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真紅幻想

002:闇の鼓動

 フィンが武器の修理に出て、それを待っていたルアーナとトレント。
 正直、暇を持て余してたそんなある日の事。トレントがルアーナにある言葉を発した。
「ルアーナ、俺のことをパパと呼べ」
「…」
 とても汚いモノを見るかのような目でトレントを見るルアーナ。
「トレント…頭に変なものが沸いた?」
 だが、トレントは至極マジメにある言葉を発した。
「夢を見たんだよ…幻想の中にある街を…」
「え…」
「その街の名前は…確か」

「「真紅都市ルアーナ」」

「な!?」
 今度はトレントが驚く番だった。ルアーナが発した街の名称と自分の言った言葉が
重なったからだ。ルアーナは少し憂いを表情に浮かべた。
「フィンもね…同じ夢を見たって言ってたよ」
「よし、行くか。真紅都市」
「─────は?」
 ちょっと待て、色々段階を飛んでそれかこの男、そもそも夢の中の街に行こうなど
とやることなすことが突拍子なさすぎる。だが───
「面白いかもね」
「ん、夢を追うとかバカらしいと言うと思われてたんだがな」
「思わないって。夢を追うなんてロマンティックじゃない。私達は夢を追いかける
冒険者なんだしね」
「フィンの奴も巻き込んでやるぜ、ヘッヘッヘ」
 ルアーナは「あ〜あ、フィンかわいそ」とか思いながら遥か遠くにあるであろう街
──自分と同じ名前の真紅の都市に思いを馳せた。毎度トレントにひどい目に
あわされているフィンも結局この件に付き合うだろう。そう思ったときだった。
カプラサービスからフィンからの封筒が届いたのは。
「なんだ?あいつ何送ってきたんだ?」
 ルアーナが受け取った封筒を覗き込むトレント。
 ルアーナが封筒を破ると中から手紙と若芽が出てきた。手紙にはこう書いてあった。



 若芽一個獲得



「よし、フィンを殴りに行くぞ」
 トレントはすぐに宿を出た。フィンの思惑は成功した。

 ◆

 闇の中。
 赤く浮かび上がる2つの光。
 そこから放たれる炎。
 冒険者が抵抗も出来ずに燃え上がる。
 存在するはずの無い古代の存在。
 何故、こんなものがここにいるのか。
 悪夢か。
 トリスタンの悪夢がまだ続いているのか。
 燃え尽きた冒険者。
 それを見る赤い光。
 そして―それを見る一つの影もあった。

 ◆

「あなたの仲間は剣士とシーフでしたっけ?」
 翌日、昨日と同じ場所で露店を広げていたバステトが、手伝ってくれている
フィンに訊いた。
「ああ。腕は保証するよ。性格は保証できないけどな…」
「それはまた楽しみですね」
 にっこりと微笑みながら露店の準備を終えるバステト。
「しかし、アコライトかプリーストがいない以上、準備はしっかりとしておかねば。
ポーションや包帯などの準備をお願いしていいですか?」
「ああ、了解。ついでに食料も買い込んでおくよ」
 何せトレントは料理をしない。ルアーナは修行中。必然的に料理役はフィンに
回ってくるのである。
 ふと、フィンはバステトに尋ねた。
「バステトさんは料理できるの?」
 バステトはにっこり笑いながら答えた。
「食材を粉砕することならたやすいですよ」
 フィンは料理役から開放されなかった。

 ◆

 一方フィンを殴るためにプロンテラに向かったトレントと、それについていく
ルアーナは、その行程の半分を終えていた。衛星都市、と言うだけあってイズルード
とプロンテラの距離は近い。旅なれている冒険者なら1日かからないほどだ。さらに
このプロンテラとイズルードをつなぐ平原は治安が良く、またモンスターもポリンなど
人に害をなさないものが多いため、妨害にあうこともまずないというとても平和な
場所であった。
「でも何の用で呼び出したのかな」
 ルアーナが首をかしげる。フィンは2〜3日で帰ると言っていたのだから、何か予想外
のことが起こったのは当然なのだが。
「知らん。とりあえずあいつはポン・デ・ライオンの刑だ」
「いやそれ訳わからないから」
 トレントが謎の巨大ドーナツを用意してやる気満々なのを見て、ルアーナは
あきれながらため息をついた。
「そういえば、さ」
「なんだ?俺のことをパパと呼ぶ気になったか?」
「いや死んでも言わないから」
 またもため息をつきながらルアーナがトレントを見た。
「そういえば気になってたんだけど」
「ん?」
「フィンとトレントって力に凄い差があるよね」
「あたりまえだ。あんなもやしに俺は負けん」
 ふん!と力こぶを作るトレント。
「なのに何で打ち合いは互角なの?」
 ルアーナも気が付いていた。剣の打ち合いは互角であることに。
「俺は正当な剣の使い方をしてる。力で剣を振るい、敵を粉砕する。けどあいつには
その力が無い」
 剣士の転職条件もギリギリだった程の筋力の低さ。
「だがあいつは圧倒的な速さがある。身のこなしも何もかもな。…速いという事は
それだけで凶器となり殺傷力を持つ。あいつの剣の威力はここにあるわけだ…が」
 しかし、とトレントは言葉をつなげた。
「当然それは瞬発的な力。力押しは出来ないし長期戦にも向かない。その辺があいつの
弱点なんだが…生意気にもあいつはそれに対してもある程度の対応策を立ててやがる」
「対応策?」
「まあ、そのうちわかるさ。それより今はポン・デ・ライオンの刑の計画立てのほうが
重要なんだよ…ハーッハッハッハッハッハ!」
 巨大ドーナツを振りかざして邪悪な顔で笑うトレントにルアーナは本日数度目の
ため息をついていた。

 ◆

 既に何人の冒険者が死んだのだろうか。
 闇に浮かぶ赤い目を見ながらふと、そう思う。
 だが、これではたりない。
 データも取れない。
 これでは意味がない。
 だから待つ。
 我が実験を完成させるために。
 それに必要なのは、力あるものだ。
 来たれ、力あるものよ。
 我が力を完全なものとするために―

 ◆

「しまったぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
 買い物に来たフィンは思わず叫んだ。理由は簡単だ。
「剣を買って資金が尽きてるの忘れてたぁぁぁぁぁぁぁ!!」
 アホである。ほぼ全財産はたいてウィンドバスタードソードを買ったフィンには
食料はともかく、ある程度値が張るポーションを買い揃えるお金はなかった。
「どうする…トレントがお金貸してくれるはずは…いや、利子がどうなるかわからん!
バステトさんに借りるかルアーナに借りるか…」
 ぶつぶつと悩みながらフィンは道具屋の裏手に回っていた。

「ガンホー!ガンホー!ガンホー!」
「うおっ!?」
 いきなり叫び声が聞こえてきて、フィンは思わず声を上げた。
「マンクルポ!マンクルポ!マンクルポ!」
 その叫び声の先には、太陽に向かって土下座する男のシーフの姿があった。
「いくぜ!うおおおおおおおおおお!」
 そのシーフは汗だくになりながら、その手にある古くて青い箱を開けた。
 箱には―


 黄金が入っていた


「おお!?」
 フィンはビックリしながらその光景を見ていた。うわさには聞いていたが、この
古くて青い箱と呼ばれるマジックアイテムをあける場面に出くわすのは初めてだった。
「すげぇ…黄金なんて入ってることもあるのかよ…」
 うらやましそうにそれを見るフィンの前で、そのシーフは残念そうにつぶやいた。
「地へ…と還れ…大地に溶けよ…青き箱のモノ達よ…」
 そしてその黄金をその場に放置すると、シーフはその場を立ち去ろうとした。
「ちょ…ちょっと待てよ!なんで黄金おいていくんだ!?」
 驚いて呼び止めるフィン。
「ん・・・見物客がいたのか」
 シーフは厳しい目で振り返った。
「憶えておけ。箱にロマンをささげる者。これは生半可な覚悟でやってはいけないのだ」
 はき捨てるように言うと、ぐいっと黄金を踏みつける。
「装備品以外の存在を認めない!それが我ら『箱師』のモットーであり、誇りだ!!」
 腕を天にかざしながら叫ぶシーフ。フィンはそれを唖然としながら見ていた。
「こんなもの…ロマンの欠片も感じん。欲しければくれてやる…さらばだ」
 シーフはそんな言葉を残し、街の中へと消えていった。

 うわさには聞いていた。青箱とともに生き、青箱とともに死ぬ者がいると。だが。

「こんなにアホとは思わなかった…」
 思わずつぶやくと、フィンもその場から立ち去った。



 しっかりとその手には黄金が握られていた。

 [続]

 〜あとがき〜
  特に書くことは無いのですが^^;。レイがまだフィリと再会する前にも世の中には
 物語が常に流れ、そしてつながっているということを表現できたらなと思っております。
  次回予告:合流したトレント達。いったいトレントの言う「ポン・デ・ライオンの計」
 とは!?激しい戦い!剣撃が乱れ飛ぶ!勝負の行方はどうなる!?


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