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Ocean's Blue

055:Curse Ragnarok

 アルデバランの衛星都市ルイーナ。そこの中央に存在する砦にて行われ
ている『ギルド攻城戦』──ルイーナ決戦。「皇帝の十字架」とそれに対する
ギルドの連合という戦いの構図、それを崩し戦いに混乱をもたらしたギルド、 

 「トレント★樹海団」

 そのギルドマスター、トレント。

 反皇帝勢力「レジスタンス」の長、レイ=フレジッド。

 2人は旅の間、何度も出会っていた。まるで見えない因縁があるかのよう
に何度も、何度も。そして2人が2人とも夢を追いかけていた。夢のために必
死に戦っていた。必然のように戦いの機会は訪れた。このルイーナ砦「天空
台座」にて、互いの夢への通過点であるこの場所で。

 相手の夢を潰し、前へと進めるのはたったの一人。

 レイとトレントは互いの宿敵と今、刃を交えている。

 ◆

 ギャギャギャギギギギギギギギイッィィィl!!

「「おおおおおおおおおおっ!!」」
 2人の咆哮とともに互いの剣が激しい高音を奏でる。
「…っ!」
 レイは次の瞬間、身をかがめトレントと交錯するように反対側へと抜けた。
その瞬間、レイがたった今いたところにソードナイフが突き刺さる。

 やりづらい。

 トレントのソードナイフの投擲は恐るべき速度である。懐に手をいれソード
ナイフを相手に投擲、その動作が見えないほど速いのだ。感覚、戦いの経
験、気配、それらを総動員しても避けられるか避けれないかの瀬戸際なの
である。レイは不敵な笑みを浮かべながら痛みに耐えた。

 トレントのソードナイフはレイの左脚をとらえていた。

「くそ」
 レイは毒づいた。トレントの戦い方は「トレント★樹海団」の騎士、フィン=
ロルナークとは全くの別物だった。フィンは素早く手数をいれ、隙を見るやい
なや決めにかかってくるというものだった。だがトレントはその対極。剣は大
振り、手数ではなく一撃死を狙うほどのパワータイプ。そしてその隙を補う
かのようにソードナイフが投擲されてくる。揺るぎなき王者の戦い方。
「「トレント★樹海団」ナンバー1の実力をあなどってもらっては困るな」
 一瞬の隙をつき、トレントの蹴りがレイの腹部に突き刺さる。

 ドガン!

「がはっ!!」
 レイは吹き飛ばされながらも何とか受け身をとった瞬間、トレントのマント
が視界いっぱいに広がった。マントを目くらましに使われた。と、なると次に
来るのはマントの奥からのソードナイフ──!?
「ちいっ!」
 マントを突き抜けて襲い来るソードナイフを弾き返した瞬間、レイは自分が
読み違えたことに気付いた。マントを目くらましに使ったのはこっちが本命。

 トレントのあの体勢───剣の構えは───

「死ね、レイ=フレジッド」

 ボウリングバッシュ───剣圧衝撃波────

 レイにトレントの必殺の一撃が炸裂した。

 ◆

 「王」という言葉がある。

 主に権力者の象徴として使われるその言葉は、俗語として別の意味にもと
られることとなる。すなわち、最上位実力者の意味合いとして。人は己よりも
はるか高みにある人間を恐れ、敬い、崇め奉る。

 「魔界の貴公子」 ジュニア=サイドライク

 「皇帝」 アイフリード=フロームヘル

 どちらも常人をはるかに超越した強大な力の持ち主である。

 ジュニア=サイドライクは魔軍七大勢力最強とすら言われている「魔族の
帝王」バフォメットを父にもつ高位魔族。その力は己が持つ大鎌──クレセ
ントサイダーを空間内で自由に操り、相手の首を跳ね飛ばす。さらに魔族特
有の呪法を併せ持ち、その実力は天上のものに近い。

 アイフリード=フロームヘルは世界最強の魔術師と言われ、様々な魔法を
使いこなす。そして恐るべきは彼はその魔法に詠唱を必要としない。無詠唱
──念じるだけで魔法が発生する。彼の視界に入ったものは全て無惨に叩
き潰される。恐るべきハイウィザード。

 これほどの実力者と対峙すれば常人では負けたという感情を抱く前に地
に倒れ伏すだろう。だが、これら「王」とまで言われるほどの実力者達が、
しかも実力が拮抗している2人が対決したときはどうなるか。


────それは芸術となる。


 戦いのための戦闘芸術品。戦いの、天上の極地にいるもの同士の戦い
──戦闘芸術。隙など無く、チェスの詰め合いのような、拮抗した戦い。
誰かが「エンペリウムルーム」を映すライブカメラを見ながら呟いた。
「すげぇ…」
 別の誰かが呟く。
「これが…『ギルド攻城戦』の頂点に立つ者達の戦いか…」
 誰もが言葉少なに、その戦いに、次元が違いすぎる戦いに魅入っていた。

 無言轟音の決戦────

 ジュニアの大鎌がアイフリードのファイアーウォールに阻まれ、アイフリー
ドの高速電磁球ユピテルサンダーをジュニアの結界が阻み、両者交錯、そ
の瞬間にも互いの攻撃が、恐るべき攻撃が交錯し合う。
「さすがは──「皇帝」と言われるだけのことはある」
 ジュニアは「エンペリウムルーム」の床に満たされている水を大鎌の衝撃
波で巻き上げた。ジュニアはそのままそれらの水を大鎌に収束させアイフ
リードとの間合いを詰めた。
「ジュニア=サイドライク、お前も──その程度か」
「何──」

 ドゴゥ!

「が…はっ…!」
 アイフリードの凄まじい拳の一撃がジュニアの大鎌をかいくぐり、ジュニア
の腹部に炸裂した。ジュニアはこの瞬間、自分の失策を悟った。
「俺が最強と詠われるのは魔法だけではないということだ」

 ユピテルサンダー

 アイフリードの放った超高速電磁球がジュニアの身体を吹き飛ばした。

 戦闘芸術の、均衡が、崩れ、始めた。

 ◆

 飛びそうになる意識をつなぎとめながらレイがトレントに視線を向けた。
「あのタイミングで防ぐとはな」
 トレントの感心した声。くそったれ黙れ。こんなものをまともに喰らえばタダ
じゃすむわけがない。モルゲンシュタインのつくったゴーレムを破壊した時に
見せられた威力など比較になってはいないだろう。
「だが、次は外さん」
 先ほどの衝撃波をさばくために氷の宝剣「アイスファルシオン」を「天空台
座」の、トレントを挟んだ反対側に飛ばされてしまった。先ほどは剣が2本
あったから防げた。今回は炎の宝剣「ファイアーブランド」のみ。防げない。
「それとも──ルドラの弓で防ぐのか?」
 トレントの皮肉った言葉。絶対防御の盾となるルドラの弓。トレントは狙って
いるのだ。レイがルドラの弓に持ち返る瞬間を。「ファイアーブランド」から注
意をそらすその瞬間を。剣を失えば、もうレイは戦えないのだから。

 弓が引けないレイにとってそれは敗北を意味する。

「…っ!」
 レイは唇をかみ締めた。どうする?どうすればいい?下手にガイストをけし
かけても斬り捨てられるだけだろう。かといって近接戦闘では明らかにトレン
トの方が強い。遠距離ではあの衝撃波が来る。
「クク…受け止めるのがイヤなら死ぬまで避け続けることだな」
 トレントの一方的な宣告。

 ボウリングバッシュ───剣圧衝撃波

 その連打がレイに襲い掛かった。凄まじい斬撃の嵐が吹き荒れる。
「レイ、いい加減倒れろよ。邪魔だお前は」
 トレントが衝撃波の連打を放ちながら口を開いた。
「俺達には夢がある。進む道がある。その夢を阻む者は全て敵だ」
 容赦のない連打。無慈悲に、レイは傷を負っていく。
「俺達の夢はミッドガルド大陸では叶わない。船がいる。船を得るためには
金が要る。邪魔だ、どけ。俺達の金のために死ね」
 連打。連打。連打。連打。連打。連打。連打。連打。狂ったようにトレントは
魔剣「エクスキューショナー」を振る。その名の通り相手への処刑執行。
「俺は切り札を最後までとっておくようなことはしねぇ。戦いの中の一番重要
な局面で使う。そうやって俺は前へと勝ち進んできた。相手の夢を潰しなが
ら、自分の夢のために戦ってきた!お前が弓が引けないなど知ったことか。
夢を叶える力がないのならくたばれ!」
 トレントが一際大きく魔剣を振りかざす。
「レイ=フレジッド!お前の夢も──俺が叩き潰してやる!!」

 ゴァァッ!!ドゴゥン!!

 レイが受け止めきれず、衝撃波を受け、ゆっくりと崩れ落ちた。

 どさり…

「…」
 トレントは無言で倒れたレイに視線を向ける。
「俺の勝ちだ」
 トレントのその宣告に反応したのかレイの手がぴくりと動いた。
「…ち」
 トレントは舌打ちすると、再度剣を振りかぶった。

────次で完全に終わりにしてやる。

 ◆

────数ヶ月前のアルベルタにて

「俺もやってみるか…かくし芸」
 フィリの隣に座ったレイがそう呟くと、フィリが目を輝かせた。
「ホント!?見たい見たい!」
「うっし、しっかり見てろよ?」
 レイが皆の前に出る。
「おっしゃ、次は俺だ!レイ=フレジッド!空に向かって打ち上げた矢が落
下してくるのを掴み取ります!」
「「「おおお!いけいけー!」」」
 観客の声援とともに、レイは近くに置いていた自分のハンターボウを手に
取った。



 次の瞬間。

 ◆

────先日のヴァルキリーレルムにて

 キスクがあまりの驚きに目を見開いた。

 阿修羅覇凰拳を受け止めやがった!?

 キスクは拳の先を、レイが弓で受け止めている様を凝視した。ルドラの弓
──レイに付き従う鷹のガイストの真の姿にして『ラグナロク』発動の鍵。

 そう、レイはルドラの弓でキスクの阿修羅覇凰拳を止めたのだ。

「──くっはぁ…、衝撃で腕がしびれる…よなぁ!!」

 ◆

 レイはあまりにも信じがたい事実に気付き、戦慄した。

 まさか───そうなのか?

 トレントが衝撃波を放とうとしている中、レイは諦めのため息をついた。

 トレントに負ける諦めではない。

 このふざけた呪いから逃れられないということからわかった「諦め」。

 笑いがこみ上げてくる。昏い憎悪のこもった笑いが。

 ◆


 ボウリングバッシュ────剣圧衝撃波

 トレントの必殺の一撃が放たれた瞬間、レイは跳ね起きた。そして言葉を
紡ぐ。相棒である鷹のガイストをアース神族の誇った兵器である「ルドラの
弓」へと変質させる言葉を。
「ルドラ、真の姿に戻れ──『Out of Curiosity』!!」
 そして、2本の光の矢が「ルドラの弓」の中に出現する。

 レイは引き絞った──「ルドラの弓」を。

「ダブルストレイフィング!!」

 ゴガァォオオオオオオオオンッ!!

 凄まじい轟音とともにトレントの衝撃波をレイの衝撃波が吹き飛ばした。
「なっ…に…!?」
 トレントの驚愕した声。驚いている、当たり前だ。向こうはこっちが弓を引け
ないのを知っている。知っているからこそ驚いている。そして俺自身も驚いて
いるのだから。
「はははは」
 レイは腹の底から昏い笑みがこみ上げるのをとめられなかった。

 何て呪いだ──『ラグナロク』の呪いは。

 確かにレイは『ラグナロク』によって大切なもの──弓を引くということ──
を奪われた。そう弓を持つことすら許されない呪い。

 だが、『ラグナロク』とはそれ自体呪われた存在なのだ。

 『ラグナロク』を行使するものはいずれ大切なものを全て失い、そして命が
尽き果てて、惨めに死んでいく。それこそが呪い。
 弓が引くという行為を奪われたとしても、『ラグナロク』が撃てなくなるわけ
ではない。むしろ最期の瞬間まで『ラグナロク』を放ち続け、死に行かなけれ
ばならないのが『ラグナロク』を行使する人間の運命。

 だからこそ──弓の中で唯一「ルドラの弓」のみが使用できる。

 『ラグナロク』の引き金たる「ルドラの弓」のみを。

 「ルドラの弓」を使用する限り、レイは弓を引くことが出来る。

 レイ本来の弓で戦うということが出来る。

 本気で、戦うことが出来る。

 笑いが止まらない。
「ははははは!何て呪いだ!『ラグナロク』は絶対に俺を逃がすつもりはな
いみたいだ!だが呪いそのものが役に立つとは思わなかったぜ…」
 随分と懐かしい気がする。

 光の矢が「ルドラの弓」の中に出現する。便利なものだ。矢の補充すら必
要ないらしい。レイはゆっくりとトレントと対峙した。
「レイ=フレジッド…貴様…」
 トレントが異様なレイの雰囲気に一歩だけ後退した。
「トレント、お前にはまだ見せたことなかったよな…」

 ゴゥン!!

 レイのまわりに青白色の凄まじいオーラが出現した。圧倒的な、魔軍七大
勢力の魔王の一角、「幽鬼なる海魔」ドレイクを倒したとされる「神雷」という
英雄の二つ名に相応しい猛々しい力が。

「これが──俺だ」

 [続]


〜あとがき〜
遅れまくってすみません(;´Д`)人
事情は雑記に書いてる通りですorz
次回予告、復活したレイの猛反撃がはじまる!
そしてトレントが最期の力を振り絞り、レイに襲い掛かる。
レイvsトレント戦決着!



〜Web拍手の返答〜
>ライジング=ボーンドさんスイッチはやいな・・・
負けを負けと認めれる潔い人です。

>国王VSプロンテラ聖騎士団副長補佐(;´Д`)
戦ってない!戦ってないっ!(;´Д`)

>ユミルの十字架がユミルのクマ〜になってる(;;
    _, ,_  なるかボケー――――――い!!
 ( ゚Д ゚)
  ⊂彡☆))Д´)



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