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真紅幻想

003:譲歩

 宿屋『ブラックキャット』。現在フィンとバステトが滞在している宿屋だ。

「…間違いない、ここだ」

 すさまじい殺気を放つ剣士が入り口に立つ。その手には巨大な獲物が握られ、
犠牲者を包み込まんとしている。

「さて…いくぞごるぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 剣士は突然叫ぶと、扉を蹴り開け中に突入した。1Fは食堂になっている。突然
乱入してきた剣士に食堂は騒然となった。
 そしてそこには丁度夕食を取っていたフィンとバステトがいた。

「なっ!?」

 フィンは一直線に向かってくるその剣士に気がついたが、丁度口にハンバーグ
を入れた直後で反応が送れてしまった。それが致命的な隙を作る。

「くらえぇ!秘儀、ポン・デ・ライオン!!」

 その剣士の獲物は、フィンの首を捕らえた。巨大なそれは、フィンの首を包み
込んで停止する!

「捕らえたぜフィン!後悔するがいい!!」
「ぐあああああああ!何だこの巨大なドーナツは!って砂糖がジャリジャリして
気持ちが悪い!うおあぁぁぁぁぁ!まわすな!砂糖がイタイイタイイタイイタイ!」

 剣士―トレントが放った恐怖の一撃にフィンはのた打ち回った


 10分後。駆けつけた騎士団の連中にフィンとトレントは厳重注意を受けたのは
言うまでも無いだろう。

 ◆

「ったく。俺は被害者だっての…」
「この俺にえらそうに説教しやがって…。覚えてろよ」

 ぶつくさと文句を言いながらようやく開放されたフィンとトレントはバステトと
ルアーナの座る席に戻ってきた。

「お帰り。まったくちょっとは常識にのっとった行動しようよ」
「俺は常識破ってねぇよ!どう考えてもおかしいのはトレントだろ!」

 呆れ顔で2人を迎えたルアーナにフィンいきり立った。

「まあまあ。せっかくPTがそろったわけですし自己紹介といきましょう」

 マイペースで話を持っていくバステト。さっきの騒ぎから動じてない彼女は凄いと
思ったルアーナだった。

「そうだな。もやしはほっといていいしな」

 トレントはフィンを無視して話を進めた。騒いでいても仕方ないため、しぶしぶ
それにフィンも従う。

「俺はトレント。見ての通り剣士だ。一応パーティリーダーなんてものやってる」
「私はルアーナです。職業はシーフ。よろしくお願いしますね」
「バステトといいます。転職したてのブラックスミスです。よろしく」
「で、今回2人を呼び出した理由だが」

 3人の自己紹介が終わった時点でフィンが話をはじめた。今回の目的、廃鉱の調査の
話を。

「実際、騎士団からも調査隊が出てるようですが、最下層まで行った者のほとんどは
未帰還。帰ってきたものはその竜と思われるものとは遭遇しなかった人たちだけだ
そうです」

 バステトがフィンの話に付け加える。露店をしながら情報収集を行っていたのだ。

「プロンテラ騎士団からも、冒険者に以来が出ています。報酬も危険だけにかなりの
ものですよ。情報によればゲフェンの魔術師ギルドからもでてるそうです」
「なるほど。アホのもやし君のくせにいい仕事見つけやがったな」

 トレントは話を聞き終わるとにやりと笑った。好奇心の塊のトレントがこの話を聞いて
放っておくわけが無かった。

「まあ、こういう話ならトレントが乗らないわけ無いわよね。危険そうなのに…」

 慎重派のルアーナはしぶしぶ、といった感じだが行きたくない、とは言わなかった。
彼女とてその竜を調べてみたいという好奇心はある。

「決まりだな」
「決まりですね」

 フィンとバステトが同時に言った。楽しそうにトレントがうなずく。

「準備はできてる。明日にでも廃鉱に向かえるぜ」
「OKだ。早速明日出発しよう」

 決まった。4人はうなずきあった。バステトがルアーナと握手を交わす。トレントと
フィンは無言で立ち上がる。そして―

 早めに休むのかと思いきや、2人は宿屋を出た。


「死ねトレント!よくも勝手に俺のカタナ精錬依頼なんて出しやがったなゴルァ!!」
「若芽なんて送り付けやがって!ポン・デ・ライオンで済んだと思うなよボケ!
真っ二つにしてやるわぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 表から聞こえて来る剣撃の音。悲鳴も上がる。今度は酒場表が騒ぎとなった。


 そして懲りてない2人は宿屋の変わりに留置所で1日をすごすこととなった。

 ◆

「あの2人はいつもあんな感じで?」

 紅茶を飲みながらバステトはルアーナを見た。

「です。なんであれでパーティ組めてるのか不思議なんですけどね…」

 ため息をつきながらルアーナは答えた。現にトレントとフィンが組んでから騒ぎが
起きなかった日は無い。

「にぎやかでいいですねぇ」

 にっこり笑うバステト。それを見てこの人の器は計り知れないと思うルアーナだった。

「確かににぎやかですけど…」
「いいじゃないですか。あなたがいてバランスが取れてるんですよ。意外なことで
あなたたちと知り合いになれて私はうれしいですけどね」
「え゛。あの2人と知り合いになれて…?」

 いくらなんでもそれはおかしいだろう。あんな歩く全自動迷惑製造ペアと知り合って、
災難と思っても喜ぶのはいくらなんでも。

「以外そうですね?」
「そりゃそうですよ…どこがうれしいのか聞きたいんですけど」

 ルアーナの問いにバステトはやはりにっこりと笑いながら答えた。

「だって飽きませんから」

 ◆

 しこたま警備兵に怒られた後、フィンとトレントは同じ独房に入れられた。

「ちっ…てめぇのせいだぞ」
「悪いのはお前だろお前」

 全く反省してなかった2人。剣があれば再びここで切りあっていただろう。

 お互い背を向けて横になる。長い間沈黙が続いた。
 どのくらい時がたったのだろうか―

「…おいフィン」

 その沈黙を破ったのはトレントだった。

「なんだ?」
「探すぞ」
「何をだよ」

 話がわからず聞き返すフィン。

「決まってるだろうが。真紅都市『ルアーナ』をだ」
「!!」

 トレントもあの夢を見ていたのか。フィンは驚きで即答できなかった。

「何かが…そこにある。確信を持って言える。そうだろうが」
「ああ…そうだな。間違いなくそこに何かがある」

 フィンもトレントと同じ意見だ。自分の中にある、謎の空白。その空白の内容が
そこにあるように思える。証拠は無いのにそれは確信。

「よし、決まりだ。長旅になるぞ。しっかり働けよ」


 フィンは答えなかった。答えるまでも無かった。トレントもそれを分かってるのか
返事を催促はしなかった。

「一つだけ…条件がある。それを呑むなら働いてやるよ」
「条件?」

 怪訝そうな声でトレントが聞き返した。

「…ああ」

 フィンは重い口調で条件を話した。

 俺は根本的に甘い人間だ。
 100を救うために1を切り捨てることを躊躇する。
 だがお前は違う。
 お前は躊躇無く切り捨てることができる。
 リーダーには冷静さと非情さがなければいけない。
 だからお前が俺たちを引っ張れ。
 俺はお前についてってやる。
 だが―

「もし実際に誰かを切り捨てる事になるときは、俺を切り捨てろ。俺の主義に反して
もお前のやることには従う。文字通り手足になってやる。しかし、この役だけは他の
やつにやらせられない。根が甘い俺の最大の譲歩だ。1を救えないのなら、せめて
その1に俺がなれば結果は同じになる」

 トレントは、少しだけ考えてからフィンに答えた。

「捨て駒になるまで死ぬなよ」

 [続]

 〜あとがき〜
  まともに冒険のぼの字もしてませんなこいつら−−;
 しかしついに次回は新展開!ミョルニール廃鉱の探索になります!
  
  いやさー…難しいんですよ話を上手く流れに乗せていくのは…改めてトレントさんの
 文才は凄いなと思ってたり。その文才の一部を俺にくれないかなぁ…orz


 〜登場人物紹介〜

 ●トレント
 性別:男
 job:ソードマン
 銀髪の剣士。勿論Ocean's Blue本編で猛威を振るっているあの人。
 変なことばかりしているが、締めるところはしっかりと締め、また剣士としての能力は
 相当なもの。剣士でありながら騎士に引けを取らないほどの実力者。パーティリーダーを
 やっており、指揮能力も高いのに慕われて無い変なやつ。それがトレントがトレントたる
 由縁だろう。

 ●ルアーナ
 性別:女
 job:シーフ
 トレントと最初に組んでいたシーフ。何でも貧困の生まれなためにシーフになったが
 結局義賊に近いことをしてお金がたまらないという生まれつき貧乏人。でもめげない。
 短剣の腕もなかなかながら、意外とタフであり、またシーフとしての腕前もかなりの
 もの。トレント・フィンと同じ夢、真紅都市『ルアーナ』の謎を解明したいと思ってる
 のは彼女が一番である。

 ●バステト
 性別:女
 job:ブラックスミス
 フィンに剣を売ったことが始まりでトレント一味になってしまったブラックスミス。
 武器製造も手がけるが、彼女は製造よりも戦闘能力が高い。常にマイペースで相手に
 流されないため、取引や駆け引きが得意である。カムバーック!(謎)

 ●フィン=ロルナーク
 性別:男
 job:ソードマン
 言わずと知れたネタ剣士。Ocean's Blue本編と扱いは変わらない我ながらかわいそうな
 やつ。そういう運命なんだろう。半ば諦め気味。(つ□T)
 シーフ顔負けの素早さを生かした戦いをする異風な剣士。だがその実力はトレントに
 近いものがある。あらゆる意味でトレントをライバル視している。
 
 ちなみに小説のフィンは原作InnocentとOcean's Blueの両方の性格をあわせて2で割った
 感じにしてるので、読者には違和感ありまくるかもしれんがご了承願いたい。


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