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Ocean's Blue

060:Seven Heroes

 20年前に起こりし人間族と魔族との大戦。その大戦のさなか一組の冒険
者のチームが絶望にくれる人々の先頭に立ち、戦い、そして大戦を勝利に
導いた。

 起こった大戦の名は「トリスタンの悪夢」

 世に名だたる「魔軍七大勢力」の七魔王をはじめ、魔族全てが人間族に
大攻勢をかけてきた戦い。戦いは熾烈を極めた。「魔法都市ゲフェン」が
「グラストヘイム古城」より現れた闇の眷属により陥落、「山岳都市フェイヨ
ン」が「幽鬼なる海魔」ドレイクによって制圧、「港町アルベルタ」が「亀族の
大将軍」タートルジェネラルによって滅ぼされ、「砂漠の都市モロク」が「古
の黄金王」オシリスによって蹂躙された。

 生き残った人々は最期の望みを託し、ルーンミッドガッツ王国の「首都プ
ロンテラ」での篭城戦を開始した。「世紀末覇王」オークロード率いるオーク
族、「インセクトクイーン」マヤー率いる蟲族の連合軍との激戦、死闘。

 戦いは拮抗していたはずだった、「それ」が現れるまでは。

 プロンテラより北に広がる大森林「迷宮の森」

 そこより現れた魔王、世界最強の魔王、全ての魔族の頂点に立つ存在。

 「魔族の帝王」 バフォメット

 その姿が見えたとき、人々は絶望した。終わりだと悟った。

 ──────────────だが。

 プロンテラ北平原と首都プロンテラをつなぐ大橋の上に一人の男が立ち
塞がった。たった一人──────「魔族の帝王」の進撃を止めるため。

 「プロンテラ北の橋の戦い」、この大戦の中で最も激しい戦いだったと言
われている戦いである。立ち塞がった男の名はラクール。

 『七英雄』──「螺旋の王」 ラクール=フレジッド

 七日間の死闘を経て、ラクールはバフォメットを「迷宮の森」へと追い返し
た、全身に凄まじい傷を負いながら。

 彼は英雄なのだ───────間違いなく世界最強の。

 そしてバフォメットを追い返して5日後、

 「闇を統べる者」 ダークロードが「首都プロンテラ」に出現した。

 ◆

 凄まじいオーラがラクール=フレジッドより放たれる。ルイーナ砦の誰もが
ラクールの圧倒的な存在感に目を奪われていた。そしてラクール姿を確認
したこの国の国王であるトリスタン三世がラクールに聞こえるように呟いた。
「遅いぞ」
 ラクールがかつての戦友にニヤリと笑みを浮かべて答える。
「バーカ、街の方にも色々いたからな、潰してきたんだよ」
 その言葉を聞き、フェイトの表情が少し口惜しげに変化した。「国境都市」
アルデバランにもウェルガに命じて闇の眷族の魔族を大量に放っていたの
だ。だが、こうまでもあっさり突破してくるとは。
「では、そろそろ反撃させてもらおうか」
 トリスタン三世の声。トリスタン三世は自分と対峙しているセレスに構わず
剣を床に突き立てた。

「ゴスペル」

 ゴォォゥゥゥゥアアアアアァァァァアアアアアアアアア!

 凄まじいばかりの聖なる力がルイーナ砦をおろか、「国境都市アルデバラ
ン」全てを包み込んだ。ゴスペルとは聖なる力をもった結界を展開し、仲間
の力を大幅に引き出す切り札である。だが、トリスタン三世の展開したゴス
ペルは普通のそれとははるかに「大きすぎ」た。
「これが──『七英雄』──「聖結界」ヴァン=トリスタン=ルーンミッドガッ
ツ三世の展開するゴスペルか…!」
 フェイトが感嘆の声を上げる。面白い、フェイトの口元に愉快げな笑みが
浮かんだ。トリスタン三世らも何も考えていなかったわけではないということ
か。これほどのゴスペル、おそらくは数分と持つまい。ラクールの到着を待
ち、ゴスペルで短時間強化、そして殲滅、なるほど、筋は通っている。
「ハァァァァ!」
 セレス=ドラウジーがゴスペルを消そうとトリスタン三世に斬りかかった
───が、そこに立ち塞がったのはエリカだった。

 ガキィィィン!

「姉さん…っ!」
 従姉妹の姉の凶行に静かな怒りを噛み締め、エリカがセレスと剣を交錯
させた。斬り結びながらエリカが叫ぶ。
「なんでっ!こんなこと!」
「あなたは何も知らないわ。だから私のしていることも理解できない。私は
───フェイトをこの剣で護らなければならないの」

 黒い十字架が見えた。

「イービルクロス」

 ギギィイン!

「え…っ!」
 闇の十字がエリカの胸板を斬り裂く───が、斬撃は鎧を裂いただけ
だった。かろうじて避けれた、だが今の攻撃は──!?
「あなたは聖騎士ね。なら闇の騎士がいてもおかしくないと思うけど?」
「…っ!」
 セレスは剣を鞘へおさめると身を翻した。
「今の貴女じゃ私を止められないわよ、エリカ。もっと強くなりなさい、
フフ…」
「姉さん…!!」
 セレス=ドラウジーの姿がエリカの前から消え失せた。

 ◆

 ラクールの圧倒的なオーラを感じ取った「無限王」シリウスがそちらに
視線を向けた。思わず声がもれでる。
「なんだ…?」
 「無限王」と名乗った男の注意が一瞬それた瞬間をトレントは見逃さな
かった。残っているありったけの力を振り絞った。
「くたばりやがれ…!」

 真紅剣「銀─────

 次の瞬間、シリウスの剣がトレントの首元に突きつけられていた。迅い。
「く…っ!」
 だがシリウスは思わぬ反応がかえってきた。
「これは「銀狼」…か。トレント、お前は「こちら」の世界でも俺を殺せるのだ
な」
「なんだと…っ!?」
 トレントの言葉に答えずシリウスが「皇帝の十字架」ナンバー2であるライ
ジング=ボーンドに向けて言葉を発した。
「なるほどな、ロエン…いやこちらの世界ではライジング=ボーンドだった
な。確かに「こちら」のトレントを使えれば俺を倒せるやもしれぬ。これは一
本とられたよ…」
「…」
 ライジング=ボーンドは黙して語らない。シリウスはその反応に満足した
のか剣を鞘へとおさめた。トレント達の後方にいるルアーナに視線を向け、
「ならばせめてお前達の無駄な抵抗を楽しんでから姫巫女を手に入れるこ
ととしよう。次に会う時を楽しみにしている。ハハハ…!」
 「無限王」シリウスはそう言葉を言い残しトレント達の前から姿を消した。
「…っ!」
 トレントが苛烈な憎悪をシリウスに抱き、その姿が消えた後も虚空を睨み
付けていた。

 ◆

「ぐあ…あああああああああ!」
 「皇帝」アイフリード=フロームヘルは大量の「糸」の結界に捕らわれてい
た。その糸の繰り師は「死者の巫女」ミサキ=リフレクト。アイフリードがこの
世界でもっとも愛した女性、リーナ=プラスタラスの肉片より造られたホムン
クルス。
「だめよリーフ、これは魔性を払う国、アユタヤで織られた「神糸」、魔力で己
を縛っている貴方では振りほどけないの」
「消え失せろ…!リーナは確かに死んだ!俺の胸の中で!俺は!俺は!」
「ええ、貴方が私を殺したの」
 アイフリードの表情が凍りついた。
「でも愛してる」
 ミサキ=リフレクトはアイフリードの首に腕をまわすとアイフリードの唇に強
引に口付け───そして言い放った。
「だから貴方にも死んで欲しいな」
 ミサキの手には短剣が、昔、アイフリードがリーナを刺したときと同じ紋様
の短剣が────

「調子に乗るなバカ女」

 ドガァァァア!!

 その声とともに指弾がミサキ=リフレクトを吹き飛ばした。
「…っ!」
 ミサキは受け身をとると指弾を放った者をにらみ付けた。そこにはキスク、
リシア、ルナ、ギルティ、そしてシャドウが──「皇帝の十字架」の『七近衛』
の5人がアイフリードを助けんと立っていた。シャドウが叫ぶ。
「お前は俺の姉ちゃんじゃない…!姉ちゃんはアイフリードの事を殺したい
なんて言わない!」
「ヒャハ、いい女じゃねえか。ヤってもいいのか?」
 言葉とは裏腹にギルティがシャドウをかばうよう、護るように前に出る。
「…貴方は一人じゃないのね、リーフ」
 ミサキが心底羨ましそうに呟いた。そして怨嗟の声を吐いた。

「私は死んだら一人だったのに」

 その時、アイフリードが突如として糸を引きちぎった。突然の事にミサキが
驚きの表情を浮かべる。
「まだそんな元気があったんだ…さすがは私が大好きなリーフ♪」
「消えろ」

 ドン

 ミサキの頭蓋にアイフリードの放った短剣──アゾートが突き刺さった。
「その短剣はお前がくれたモノだったな…返す」
「ひどい…リーフ…」
 ミサキは…頭蓋にアゾートを突き立てたままケタケタと笑い出した。
「あははははははははは、あははははは、また、会おうね、今日はこのぐら
いで許してあげる、あははははははっはは──はは」
「失せろ」

 ゴゥン!

 アイフリードの無詠唱魔法がミサキの足元で爆発を起こした。そして、その
爆煙が晴れたときミサキ=リフレクトの姿はそこにはなかった。

 ◆

 ドサ!という音ともに背中からイアルは地面に落ちた。
「ぐはぁっ!」
 痛みに耐え、激しい闘志はまだ途切れず、イアルはその男を──自分の
兄を睨み付けていた。
「クソ兄貴…!」
 ロウガ=ブラストは視線を、あおむけに倒れたまま弟に向けた。
「命を見逃すのは今回限りと知れ」
「冗談じゃねぇ…!」
 イアルが背中の激しく痛みをこらえながら身をおこそうとした。
「下手な考えは起こさないことだ」
「!」
 ロウガがティアに視線を向けた。イアルが少しでも動けば、ティアを八つ裂
きにするつもりなのだろう。ティアは凍りついたように動けない。
「兄貴…何でこんなことに手を貸している…っ!」
 イアルの血を吐くような声。ロウガは静かに口を開いた。
「暗殺者にすらなれなかったお前にはわからないことだ」
「…っ!」
「お前はこの「ギルド攻城戦」で随分成長したな?だが───それでもお前
が暗殺者にはなれなかった事に違いはない」
「だったら何だ…!」
「だからお前には「俺の考えていることは理解できない」と言っている」
「…っ!」
 ロウガはまわりに注意を向けた、どうやら今回は敗色が濃厚のようだ。自
分も引き時だろう。
「イアル、俺を止めたくば、俺を殺すしかないと知れ。それが暗殺者を止め
る唯一の方法だとな」
 そう言い残し、ロウガ=ブラストは闇へと消えた。

 ◆

「クラスチェンジ───召喚、怨霊武者、ストームナイト」
 アイフリードの相手をミサキに任せ、ラクールの元へとやってきたハウゼ
ンの魔法が魔王と呼ばれる魔物を召喚する。
「かかれ」
 ハウゼンの号令とともに怨霊武者とストームナイトがラクール=フレジッド
へと襲い掛かった───が。
「邪魔だ、どけ」
 ラクールの放った槍の衝撃波が竜巻を発生させた。その竜巻は怨霊武者
とストームナイトをまとめて貫き、一撃で葬り去った。恐るべき槍技、これが
ラクールを「螺旋の王」と言わしめる槍の奥義。

 スパイラルピアース

「ハウゼン…俺が用あるのはお前じゃねぇ、邪 魔 だ か ら 消 え ろ」
「くっ…!」
 ハウゼンがラクールの凄まじい威圧感に後ずさりした。かつて『七英雄』と
して肩を並べて戦った時もこのラクールという男の強さは圧倒的だった。そ
してその強さは20年前より衰えるどころか、さらに強化されている。

 すでにルイーナ砦のBOTはラクール一人によって全滅させられていた。

「さすがは世界最強と言われるだけのことはある。化け物だな」
 フェイトがハウゼンの前に進みでる、そしてラクールと対峙した。
「ようやくでてきたかクソガキ。お前に聞きたいことがある」
 ラクールの言葉にフェイトが答えた。
「ああ、好きなことを聞いてくれ」
「マリアを───彷徨う者を使いさらったのはお前か?」
 マリア=フレジッド、つまりラクールの妻でありレイの母である女性である。
ラクールと結婚する前は『七英雄』マリア=ハロウドとしてラクール達とともに
「トリスタンの悪夢」を勝ち抜いた英雄でもある。
「そうだ。13年前、俺がマリア=ハロウドをさらい、そしてニブルヘイムへと封
印した」
「お前はどうみても20歳いっているようには見えないな。よくて18歳といった
ところか?そんなガキにニブルヘイム封印などという芸当ができるとは思え
ないな」
「何が言いたいのかな、ラクール=フレジッド」
「マリアは俺達にこう言ったことがある。超高位の魔族がこの世界に顕現す
る可能性が高いとな、お前───「中身」は何者だ」
 だが───フェイトは黙して語らない。
「だんまりか?何でも答えてくれるんじゃなかったのか?」
 フェイトは黙っていたのではない。笑いをかみ殺していたのだ。
「クク…そこまでわかっているとはな。ならラクール、俺がマリア=ハロウドの
血筋を憎む理由はそれだ。そして俺は「ユミルの聖杯」を追い求めている。ヒ
ントはここまでだ。他に質問は?」
「ないな」
 嘘だった。だがニブルヘイムの行き方などフェイトに聞いても正確な情報
は得られないだろう。そう判断したラクールは質問することはもうないと答え
たのだ。
「では──全員死んでもらおう」
 フェイトから凄まじい魔力が────

 発せられなかった。

 フェイトの背後にはレイが立っていた。

 「ルドラの弓」に『ラグナロク』の光をつがえ、壮絶な表情で立っていた。

「フン…」
 
 ドゥン!!

 突如フェイトの周囲に発生した衝撃波で吹き飛ばされたレイがもんどりうっ
て倒れた。
「ぐっ…!」
 フェイトはレイに視線を向けた。
「今回は退かせてもらおう。どうも形勢が不利なようだ」
 最後にフェイトはこう言った。
「また会おう。「ユミルの十字架」を持つ者たちよ」
 逃がすまいとラクールが放ったスパイラルピアースを弾き返し、フェイトの
姿が闇の中、静かに溶け消えていった。

 [続]


〜あとがき〜
次回で第2部が完結しますヽ(`Д´)ノ
長かったー長かったーよ。
次回予告、「ルイーナ決戦」の祝勝会開催!
そこに現れる「皇帝の十字架」の面々!戦いは終わっていない!?
久々にまったりした話です(・∀・)


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