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Ocean's Blue

085:幕間悪意

 ルーンミッドガッツ王国の首都プロンテラ───

 現在の王国ではフェイトに対する反乱分子の処刑にも区切りがつき、誰も
がフェイトに逆らおうとは、いやその思いすら抱かなくなっていた。例えフェイ
トを討伐せんとした反乱軍が現れたと言う噂が流れようとも、間近でフェイト
の圧倒的力を見せられては誰もが心折られる。それほどの圧倒的な支配力
にてフェイトは王国を絶望へと落とし込んでいた。

 そして──────────────────

 フェイト=トリスタン=ルーンミッドガッツ四世からの召集命令。

 ウェルガ=サタニックやロウガ=ブラストを始めとするフェイトに仕えし悪鬼
羅刹が、プロンテラへと集結した。

 ◆

 プロンテラ城、玉座の間───────

 フェイトの名の元に集結した悪鬼羅刹は己が主の到着をただ待つのみ。

 「幻影」 ウェルガ=サタニック=ダークイリュージョン
 「暗殺王」 ロウガ=ブラスト
 「闇騎士」 セレス=ドラウジー
 「世紀末覇王」 オークロード
 「無限王」 シリウス
 「殺戮王」 セイレン=ウィンザー
 「死者の巫女」 ミサキ=リフレクト
 「堕ちたる七英雄」 ハウゼン=フロームヘル=ヴェスパーコア

 そしてこの面々とは別に2人の男女がいた──────




 カツ…カツ…




 玉座の間に突如満ちる瘴気、闇、奈落の深淵。この男を何度目の前にし
ても慣れることのできぬ絶対的恐怖、絶望への道標たらん力を示せし、王
国の完全なる絶対支配者。

 「奈落の王」 フェイト=トリスタン=ルーンミッドガッツ四世

 玉座へと座したフェイトは集まった面々をざっと見渡すと、口の端をつりあ
げて笑みを浮かべた。
「新顔が2人いるな」
 すると2人の男女のうち、男の方───中年のパラディンが前へと進み出
た。中年のパラディンは恭しく頭を垂れると、静かに口を開いた。
「拝謁に預かり光栄にございます。我が名はレベイレブ、フェイト様に仕えし
プロンテラ王国軍の軍団長を勤めさせていただいております」
「そうか、よろしく頼む」
 全てを見透かすような視線に射抜かれ、レベイレブが硬直する。だがフェ
イトはすぐにレベイレブから興味を失ったのか、男女のうちのもう1人、女の
方に目を向けた。
「ユミルの十字架、七つの大罪「嫉妬」の十字架を持つ、「皇帝の十字架」 
リシア=キングバード。君もよろしく頼む」
「…」
 リシアは虚ろな瞳を浮かべるだけで何も答えない。

「さて─────お前達を招集したのは他でもない。現在この首都に3つ
の勢力が向かってきている」
 フェイトの視線の先に、ルーンミッドガッツ王国の地図が浮かび上がる。





「僭越ながら私が説明させていただきます。3つの勢力ですが、まず「皇帝」
アイフリード=フロームヘルを頭に据えたシュバルツバルド共和国軍」
 セレスが地図の前に歩み出て、説明を開始する。セレスの視線は地図の
上側、ジュノーのアルデバラン付近を見据える。
「シュバルツバルド共和国大統領カール=テオドール=ワイエルストラウス
の名の元に召集された軍の規模は約5万。国境都市アルデバランの防衛線
を突破してプロンテラへと侵攻を開始しています。ミョルニール山脈を抜ける
必要がある為、到着には約10日を要するものと思われます」

 次にセレスは説明の対象をアルベルタ近辺へと切り替えた。
「次に「真紅の旅人」トレント率いる冒険者連合軍。規模は約1万と推定され
ます。トレントは異界の能力を駆使し、アルベルタを制圧していた魔軍七大
勢力が魔王の一角「亀族の大将軍」タートルジェネラルを撃破しております。
現在トレントの軍は複数の船舶にて海路を伝いイズルードへと向かっており
ます。この勢力が首都に到着するのには約一週間かかると予測されます」

「そして───────」
 セレスが最後の敵対勢力へと視線を向けた時、フェイトの口の端が吊り
上った。セレスは静かに口を開いた。
「フィリア=フェリカ=ルーンミッドガッツ二世、フィリ=グロリアス率いる解放
軍、初期の規模…「古の黄金王」オシリスと戦った頃とは比べ物にならない
ほど戦力が増大しており、その数は約2万。進軍速度は3つの勢力のうち最
も早く、プロンテラ到達まで一週間はかからないかと思われます。おそらく
は5日前後、それ以上遅くなることはありません」


 玉座の間に満ちる沈黙──────

 その場の誰もが、主よりくだされる主命を待つ─────────


「削れ」
「「「っ…?」」」
 フェイトの一言に、困惑するウェルガ達。ウェルガは気を取り直して主たる
フェイトに問う。
「削れ────とは?」
 フェイトは口の端の笑みを絶やさず回答する。
「文字通りの意味だ。このままフィリアの軍を迎え討つのは構わないが、俺
の計画に必要のない連中も徒党を組んでいるだろう?」
 ウェルガ達はようやく理解した。

 フェイトの計画とは無関係の存在である────────

 「真紅の旅人」が中核を成す勢力────────

 すなわち、トレント率いる冒険者連合を消せ────────

 フェイトは「魔軍七大勢力」の魔王であるオークロードに視線を向けた。
「亜人の王よ、海上を悠長に進む者達を楽に消す方法はないものか」
「その言葉─────俺に任せるという意味でとるぞ?「奈落の王」よ」
 オークロードの返答に満足したフェイトが目を伏せる。
「任せよう」
「ガハハハ、承知」
 オークロードが凶暴な笑みを浮かべる。

「さて…その「削り」を除いたとしても首都決戦ではフィリア達は間違いなく本
腰を入れてくるだろう。俺は取るに足らない相手などと言うつもりはない」
 フェイトは一瞬言葉を切った後、宣言した。
「存分に相手をしてやろうと思う。そしてその上で完全に叩き潰し、希望の片
鱗すら残らぬ敗北を喰らわせる」

 来るがいい、我が半身にして、我が計画の中枢────────

 全ての決着をつけよう────────

 この王国の首都─────プロンテラで───────────

 ◆

 バイラン島海域────────

 港町アルベルタを出航した当初は騒がしかったトレントも船がイズルード
に近付くにつれ口数が減っていた。代わりに武器の手入れや、要員の体調
管理など細かな所に口を出し始めていた。
「嫌な空だな」
 空を見上げると、霧がかかり、漆黒の曇天、嵐が来るかもしれない。
「トレント」
 「トレント★樹海団」のクルセイダー、アルヴィンがトレントの名を呼んだ。
「何だ」
「衛星都市イズルードに到着する時刻は明朝の日の出前とのことです」
「…そうか。予想よりも随分早く来たな」
 プロンテラまで一週間はかかると見ていたが、予想よりも早く動けたよう
だ。海流をうまく掴まえたのが功を奏したのだろう。

 さて、首都プロンテラまでこのまま楽に進めるとは思えない。

 まず間違いなく、前座の「一戦」があると見ていい。

 仕掛けてくる可能性がある地点は.3箇所────────

 ・衛星都市イズルードに到達するまでの海上
 ・衛星都市イズルード内
 ・衛星都市イズルード〜首都プロンテラの街道

「…」
 霧の向こうに巨大な船の影────────
「まぁ…だよな…」
 もしトレントが敵だったとしても同じことを行うだろう。

 敵味方双方の被害が大きくなる海戦か────────
 敵味方双方の被害を抑える陸戦か────────

「決まってるよな、手持ちの駒が多けりゃ海戦を選ぶわな。船ごと敵を沈め
て海の藻屑でハイ終了ってか」
 霧の中より這い出るは「魔軍七大勢力」の一角、「世紀末覇王」オークロー
ド率いる「亜の眷属」の軍勢を乗せた帆船。その船が真っ直ぐにトレント達の
船へと向かってくる。すでに「亜の眷属」たるオークやゴブリン達が各々の武
器を構えて、こちらの船に乗り移る準備を開始していた。

「総員戦闘準備───────蹴散らすぞ」

 トレントの言葉とともに慌しくなる船内。さらにトレントの元に「トレント★樹
海団」のメンバーであるフィン=ロルナークがやってきた。
「おいトレント、オークロードが来てるのか?」
「それは考えにくいな。奴は己が持つ駒の一つがあまりに強力なモノがいる
為、自分では中々動かないことで有名だからな」
 その言葉でピンときたフィンが嫌そうな顔をした。
「おい…またそんなのが相手かよ」
「まぁ───多分な」
 あれだけの軍勢を軽く統括する「亜の眷属」の存在など2つしか考えられ
ない。1つは「世紀末覇王」オークロード。そして──────



「お相手願う──────「真紅の旅人」と呼ばれし者達よ」

 「亜の眷属」 最強の英雄、オークヒーロー

 オークヒーローは自らの大剣を引き抜いた。
「征くぞ─────────っ!」

 グオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!

 オークヒーローの言葉とともに怒号と咆哮が天へと向けて響き渡る。



 トレント達もまたそれぞれの武器を構え、迎撃の体勢をとる。
「来やがれ、返り討ちにしてやんよ───!」
 夜明けには衛星都市イズルードへと到着する。

 夜明けまでに生きていたらの話だが─────────

 ◆

 幻想の島コモド───────

 波打ち際にはレイが、何かを失ってしまったことに無意識化で感じ取った
のだろうか。レイが静かに佇んでいた。

 レイの背後には一つの黒き影。闇の象徴たる黒紅魔法陣とともに出現す
る「幻影」 ウェルガ=サタニック=ダークイリュージョン。
「刻は満ちた─────残るは最期の楔を打ち込むのみ───────」
「それを俺が認めると思うか?」
「クク…その身体で何ができる?」
 ウェルガは声の主であり、この場へと現れたレイの父であるラクール=フ
レジッドへと問い返した。ラクールはグラストヘイムでの戦闘にて「無限王」
シリウスに治癒不能の致命傷を受けている。それでも尚、動けるのはラクー
ルだからだろう。
「ウェルガ、最期の楔とは何だ、狙いはレイか」
「どのみち動けぬ身体だ、黙って成り行きを見届けるがいい。そして楔となる
貴様の息子は預からせてもらう─────」
「好きにしろ、だが─────」
「クク…」
 現状ではラクールはウェルガはおろか、その手駒の魔物一匹すら倒せる
かどうかという状態なのである。ならばここは戦わず生きる。だがそれでも、
レイやフィリに何かあればラクールは許さないだろう。
「不甲斐ないなラクール。動けぬのが悔しかろう…ククク…」

 ゴアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!

 黒い竜巻とともにウェルガがレイを連れ去る。

 ラクールは唇を噛み締め、虚空を見上げていた。

 ◆

 「ユミルの十字架」 七つの大罪を持ちし者達──────

 「憤怒」の十字架を持つ、フェイト=トリスタン=ルーンミッドガッツ四世
 「貪欲」の十字架を持つ、ハウゼン=フロームヘル=ヴェスパーコア
 「情欲」の十字架を持つ、セレス=ドラウジー
 「傲慢」の十字架を持つ、ロウガ=ブラスト
 「暴喰」の十字架を持つ、ミリア=グロリアス
 「嫉妬」の十字架を持つ、リシア=キングバード


 そして────────────

 「無為」の十字架を持つ、レイ=フレジッド

 最期の楔が打ち込まれる刻は満ちた─────────

 [続]


〜あとがき〜
何故か書き物が全くできない状態でした。
マジでスランプってあるのね…
ぼちぼち再開していこうかなと思ってます。
次回予告、襲来したオークヒーローとの海戦!!


〜登場人物紹介〜
○レベイレブ
プロンテラ現王国軍団長、ロイヤルミストの元上司らしい。

○オークヒーロー
オークロードに仕える「亜の眷属」の『魔王』。
その実力はオークロードに匹敵する程。
「亜の眷属」最強の英雄と詠われている。


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