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Ocean's Blue

058:Guild vs Guild

 ズズズズズズ…

 地響きが、鳴動がルイーナ砦を揺らす。「皇帝」アイフリード=フロームヘ
ルの中に人知を超えた魔力が収束する。
「征くぞ──────「Ocean's Blue」」
  「皇帝」の手に、強大な魔力が展開していく。そして─────


 


 氷龍が、天を、貫いた。

「おおおあああああああああっ!!」
 ジュニアが魔力の盾を全力で展開する。

 衝撃。

 音などしない。音が大きすぎて誰にも聞こえない。

 観客ですら昏倒する者が現れた。

 ルイーナ砦の天井を簡単にぶち抜いた氷龍は天へと巨大な大竜巻を起こ
しながら突き刺さった。大破壊が全てを蹂躙する。
「結界を張って…このダメージか」
「く…シャレに…がはっ!」
 レイが血を吐いた。冗談ではない。トレントの繰り出してきた最後の技です
らこれに比べたら小さく見える。爆風に吹き飛ばされながらも受け身をとった
2人の前には1人の人物。

 「皇帝」アイフリード=フロームヘル

「「な…」」
 あの間合いを一瞬で詰め──

 ドガン!

 アイフリードの凄まじい蹴りがジュニアの首筋に命中、ジュニアの身体が
砲弾のように吹き飛ぶ。そしてレイが弓を向けるよりも早く、アイフリードの
無詠唱魔法がレイを至近距離から撃ち据えた。
「がぁ!」
 今喰らったのは電磁球、「ユピテルサンダー」か。意識が飛びそうになる。
が、アイフリードがそれを許さない。打ち下ろし気味の拳、鉄槌がレイの後頭
部を激しく殴りつける。倒れる前にアイフリードの蹴りがレイの腹部を打ち据
える。少しでも離れると無詠唱魔法が炸裂する。

 強すぎる───────

 「皇帝」アイフリード=フロームヘルは鬼神のごとく──強い。

「レイ!」
 ジュニアが追い込まれるレイを助けようと飛び出してくる───が、ジュニ
アの前にはキスク=リベレーションが立ち塞がった。
「ハッ!お前にはさっきの借りがあったな!返すぜ!」
「くっ!」
 回避が──追いつかない。普段なら避けれるであろうこの攻撃が、先ほど
の「ストームガスト」の後遺症か、自由に身体が動かない。まずい。
「猛虎硬派山!」

 ゴギィ!

 半回転させた身体を戻す勢いとともに打ち出された拳が、ジュニアの胸板
に炸裂した。鈍い音ともにジュニアの身体が崩れ落ちる。その様子を見たア
イフリードがレイの首を左手で掴みあげ、絞めあげる。

 ミキミキミキ…ィ!

「いい線はいっていた───が、俺にコレを出させる前にケリをつけるべき
だったな」
 レイが壮絶な表情で言い返す。
「何余裕ぶっこいてるんだ?まだ勝負は終わってないだろうが」
「ならば消えるがいい。絶望の果てに塵と化せ」
 アイフリードがレイの身体をそのまま投げ飛ばす。受け身もとれずにレイ
は地面に落ちた。ヤバい、これは本当にヤバい。

 アイフリードの中に魔力が収束していく。

 それを見た瞬間、ライブカメラを通してこの戦いを見守っていたフィリが蒼
白な表情で叫んだ。
「レイ!逃げてぇ!!」


 


 氷龍がルイーナ砦を蹂躙し尽くしていく。すでに砦の外観はほとんど崩れ、
残っているのは「エンペリウムルーム」の中央に存在する。世界最大のエン
ペリウム、ロードオブエンペリウムのみとなっていた。

 ガラ…

「…!」
 瓦礫から這い出してきたレイとジュニアに、アイフリードは驚きを隠せない。
「とっさに結界を張る力が残って──いや、そんなことはどうでもいいな。立
ち塞がる者は全て叩き潰すのみだ。いくぞ、キスク」
「ああ」
 キスクが迷いなく返答を返す。

 レイとジュニアは俯いて動かない。

 ◆

 ライブカメラを見てその様子を見ていた「トレント★樹海団」のナンバー2、
ルアーナが静かに目を伏せた。
「終わった──ね」
 「ストームガスト」を出す前の「皇帝」なら、もし「トレント★樹海団」の勢力が
戦っていたとしても勝機はあった。だが、これは無理だ。圧倒的過ぎる。伝説
級の魔法に鬼神のごとき強さ、勝てる要素など微塵もない。
「終わった───ねぇ?」
 突然声をかけられたルアーナが驚きの表情を浮かべながら振り返ると、そ
こには「トレント★樹海団」のギルドマスター、トレントが立っていた。
「あ、ぼろ負けマスターお帰り」
「言葉にオブラートを包むということはできんのか…」
 トレントが凹みながらブツブツと呟いた。
「ルアーナ」
「何?ぼろ負け」
「…まぁいい。とりあえず聞け」
「はいはい、ヒマだし聞いてあげる」
 トレントがライブカメラの方向を見やった。
「勝負にケリをつける方法ってのは大別して2つある」
「──ん?」
「一つは精神的にボコボコにして相手に戦意を無くさせること、もう一つは肉
体的にボコボコにして相手を物理的に動かなくさせること」
 ルアーナが怪訝な表情を浮かべる。何で、トレントはこんなに楽しそうなん
だろう───と。
「それが?」
「肉体的にボコボコにされたらついでに精神面に影響するし、精神的にボコ
ボコにされたらやる気なくなって物理的に動かなくなったりするわけだが」
 トレントが一息ついて、最後口を開いた。
「どっちかが欠けた時、どっちかが残ってれば人はまだ戦える。そして──
だ、あいつらにそのどっちが欠けてるんだ?」
 ルアーナがバッ!とライブカメラを見た。

 それに映っているのは、レイとジュニアの不敵な笑み───

 彼らは「まだ」倒されていない──

 彼らは「まだ」諦めていない──

 「Ocean's Blue」は「まだ」負けていない───

 ◆

 レイが呟いた。
「ヤバいな」
「ヤバいね」
 ジュニアが呟き返す。そして同時にニヤリと笑みを浮かべた。まだやれる
──互いのこの言葉で理解できた。まだいける。
「何か策は?」
「「皇帝」と「魔人拳」の足止めをよろしく。あとは何とかする」
「…無茶言うな」
「頼むよ、ギルドマスター」
「こんな時だけギルドマスター扱いかよ…いいさ、任せろ」
「勝つぞ、レイ」
「ああ」
 ゆらりとレイとジュニア、満身創痍の2人が立ち上がった。

 来るか───

 アイフリードは決着が近づいていることを感じ取った。
「キスク、足止めを頼む。極大の「ストームガスト」で終わりにする」
「了解」
 キスクが一歩だけ前に出る。


 こんなときだというのに柔らかい風が…フィリの髪を撫でるように吹き抜け
る。フィリは静かに目を閉じた。次にこの目を開けた時、勝っているのはどち
らだろうか。───決まっている。

 レイが勝つって────信じてるよ。


 咆哮のような叫びを上げながらレイとキスクが駆け出す。互いが互いを障
害とみなし至近距離で立ち止まる。壮絶なにらみ合い、そして交錯、激突、
レイが「ファイアーブランド」「アイスファルシオン」の両宝剣を弓へとつがえ
る。キスクが爆裂波動から力を全開に発揮する。

 勝つのは───「俺」だ!

「ダブル───ストレイフィング!!」
「阿修羅覇凰拳!」
 凄まじい爆発とともに互いの力が激突する。衝撃に大地が割れる。

 レイは違和感に気付いた。

 レイの宝剣衝撃波が捌かれた──いや、阿修羅覇凰拳そのものを捌くこ
とにそのものに集中して使われた。今の阿修羅覇凰拳、本当にキスクの全
開だったか?ヴァルキリーレルムで見せたあの威力にとどいていたか?
「どっかのお節介のおかげだな!勝たせてもらうぜ、レイ!」
 キスクが再度爆裂波動を発動する。それを見ていたトレントが人知れずく
しゃみをした。キスクの拳が振りあがる。

「阿修羅!覇!凰!拳!」

 レイの腹部に突き刺さった拳の超エネルギーが大爆発を起こした。

 ドォォォォン…

 レイ=フレジッドは倒れた。ではこちらも準備が終わった。悪いなジュニア、
この勝負、我々が勝たせてもらうぞ。アイフリードの手に凄まじい力が展開し
ていく。今までで最も極大の──魔力。
「征くぞ───」

 

 レイが倒される様と、迫り来る「ストームガスト」を見やりながらジュニアは
静かなる心で、あるモノの解放を試みていた。

 それはジュニア自身が持つ魔力。

 ジュニアの父は全ての魔族の頂点に立つ「魔軍七大勢力」の魔王

 「魔族の帝王」 バフォメット

 その魔力は天をも揺るがす神魔に最も近いと言われいる魔王なのだ。そ
の魔力をジュニアは継いでいる。そして己が未熟なため、その魔力を制御で
きず、ジュニアはこの力を封印し続けてきた。封印したからにはいつか解か
なければならない。それはいつ────?

 今に───決まっている!

「ウオオオオオオオオオオッ!!」
 溢れ出す暴れ出す魔力を押さえ込み、力の解放を望む。全ては勝利のた
めに!自分とともに戦ってくれた仲間達のために!
「見るがいい、「皇帝」アイフリード=フロームヘル。これが──絶対なる「魔
族」の力!誇りだ!その証だ!」
 ジュニアが己が魔力を────解放した。



 第4禁呪──極大魔法



 



 雷龍が、天より、墜つる。



 誰もが──度肝を抜かれた。一生に一つ見れるかどうかとさえ言われてい
る禁呪がここでぶつかりあっている。「ストームガスト」と「ロードオブヴァーミ
リオン」が互いにせめぎあっている。
「「オオオオオオオオオオ!!」」
 アイフリード=フロームヘル、ジュニア=サイドライクの両名は力に任せて
魔力を解放した。手をゆるめれば即座にやられるのがわかったからだ。

 氷龍と雷龍が狂えんばかりに相手を喰らわんとしている。

 恐るべき膠着状態。

 だが──その均衡を崩すかのごとく、「魔人拳」キスク=リベレーションが
ジュニアに向かって駆ける。

 だが、


 「ファルコンアサルト」


 鷹のガイストが超衝撃波をまといキスクを強襲した。薄れ行く意識の中で
キスクが振り返った。レイが──「転生」しやが──…


 即座に弓へと変化したガイスト──ルドラの弓を手にレイが「ファイアーブ
ランド」、「アイスファルシオン」を回収、弓へとつがえた。

「行くぜ、ジュニア」

 レイがジュニアの隣まで移動し、全力で、持てる限りの全ての力を結集し、
それを放った。

「シャープシューティング!」

 レイの放った衝撃波に収束するようにジュニアのロードオブヴァーミリオン
が消えていく。消滅ではなく収束、そして解放。

 雷龍をまといし衝撃波がアイフリードの「ストームガスト」を打ち砕く。

 そしてそれは「皇帝」アイフリード=フロームヘルを撃ちぬき、

 アイフリードごと吹き飛ばした先にはこのルイーナ砦の象徴、

 ロードオブエンペリウム

 ドガァァァッァァァアアン!!

 アイフリードの身体がロードオブエンペリウムに叩きつけられ──そして、

 ピシ…ピシ…ゴガァァァァァァァァァ!!

 ロードオブエンペリウウムが崩壊していく。

 そして──────


 砦 [Luina Guild] を [Ocean's Blue] ギルドが占領しました。


 レイとジュニアが勝利の咆哮をあげ──ルイーナ砦が歓声に包まれた。

 ◆

 レイとジュニアの元に「レジスタンス」のメンバー達が集まり2人を賞賛して
いる。と、フィリ=グロリアスが心配していたのか泣きそうな表情でレイ=フ
レジッドに抱きついている。その傍らで敗北したアイフリード達のまわりにも
人が集まっている。彼らの人望の広さを垣間見る状況でもあった。

 そして──その温かな光景を目の当たりにしながら、この国の国王──
ヴァン=トリスタン=ルーンミッドガッツ三世は隣にいる護衛役であり、エリカ
の従姉妹でもあるパラディン、セレス=ドラウジーに話しかけた。
「さて───いつ仕掛けてくるつもりだ?」
「今です」

 ブォン!

 セレスの即答とともにトリスタン三世の剣──斬撃がセレスの首を刎ね飛
ばさんと水平に放たれた。セレスはそれを回避、後方へと跳んだ。
「お気づきでしたか」
「フェイトの手の者だな」
「ええ、私は「七つの大罪」が一人、『情欲』の十字架を持ちしフェイト様の配
下、セレス=ドラウジーです」
 
 ◆

 ルイーナ砦が突如として瘴気に包まれる。

 レイ達はその違和感を感じ取った。レイが歯噛みする。まわりの者を押し
のけ、レイが血を吐きそうな叫びを上げた。
「やっぱりこのタイミングで仕掛けてくるか──ウェルガ!」

 ゴアアアアアアアアアアアアアアア!!

 黒い竜巻とともに『幻影』ウェルガ=サタニックがその場に姿を現す。
「ククク…」
 レイが壮絶な表情でウェルガを睨み付ける。
「貴様…!────…?」
 レイがウェルガの背後に一人の人物が立っていることに気がつく。

 コイツは──「皇帝の十字架」の『七近衛』の一人、ファルス=エタニティ

「…っ!!」

 レイが──それに気がつき、目を見開いた。

 それはレイから母を奪った者が持っているはずの刀。

 妖刀───「村正」

「改めて初めましてレイ=フレジッド──俺の本当の名はフェイト」
 フェイトがゆっくりとレイの目の前に歩み寄り、レイの耳元でささやく。
「俺が───貴様の敵だ」

 [続]


〜あとがき〜
間があいてすみません(;´Д`)人
こんなペースですがお付き合いくださいませ、ぐは。
次回予告は無しということでorz


〜登場人物紹介〜
●レイ=フレジッド [再]
性別:男
JOB:スナイパー
Guild:「Ocean's Blue」
戦いの中でさらなる成長をとげた「神雷」と呼ばれる英雄。
弓の腕に関しては世界トップクラス。

●セレス=ドラウジー [再]
性別:女
JOB:パラディン
フェイトの配下の一人。
「七つの大罪」が一人、『情欲』の十字架を持っているらしい。
エリカの従姉妹で、エリカからは姉さんと呼ばれている。


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