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Ocean's Blue

072:亀族の大将軍

 アルベルタでの亀族と冒険者連合の激突が始まった。

 「亀族の大将軍」タートルジェネラルの元へ、それぞれペコペコに乗った騎
兵が3人駆け抜けてくる。アサルトタートルやヒートタートルなどの亀族がそ
の3人を止めようと群がる。だが────

 ボウリングバッシュ!

 亀族を薙ぎ払う剣撃が起こす風圧がタートルジェネラルの元まで感じられ
る。 もう近い、相手が魔王だというのに果敢にも挑んでくる者、勝てるはず
のない戦いを勝てると信じている人間。
「それが蛮勇であるということを教えねばならぬ」
 タートルジェネラルは己の大太刀を構え、その人間を待つ。

 あと30秒────────────

 あと20秒────────

 あと──────


 タートルジェネラルの読みよりも早く、その人間が現れる。
「ボウリングバッシュ───剣圧衝撃波!」
「きたか!人間よ!」
 タートルジェネラルが咆哮をあげながらトレントの元へと突進する。衝撃波
など足止めにもならない。タートルジェネラルが大太刀を振り上げる。

 振り下ろす。

「やっべぇ…っ!」
 トレントの顔が引きつる。

 間一髪避けたその攻撃が大地に衝撃を与える。

 地割れがアルベルタを縦断する。

「おい!フィン!アルヴィン!」
 地割れの方には目もくれず、トレントが額から汗を流しながら、ペコで先行
してきた他の2人に声をかける。
「戦闘開始、化け物退治だ!」
 ナイトのフィン、クルセイダーのアルヴィンがペコペコから降り、トレントの左
右に並ぶ。
「来るがいい!人間よ!わしとて魔王の端くれ、存分に楽しませようぞ!」


 タートルジェネラルの頭上にフィンが出現する───凄まじき高速移動、
ギルドの中では並ぶ者がないほどの神速───タートルジェネラルが虚を
突かれ目を見張る。

 フィンが剣を振りあげ、風が収束する。

 たたみ掛けるようにアルヴィンが突っ込む。

 さらに後方ではトレントが剣を構えている。

「甘いぞ、人間よ!カーーーーーーーーーーッ!!」
 タートルジェネラルの怒濤の気迫が全方位衝撃波を巻き起こす。
「「「…っ!」」」
 アルヴィンは攻撃をとりやめクルセイダーの象徴である大盾を大地前方に
置きその衝撃を和らげる。トレントは咄嗟にアルヴィンの盾に便乗し、衝撃を
逃がす。だがフィンには衝撃を遮るものはなかった…!しかも空中…!


 だがフィンには全てを切り裂く風の力があった。


「ハァァァァッ!!」
「なに…!」


 タートルジェネラルの衝撃を切り裂き、フィンがタートルジェネラルへと肉薄
する。だが、タートルジェネラルの行動もまた早い。タートルジェネラルはフィ
ンを迎え撃つため特殊な構えを取る。

 そして、フィンとタートルジェネラルの姿が交錯する。











                 ̄ ̄ ̄ ̄-----________ \ | /  -- ̄
      ---------------------------------  。 ←フィン
           _______----------- ̄ ̄ ̄ ̄ ̄      
                     ∧ ∧    / / |  \   イ 
                    (   )  /  ./  |    \ /
                 _ /    )/   /  |     /| 
                  / /   //    /   |    / .| 
                ノ  ,/   /'    /    |│ /| 
 _____      ,./ //    |     /   .─┼─ |
(_____二二二二)  ノ ( (.  |    / ┼┐─┼─
              ^^^'  ヽ, |  |   /.  ││  









「おーよくとぶな、さすが魔王」
 トレントが感想をもらす。
「戦力減ったんですが」
 アルヴィンが嫌そうな顔をする。

 と、そこに「トレント★樹海団」のメンバーであるハンターのアリシャが現れ
た。アリシャにトレントに声をかける。
「他の奴らはどうしてる?」
「後方で戦ってる部隊で指揮をとってます。ところでフィンが見当たらないん
ですが」
 トレントは空をゆっくりと見上げ、憂いを帯びたため息をついた。
「場外だ」
「「は?」」
 何のことかわからず、アリシャの目が丸くなる。
「それよりもトレント、どうなんですか?勝てそうですか?」
 トレントがゆっくりと目を伏せた。
「ちょっと戦って思った。全然無理、あれ無理、かなり無理だ」
「「「…」」」
 3人の間に気まずい空気が流れる。
「ま────」
 トレントの眼が真紅に輝く。
「0%の勝利を掴むとしようか」
 戦いはまだ終わっていない。

 タートルジェネラルが大太刀を掴み、こちらへの突進を開始した。

 ◆

 ライジング=ボーンドは「ギルド攻城戦」の後、トレント達に語った。

 「真紅都市」の本当の力を発動するとき、瞳が真紅に輝くのは、

 「真紅都市」にいたもう一人の自分の魂を己に宿すからだと───

 魂を付与せし者、ソウルリンカーの力に酷似した現象が起きている。

 だからこそ、その力を自在に操ることができるならば───

 「無限王」シリウスに対抗でき得る力を得ることができるだろうと。

 ◆

 「亀族の大将軍」と呼ばれ恐れられるタートルジェネラル

 その胸板には深い斬撃の跡があった。

「人の身でこれほどの力を発揮するとは…さすが異世界の力といった所か
のう…」

 だが──それでも魔王には及ばない。

 タートルジェネラルには勝てない。

 トレント達はタートルジェネラルのまわりに倒れ伏し、命尽き果てる瞬間を
待つだけとなっていた。

 タートルジェネラルは問う。

「何故じゃ、何故勝てぬとわかっていた戦いを挑んだ。もはやフェイトには誰
も敵わぬ、もう勝てるものなど存在せぬのだ」
 トレントが血を吐きながら叫ぶ。
「だから何だ?だからと言って諦めたらそこで終わりだろうが。フェイトに好き
勝手させまいとする奴は多い、お前らが思った以上に手強い連中ばかりだ」


「レイ=フレジッドとラクール=フレジッドはフェイトに殺されたがの」


「…っ」
 トレントが目を見開き、タートルジェネラルが目を伏せた。
「もうフェイトの独裁は止めれぬ、この世界で生きるにはフェイトに組すること
のみだ、それ以外の選択肢はない」
 トレントが俯いた。

 絶望にくれたか、人間の心とはかくも折れやすいものだな。

 タートルジェネラルの思考が切り替わる、とどめを刺そうと考える。

「タートルジェネラル…頼みがある」
 トレントが静かに、全ての運命をを受け入れるように、呟いた。
「一つだけ教えてくれ、フェイトは何をしようとしている…?何故…」
 タートルジェネラルは静かに語る。
「フェイトの目的は一つ、ルーンミッドガッツ王国正統王位継承者たるフィリ
=グロリアスをユミル復活の鍵たる「ユミルの聖杯」とし、ユミルをこの世界
に具現化させること」
「そうか…」
 トレントの口元に笑みが浮かぶ。
「それだけ聞ければ十分だ、ようやく吐いてくれたな、フェイトの目的を」
「…?」
 タートルジェネラルの表情が怪訝なものに変化する。こいつは何を言って
いる?この状況で勝てると思っているのか?
「取り引きだ、タートルジェネラル。俺に力を貸せ。力は貸さないまでもだ、少
なくとも邪魔はするな」
「正気か?貴様の命は我が手中にあるのだぞ?」
「お前さんの命はフェイトの手中だろうが」
 トレントがすかさず切り返す。
「ユミルが復活したら世界は滅びる。それまでの短い生命を謳歌して満足な
のか?「亀族の大将軍」タートルジェネラル」
「…」
 タートルジェネラルは黙して語らない。だがタートルジェネラルとてわかって
いるのだ、フェイトに組していればいずれ破滅と。
「勝算はある、それはフェイトが狙っているフィリ=グロリアスの存在だ。あの
女はユミルが構成している世界という器を受け入れるほどの魔力を所有し
ているんだろう?さらに王家の血筋、かの建国王フィリア=フェリカ=ルーン
ミッドガッツの血筋だ」
 トレントは言い切る。



「フィリ=グロリアスならばフェイトに対抗できる」



「…」
 タートルジェネラルは語らない。
「だから言った、邪魔をするなと。フィリ=グロリアスならばフェイトを倒せる
可能性はある。だが数や力にモノをいわせて攻め立てられればフィリ=グ
ロリアスとて敗北するだろう。だから俺が行ってやる、露払いは俺がやって
やる。フェイトまでの道は俺が切り開いてやる」
 タートルジェネラルが静かに口を開いた。
「詭弁だの。詭弁にしか聞こえぬな」
「そうだな、ハッタリだよ。死にたくない、生き延びたいためのハッタリだ」
「詭弁は聞けぬ、もういい死ぬがいい人間よ。せめてもの情けだ、せめてわ
しの全力の大太刀、その身に受けて滅びるがよい」

 突如としてタートルジェネラルの大太刀に力が収束する。まるでその周囲
だけ嵐が吹き荒れるかのような轟風、死の風。

 風に吹き飛ばされそうになりながらトレントは剣を抜いた。

 トレントの瞳が真紅に染まる。

「真紅剣『銀狼』───────」

 トレントが静かに呟く。
「お前ら、出番だ」

 トレントの前方に「トレント★樹海団」のクルセイダー、アルヴィンが立つ。

 トレントの後方に「トレント★樹海団」のハンター、アリシャが立つ。

「我が無双の太刀を3人で受け止めようというか!よかろう!全てを吹き飛
ばしてくれる!例えそれが滅びの道だとしても────」
 タートルジェネラルの最後の猛進が始まる。


 ドガン!


 それは、聖騎士であるアルヴィンが盾を大地に打ち付けた音。

 アルヴィンの眼が真紅に輝く──────

「───っ!」
 タートルジェネラルの表情が驚愕に歪む。が、何を恐れることがあろう。
「亀族の大将軍」と詠われる我が無双の太刀にて吹き飛ばすという結末は
変らない。決められた、いや決まってしまっているシナリオにして未来。

「真紅守護『紅紫水晶』────っ!」

 そしてトレントに続く、2人目の「真紅都市」の力が、ラクール=フレジッドで
すら敗北させた「無限王」シリウスに対抗できる唯一の力が発動した。

「カーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーッ!!」
 タートルジェネラルの、街全てを吹き飛ばすかのような力が結集した太刀
がアルヴィンの元に振り下ろされる。だが──────

 クルセイダー達のスキルに「リフレクトシールド」というものがある。バリア
のようなものを展開し、相手から受けた攻撃のダメージの何%かを相手に弾
き返すというかのソロモン教典に通じる力を持つ「盾」である。

 ならば───弾き返すダメージが100%ならばどうなるか。


 魔王が放つ攻撃ならば、魔王を殺せる。


「貴様…!そういう事か…っ!」
 タートルジェネラルの表情が苦痛に歪む、ハメられたと知る。トレントはこの
女を犠牲にし、自身に致命傷を与えるという策をとったのだ。

「違うな」

 1秒後アルヴィンが死ぬ──────

「倒すためじゃない、「真紅の旅人」は仲間を見捨てない」

 ゼロコンマ以下の攻防─────

 トレントの真紅剣『銀狼』が発動する────!

 トレントはその力を全て、アルヴィンに襲い掛かるタートルジェネラルの大
太刀の力にぶつける───!轟音、耳をつんざくような、眼がくらむほどの
大爆発。それでもまだ相殺し切れず、トレントとアルヴィンは意識を失い気
絶する。2人の姿が爆煙の中に消え────

 傷を負ったタートルジェネラルが健在なる証明の咆哮をあげる。

 魔軍七大勢力の魔王は人の身では倒せない。

 魔族には、魔王には人の身では対抗し得ないのだ。


 だからこそ人は知略を練る。


「真紅閃『与一之弓』────」
 トレントに知略を託され、勝負の行方を任された「トレント★樹海団」のハ
ンター、アリシャの眼が真紅に輝き、3人目の真紅都市」の力を発動させる。

 その力は全てを貫く一閃の弓。

 アリシャは機会を逃さず、タートルジェネラルの足を打ち抜く。これにてター
トルジェネラルの足は止まる。だが魔王は強く、裂帛の気合いのみにてアリ
シャの身体が吹き飛び、意識を失い倒れ伏す。

 ダメージが大きすぎる、もう動きをとることは難しいだろう───

 だが、これにて全員撃破、タートルジェネラルの前に立つ者は無く───

「いつからだ、いつからそこにいた。いつ────戻ってきた」
 タートルジェネラルはアリシャによって足を貫かれたため振り向けず、ただ
棒立ちのまま、「自分の背後」に向かい呟いた。

 何故、このタイミングで帰ってきた─────!?

「腐れ縁ってのも、たまには役立つものだな」

 タートルジェネラルの背後に立つは──────

 「トレント★樹海団」の騎士、フィン=ロルナーク

「こうやってほしいっていう…そういう「タイミング」がわかっちまう」

 かの「幽鬼なる海魔」ドレイクの腕を裂いたといわれる、全てを切り裂く風
の剣の使い手。

 その剣は魔王すら切り裂く。

 こうして、トレントによって組み立てられた知略という名のパズルの、最後
のピースが埋まる。抜き身の剣を手に、フィンが静かに口を開く。

「覚えとけ、人は魔族には対抗できない。元々の身体能力が違いすぎる上
に、生命という器にも差がありすぎるからな。なら何で昔から人は魔族に対
抗でき得たのか──────」
 タートルジェネラルが自嘲気味な笑みを浮かべながら呟く。
「フ…教えてもらえるかの」
 フィンの持つ剣に風の力が収束する。


「人は、想いを力に代えて戦うことができる唯一の存在だからさ」


 フィンの渾身の一撃が、タートルジェネラルの肩口から腰にかけ、一直線
に斬り裂いた────────

 [続]


〜あとがき〜
次の話マダァ-? (・∀・ )っ/凵⌒☆チンチン
と言われまくってましたすみませんorz 
文句は課長にお願いします!いやまじ仕事で死にそうですよ!?
次回予告、タートルジェネラルに勝利したトレント達。
少しずつ明かされる「ユミルの十字架」と「Ocean's Blue」の謎!
そしてついに「皇帝」アイフリード=フロームヘルも行動を開始する!


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