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真紅幻想

005:連携

 戦いとはさまざまな状況がある。数人で戦う場合は個々の戦闘能力は勿論だが、
その動きによって戦力のは大きな違いが出る。1+1が0にも3にも10にもなる。
重要なのは、チームワークであり、リーダーの指揮能力だろう。




「フィン!奴の口に突っ込め!食われてる間にしとめるぞ!!」
「死ねこのボケ!食われるように命令するリーダーが何処にいる!!」

 1+1が0どころかマイナスの域に突入してるフィンとトレントは、もはや今の状況を
理解できてないように見えた。





 足を破壊されたドラゴンゾンビはまだ立ち上がってはいなかった。そこにバステト、
ルアーナ、そして飛び入りの剣士が追撃を仕掛ける。ドラゴンゾンビの叫び声が
廃鉱に響いた。

「ブレッシング!」

 そんな彼女達に、もう一人の飛び入りのアコライトが支援魔法をかける。聖なる
祝福により、一時的に筋力・器用さ・魔力を上昇させる魔法である。
 しかし、ドラゴンゾンビは巨大すぎた。致命傷を与えるには攻撃力が足りない。

「しかたありませんね。あまり使いたくなかったのですが」

 バステトが懐から金貨の束を取り出した。それを空中に放り投げると、力を溜めた
ソードメイスをかざした。

「メマーナイト!!」

 マーチャントの最強の攻撃技。お金を光の力に換え、叩きつける強力な技だ。
 ソードメイスに光となった金貨が集まる。それはやがて巨大なハンマーになった。
黄金の鎚だ。

「はぁぁぁぁぁぁ!!」

 その巨大な光の鎚をドラゴンゾンビに叩きつける。


 グシャァァァァァァァァ!!


 ドラゴンゾンビが吹っ飛び、その体がえぐられる。すさまじい一撃に全員が驚いた。
多額のお金を失うために簡単は使われない奥の手の一撃は、驚愕をもたらしたのだ。

「これでもしとめられませんか…!」

 それでもなお立ち上がってくるドラゴンゾンビに、バステトは苦しげな声を上げた。





 その頃。

「おらフィン!バステトを見習え!!商人の命であるお金をつかってまで戦っている
んだぞ!!お前も命を使え!」
「ふざけんなぁぁぁぁ!俺の命は代えがきかんわ!!お金と俺の命を同じ軽さにするな!」
「おお。お金に失礼だったな」
「死んでしまえこのクソトレントォォォォォォ!!」

 この2人はチームワーク以前に、現状を把握してるのだろうか?





「まずいわね。シーフの技じゃ…」

 立ち上がったドラゴンゾンビを見てルアーナは敵との相性の悪さを嘆いた。
毒の技であるインベナムはアンデッドには効かない。素早く2回切りつける技術、
ダブルアタックでは仕留める火力を出せない。短剣でちまちまやっててもらちがあかない
敵なのだ。
 せめて剣士のように強力な技があれば…!


 剣士?



「トレント!フィン!なにやってるのよ!」

 さっきから戦闘に参加せず言い争ってる2人にようやく気が付いたルアーナが2人を
叱った。

 だが


「うっせぇ!このネタ男がリーダーの命令きかねぇから説教してんだよ!」
「リーダー言うならまともな指揮をしろこのすっとこどっこい!」

 売り言葉に買い言葉。さらに2人の争いは激化していた。

「さすがにこれは喧嘩してる場合じゃないと思うぞ?」

 飛び入りの剣士も2人に声をかける。バステトとアコライトもウンウンと頷いた。



 ぐるぉああああああああぁぁぁぁぁぁぁ!



 ドラゴンゾンビが咆哮した。反撃がくる!ルアーナたちは身構えた。


「うるさい黙れこのポンコツドラゴン!!」
「脳みそ腐ってるのに自己主張すんなこの爬虫類!!」

 その瞬間。トレントとフィンが動いた。

 ドラゴンゾンビが炎を吐こうとした瞬間。フィンがその動作よりも早く、あごの下
まで飛び上がる。

「バッシュ!」

 フィンの剣があごの下に叩きつけられる。ただし、刃を立てずに。
ゴツ!という鈍い音とともに、ドラゴンゾンビの顔が跳ね上がった。結果炎は天井に
向かって放たれる。

 その直後、力を溜めていたトレントが攻撃を仕掛けた。
 その手に持つ剣が燃えている。マグナムブレイクの炎を、一時的に剣に宿し攻撃力
を上げたのだ。

「喰らえこのポンコツ!!」

 ――バッシュ!!――

 無防備になっている首に、横一閃する炎の剣。不死の化け物とはいえ、急所。


 ぐがぁぁぁあぁぁぁぁぁあぁぁぁぁぁ!


 切り裂かれた場所から炎が噴き出す。喉を通っていた自らの炎だ。
そのダメージで、流石のドラゴンゾンビも苦悶の声を上げる。

「…驚きました」

 その攻撃を見たバステトが思わずつぶやいた。
 そう。今の連携攻撃は間違いなく今までで一番のダメージを与えている。
一発一発の威力はバステトの渾身の一撃、メマーナイトよりもはるかに下なのにだ。
まさに、1+1が10になった攻撃だった。

「一気に潰しますよ!…ヒール!」

 アコライトがトレントの攻撃に続いた。不死の敵だからこそ、本来は回復効果を
持つヒールは逆効果をもたらす。ドラゴンゾンビの全身から白い煙が上がり、その
腐った鱗を溶かした。
 再び苦悶の声を上げるドラゴンゾンビ。だが次の瞬間想定外の反撃がきた。

 トレント達の足場が揺れたかと思うと、大地が槍となり襲ってきたのだ。

 ズン!!

 トレント達は流石に反応できず、その槍をまともに喰らってしまった。

「ヘブンズ…ドライブかよ…」

 地面に叩きつけられたフィンが立ち上がりながら傷口を抑える。

 ヘブンズドライブ。ウィザードが使う土系中級魔法である。一定範囲の大地を
槍と化し、敵を襲わせる強力な魔法だ。
 本来なら全員体をその大地の槍に貫かれていただろう。だがその直前、アコライトが
防御魔法『エンジェラス』を使ったためにダメージは最小限に抑えられていた。

「なんとか…間に合いましたね」

 苦しそうに笑うアコライト。

「そして…この状況はすけぽの得意分野ですよ」

 誰もがそのダメージに倒れこんでる中。あの剣士だけがヘブンズドライブのダメージを
ものともせず、そしてその衝撃に倒れることも無く、ドラゴンゾンビに向かっていた。

 ソードマンのスキル。特殊な呼吸法で痛みを一時的に制御し、そして自らのバランスを
保つ高等技・インデュアだった。

「残念だったな。消耗戦こそ得意でねっ!」


――マグナムブレイク!!――


 ドラゴンゾンビの足元で放った剣士の一撃。既に片足を半ば失い、体の一部を
メマーナイトでえぐられ、そして首に致命傷とも言える一撃を負ったドラゴンゾンビ
への、まさにとどめの一撃だった。

 爆発音とともにドラゴンゾンビの腹が吹き飛ぶ。そして剣士が飛び下がったその場所
に、ズズンという音とともに崩れ落ちるドラゴンゾンビ。戦闘不能だ。

「よっしゃとどめだ!俺を竜殺しのトレントと呼べ!」

 立ち上がったトレントが最後の一撃を加えようと突っ込む!





「あれ?俺の剣は?」

 フィンはそのとき、自分の手に剣がないことに気が付いた。ヘブンズドライブで
吹っ飛ばされたときに手から離れたのだ。
 その剣は、倒れたドラゴンゾンビの頭上の天井に刺さっていた。
 そして、ドラゴンゾンビが倒れた衝撃で、抜け落ちた。




「ハッハッハー!俺は英雄!!」

 トレントがドラゴンゾンビの頭目掛けて、剣を振り降ろ――――


   スコッ


 フィンのウィンドバスタードソードが、ドラゴンゾンビの脳天に突き刺さった。
ドラゴンゾンビは絶命した。




 トレントは剣を振りかざしたまま回れ右をすると、フィンに目掛けて剣を振り下ろした。
 悲鳴が廃鉱に響いた。

 ◆

 なるほど。ほとんど一次職だというのに良くやったものだ。
 プロンテラの自称騎士どもよりもよっぽど強い。
 いいデータも取れた。ようやくここから開放されるな。

 影は、闇の中に消えた。
 だが。
 影は気がついていなかった。
 彼らの中で、ただ一人自分の存在に気が付いていた者がいたことに―

 ◆

「いい動きするな。足でまといの飛び入りでなくて何よりだ」

 トレントは剣士とアコライトを見ると偉そうに言った。

「それはどうも。状況が状況だけに手伝わせてもらいました。私はアコライトの
エレンといいます。ゲフェンの魔術師ギルドからの依頼を受けてここの調査に
きました」

 その偉そうな言い方を軽く流すと、エレンと名乗ったアコライトはにっこりと
微笑んだ。

「そしてそっちの剣士がすけぽ。見ての通り槍使いです」
「ん。よろしく」

 眠そうにすけぽが手を上げた。

「俺はトレントだ。そしてそっちのシーフが…」
「ルアーナです」
「そして私がブラックスミスのバステトです」

 一通りの自己紹介が終わる。

「しかし、こんな化け物がいるとは。プロンテラ騎士団もかなりの被害を出した
そうですね」

 えれんがドラゴンゾンビの死骸を見た。

「騎士と名乗っておいて情けない。俺達で倒せた敵相手に全滅かよ」

 けっ、と鼻で笑うトレント。

「実際、トリスタンの悪夢で損害を受けたプロンテラ騎士団は、その立て直しに
どうしても質よりも量をそろえねばならない状況だったそうですから、真の実力
を持たずに騎士になったものも多いのでしょう」

 バステトが騎士達の死骸に向かって手を合わせながら言った。

「これもトリスタンの悪夢の影響で生まれたのかな」
「その辺のことは騎士団や魔術師ギルドに任せるんだな。こいつを倒せば調査は
完了だ。脅威の原因は突き止め、排除完了。完璧だな」

 ルアーナの疑問はもっともだが、トレントは深く考えずに終わらせた。この場で
考えようと推測しかできない、と。

「でだ。すけぽ、エレンだったな」

 トレントが2人に向き直る。

「俺達はプロンテラ騎士団の調査依頼で来た。そしてあんたらがゲフェンの魔術師
ギルドの調査依頼できたんだよな?」
「ええ、そうですが」
「なら話は簡単だ。パーティを組もうぜ。両方の依頼を受けて完了ってことで
がっぽがっぽだ。いっしょに倒したんだし問題ねーだろ」

 エレンはどうしようかと少し考える。確かに悪くない話だ。しかし彼の性格を
考えるとどうだろうか?プラスにもマイナスにもなりかねない。

「いいんじゃないか?どうせ2人じゃこれからもやっていくのに何かと不便だしな」

 エレンにすけぽが言った。何かを成すにも、仲間は必要だと。

「…そうですね。これも何かの縁でしょう」

 すけぽの一言でえれんは頷いた。そしてエレンはトレントに手を差し出した。
トレントがその手をしっかりと握り返す。
 
 そして、その瞬間に――





 トレント★樹海団の初期メンバーがそろったのだった。



 

「ああ、ちなみにそこで血まみれで死にかけてるのがネタパシリマンのフィンだ。
よろしくしなくても良いけどとりあえず教えとくわ」

 トレントが自分が滅多切りにして半殺しにしたフィンを踏みつけながら面倒くさ
そうに言った。

 [続]

 〜あとがき〜
  ドラゴンゾンビ戦終了。このドラゴンゾンビは本来は炭鉱B3Fに配置予定だった
 3DMVPモンスターです。ところがサクライで実装されたら出現と同時にそのMAPの
 全キャラが重力エラーを叩き出し鯖缶され、その修正が出来ずに結局実装が
 されなかったと言われています(詳細は当然不明)。そのグラフィックはかなり
 かっこよく、今はその名残としてノーグロード2Fの背景に使われてたりしますw
 次回予告:プロンテラに戻ったトレントたち。その実力を認められ、彼らは新たな
 力を得ることとなった。しかし、ヴァン=トリスタン=ルーンミッドガッツ三世は
 そのことになぜか不安を感じるのであった。

 〜新登場人物紹介〜

 ●すけぽ
 性別:男
 job:ソードマン
 高い耐久力を誇る剣士。とは言っても槍使い。少々のことでは怯まない、のんびり
 屋にて鈍感男。だが彼の特徴はその防御力に目が行くが、ドラゴンゾンビの足を
 粉砕したように、筋力もまた高い。そのパイク捌きは騎士顔負けである。

 ●エレン
 性別:女
 job:アコライト
 知性が高く、またその魔力収束速度(つまりはキャスティングタイムw)も高い
 万能アコライト。的確な支援を行える判断力もある、まさに縁の下の力持ち。
 実は料理もできるのでフィンはやっと専用飯炊き係から開放されたらしい。


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