ライジング=ボーンドの狙いがイア
ルの武器破壊にあることに気付いたときには遅かった。
「砕山」
 ガィン!凄まじい音ともにイアルの武器が振動した。

 が───武器は砕けなかった。

「何──!?」
 その瞬間、イアルのまわし蹴りがライジング=ボーンドの首筋に炸裂した。

 ドガン!

「がっは…っ!」
 効いた。間違いなくこれは効いている。だがイアルは深追いは行わなかっ
た。まだコイツは奥の手を───隠している。イアルが深追いしてこなかっ
たことに感心したライジング=ボーンドがニヤリと笑みを浮かべる。
「フン…、「Ocean's Blue」にはアルケミストもいたとはな」
「ティア、ナイスタイミング。助かったよ」
 イアルの言葉にティアがにっこりと笑顔を浮かべた。
「お待たせイアル!武器壊されないようコーティングをとっさに投げてみて正
解だった?」
「ああ!」
 「Ocean's Blue」のアルケミスト、ティア=グロリアス参戦。

 ◆

 国境都市アルデバランにあるアルケミストギルド──

「所長、先日新規でアルケミストになった娘ですが…」
「ああ、言いたいことはわかりますよ。私も気になって調べてみたのですが、
あの子はどうやらアルベルタの英雄、グロリアス家の娘のようですね」
「なるほど、これが才能──というというものかもしれませんね」
 最年少で試験において過去最高の記録を叩きだした少女。
「ティア=グロリアス、あの子は天才ですよ」
 所長は静かに呟いた。

 ◆

「スフィアーマイン!」
 大爆発を起こす海底に住まう生物、マリンスフィアーの召喚。それをティア
がライジング=ボーンドのまわりに撒き散らした。

 連鎖爆発。

「ッラアアアァアア!!」
 その爆風の間をぬってイアルがライジング=ボーンドに斬りかかる。
「双竜」
 ライジング=ボーンドの手がイアルの胸に押し当てられる。

 ゴゥン!!

 凄まじい轟音とともに、モンクの発剄などとは比べ物にならない衝撃がイア
ルの身体を貫通した。
「が…っ!」
 これか、こいつの切り札は。確かにこんなものを持っていれば近接戦闘で
は敵などいないであろう。イアルの意識が薄れ──
「ポーションピッチャー!」
 あまりにもタイムリーなフォローが、ティアの回復材投擲がイアルの身体に
活力を取り戻す。イアルは歯を食い縛り、踏みとどまるとライジング=ボーン
ドに向き合った。

 倒す!

 意地と意地の壮絶なぶつかり合い。イアルはライジング=ボーンドに近接
戦闘で挑みかかった。離れれば先ほどの蹴りからの衝撃波に襲われる。

 ガキィン!

「な!」
 イアルのダガーがライジング=ボーンドの前で壁に遮られたように打ち返
された。これは──防御結界キリエ・エレイソン。

 そう、ライジング=ボーンドはハイプリースト。

 回復支援を主に行う支援職。防御をハイプリーストの力で、攻撃を謎の拳
法で行うライジング=ボーンドに死角など存在しない。あるとすれば結界の
内側から直接攻撃で決めること──
「…」
 ライジング=ボーンドはティアへと視線を向けた。まずあの少女を潰す。い
たちごっこはもう終わりだ。
「インクリースアジリティ」
 速度増加。ライジング=ボーンドが疾風のごとくティアの前へと移動した。
「潰れろ」
 ライジング=ボーンドの近接最強「双竜」が──
「インティミデイト」
 その攻撃がとどく瞬間、イアルがティアの腕を掴みスキルを発動させた。イ
ンティミデイト──対象と自分を一瞬で瞬間転移させる技。現在は『ラグナロ
ク』によって世界の空間が歪んでいるため大した距離が移動できないが、こ
の状況では──それが勝利の鍵となる。

 イアルとティアはライジング=ボーンドの背後に出現した。

「はあああああああああっ!!」
 ティアの叫びとともに商人最強とも言われるスキル──「メマーナイト」が
発動した。お金を司る弁財天が商人達に力を分け与えるといわれているそ
の強大な力が──
「うおおおおおおおおおっ!!」
 クローンスキル、相手から最後に受けた技を一時的にコピーして自分のも
のとするローグ達の技。イアルが最後に喰らったのは──ライジング=ボー
ンドの「双竜」──

 ゴガッォォォォォォォォォン!!!!

 2人の渾身の一撃がライジング=ボーンドに炸裂した。
「ぐはぁあああああっ…!!!」
 断末魔の叫びをあげてライジング=ボーンドの身体が崩れ落ち──い
や、ライジング=ボーンドはまだ倒れない。
「イアル…ブラストォォォォォォ!!」
「いい加減寝るんだな!」

 バキィ!!

 イアルの右ストレートパンチがライジング=ボーンドの下顎に命中し、ライ
ジング=ボーンドは今度こそ完全に沈黙した。そうこの瞬間、「皇帝の十字
架」の最高幹部『七近衛』が全て倒れたのだ。
「ぜは…ぐあ…疲れた…」
 イアルが肩で息をしながら両膝を床につけた。ティアも同様に全力をだし
つくしたようだ。
「やったね…」
「ああ…死ぬ気でやればなんとかなるもんだな…」
 正直、次やって勝てるか怪しいものである。そもそもライジング=ボーンド
はここにくるまでに1000人斬りはやってそうな雰囲気なので全開で戦えては
いなかったのだろう。だがそれでも──イアルの自信にはつながった。
「やったぜ…少しは汚名返上できたかな」
 イアルのその言葉にティアが首を振った。
「汚名なんてなかったよ。私、イアルが頑張っているところを…その…ずっと
見てたし」
「あ…お、おう」
 真っ赤な顔をして言うティアにつられてイアルの顔も赤くなった。
「若いとはいいことだ、うむ」
 突然の声。ライジング=ボーンドがもう目を覚ましている。
「「うぉうわあっ!!」」
 2人は思いっきり跳び退った。もういやだ。こんな化け物ともう一度戦いた
くない。2人は心底そう思った。ついでに何だか恥ずかしいセリフを聞かれた
わけだし。──が、ライジング=ボーンドの反応は予想外のものだった。
「心配するな。もう戦うつもりはない」
「「え?」」
 2人が間の抜けた声をあげた。
「一度負けたにもかかわらず、何度も挑みかかるのは恥の上塗りだ。それ
に──もう戦いは我々の手を離れているだろう?」
 ライジング=ボーンドは静かに視線を別の方向へと向けた。

 そこにはライブカメラが──2つの画面を表示していた。

 そう、もう誰もが──戦闘を忘れ───その2つの戦いに魅入られていた。

 誰もが気付いていたのだ。

 この戦い────

 『ギルド攻城戦』の戦いの決着は大将戦に委ねられたということを。

 ◆

 ルイーナ砦の外壁に備え付けられている巨大なライブカメラを見つめる群
集の中にある人物の姿があった。

 ルーンミッドガッツ国王、ヴァン=トリスタン=ルーンミッドガッツV世

 プロンテラ聖騎士団副長補佐、セレス=ドラウジー

 エリカの従姉妹であるセレスは国王の護衛として同伴していた。画面を見
つめながら、トリスタンV世が静かに口を開いた。
「我々は確かめなければならない───」


 レイの氷剣と炎剣の連鎖攻撃をトレントが弾き返し、ソードナイフを次々と
放つ。レイは紙一重で避け、トレントに斬りかかる。レイとトレントの剣が激し
い音を立てながらぶつかり合った。


「来るべき災厄から世界を救える者達の力を───」


 ジュニアの全方位大鎌をアイフリードが手の一振りで薙ぎ払う。アイフリー
ドは言葉も発さず、炎、氷、雷などの魔法を次々と繰り出し、エンペリウム
ルームのあちこちに激しい戦闘痕が残る。


「世界の命運は──彼らに委ねられているのだから」


 勝利を掴み取るのは誰なのか────

 「トレント★樹海団」か───
 「皇帝の十字架」か───

 それとも

 「Ocean's Blue」か───

 それはまだ───誰にもわからない。

 ◆

「おおぉおおおおおあああああぁああっ!!」

 ドガン!!

 レイの渾身の一撃がトレントを吹き飛ばした。トレントは空中で回転しなが
ら受け身を取ると、その眼を、真紅に光る眼をレイに向けた。
「やるじゃないかレイ=フレジッド!そうでないと面白くないぜ!ハハハ!」
「御託を並べてるヒマがあったらかかってこいよ、クソ野郎」
「上等だゴルラァ!」
 レイとトレントの姿が交錯し、激しい音を奏でた。

 [続]


〜あとがき〜
転生って扱いが結構難しいのでこういう形を取りました(;´Д`)人
次回予告!「トレント★樹海団」総帥、トレントの猛攻!
レイとトレントの決着戦が幕を上げます!


〜登場人物紹介〜
●イアル=ブラスト [再]
性別:男
JOB:チェイサー
Guild:「Ocean's Blue」
悩み苦しみそして目覚めたイアルの本当の力。
まだチェイサーとしては未熟だが、その強さは群を抜いている。



〜Web拍手の返答〜
>14時 WSハイプリの復帰カップルいいとこないね^^;
キャラを生かしきれてない俺(ノ∀`)

>私を出すと人気もっとあがるよ(・ω・)
(´ω`)…? (´・ω・)、

>影うっすい奴がフェイトだったぁぁぁぁぁ
伏線は撒いておきましたy(゚∀゚)

>突っ込みなかったということでw
>思うにTOPに持ってきたことが敗因かとw
>みんなそれで満足してるんですねえ・・・きっとw
>小説1話ごとの終わりにスイッチ増設を提案します。(めんどくさ〜w
面倒なので却下します('A`)
やっぱり話の盛り上がり方が薄い話はやっぱ少な目ですねぇ。


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