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真紅幻想

009:顔

 メガリスと呼ばれる岩の顔の化け物がココモビーチを占領していた。メガリスは岩
を飛ばし、無差別に近くの人を襲う。その数はあまりに多すぎた。そして対抗する者は
あまりに少なかった。

 ココモビーチはバカンスの場所として有名であり、多くの人々が海水浴に、そして
観光にと訪れる。観光の一番人気はガラパゴであった。
 ガラパゴと呼ばれるペンギンは、世にも珍しい熱帯に住むペンギンである。彼らは
人々の間でも人気であり、ドリンクをよく人間から貰って器用に飲む。その姿がまた
かわいらしく、彼らをモチーフにした帽子があるほどである。コモドの人気商品の一つ
だった。

 だがそんな平和なはずの海岸を、突如現れた岩の化け物どもが制圧してしまった。
観光目的の人々が大半の人間達に、それに対抗する力は無い。あまり多いとは言えない
冒険者達が、かろうじて抵抗しているに過ぎなかった。



 ルアーナの転職を待つトレントも、当然その抵抗している冒険者の一人だった。

「ふざ…けんなぁぁぁぁぁぁ!!」

 硬いメガリスの岩の体を一刀両断にするトレント。彼の怒りは頂点に達していた。
この化け物どものせいで…こいつらのせいで!!



「テイム(お持ち帰り)しようと思ってたガラパゴに全部逃げられただろうがぁぁぁぁ
ぁぁぁぁぁ!!」


 
 ただの私怨だった。

 人が襲われ平和が乱されたことよりも、ガラパゴ達に逃げられてしまったことに憤慨
していたのだ。さすがトレントと言うべきであろう。
 その頭に被っているガラパゴ帽子が彼のガラパゴへの愛情を物語っていた。その半分
の愛情を、逃げ惑ってる人たちに向けて欲しいものである。

 さらに数対のメガリスを斬る捨てるトレント。だがメガリスの数はあまりに多すぎた。
そしてトレントの奮戦を危険と感じたのか、近くのメガリスがいっせいにトレントに
攻撃を開始した。

「ちっ!!」

 守りを固め、後退するトレント。
 だが遠距離攻撃を得意とするメガリスの攻撃範囲から簡単に逃れることは出来ない。
剣の間合いに近づけず、また剣の範囲外の攻撃手段がソードナイフの投擲しかない
トレントにとって、遠距離戦はあまりに不利だった。
 そしてもう一つ、トレントは奮戦しすぎた。他の冒険者達が後退する中、一人戦線を
維持してしまったのだ。結果、敵陣に一人取り残されることとなり、集中砲火を浴びる
羽目になってしまっていたのである。ガラパゴへの愛情が裏目に出ていた。

 つーかそんな愛情で奮戦するトレントが悪かった。

 ――が、そんなトレントに思わぬ援軍が現れた。


「シールド…ブーメラン!!」


 突如飛来した大型の盾が、トレントの背後に回っていたメガリスを吹き飛ばす。


「ダブルストレイフィング!!」


 そして巨大な撃ち抜く力を秘めた2本の矢が、メガリスを砕く。


 トレント以外にもいた、現状でこの惨状に立ち向かえる者。

 運命とも言える、偶然の出会い。

 ろくな出会いではない。惨状に巻き込まれたのは不運なだけであり、敵陣に孤立
する理由も大したものではない。

 しかし、小さな偶然が―――こういうなんでもない偶然が人の運命に深くかかわる
のも事実である。

 または彼ら自信がお互いを引き寄せたのか。紅き運命を持つ者として、これは必然
だったのか。


 クルセイダー:アルヴィン
 ハンター:アリシャ


 2人の真紅の旅人が、合流した。

 ◆

 アリシャとアルヴィンがココモビーチに来ていたのは偶然だった。ギャンブル好きの
アリシャにアルヴィンが付き合う形で、コモドのカジノに来ていただけだった。そして
2人とも始めて来たコモドの海も満喫しておこうと言うことで、ビーチに来ただけである。

「おかしい…何度数えてもお金が1/3になってる…」

 アリシャが財布を覗きながら泣いている。

「当たり前です。スロットでいくらスッたと思ってるんです。ちょっとはこれに懲りて
ちょきんしなさい」

 呆れ顔でアリシャを見るアルヴィン。実はそんな偉そうなことを言いながら、しっかり
と昨日ポーカーで圧勝して儲かってるアルヴィン。だからこそアリシャもムキになって
しまったわけであるが。

「せっかく気分転換に海に着たんです。悪いことは忘れて体を動かすとしましょう」

「そりゃカードで勝てば気楽に泳ぐ気にもなるでしょうよ…」

 好景気と不景気の2人は他の観光客達よりも遅れて昼頃ココモビーチに到着した。
そして着替える間もなく、今回の騒動に巻き込まれたのだった。

 ◆

「そこの騎士さん!前線はもうとっくに下がってますよ!」

 戻ってきたシールドを左手で受け止めながら、アルヴィンはトレントに叫んだ。

「うっせぇ!ガラパゴを追い散らしたやつらは皆殺しだ!!」

 トレントは聞く耳持たず、アルヴィン達の援護で生じたわずかな隙に乗じて反撃に
出た。岩を弾きながらメガリスに接近、次々に粉砕していった。

「すごく危なそうなやつだけど凄く強いね…」

 矢を放つのを忘れてアリシャがつぶやいた。

「見捨てるわけにもいきません。援護を!」

 右手のサーベルを握りなおし、アルヴィンが盾を構え突進する。トレントの突撃は
どうしても岩の弾丸を回避しながらであるために速度が低いのに対し、盾を構える
アルヴィンは一直線にメガリスの群れに向かった。

「ディフェンダー!!」

 盾から光の壁が発生する。その壁は岩の弾丸をことごとく弾いた。クルセイダーの
特技、遠距離攻撃から身を守る守りの技、ディフェンダーである。

「はあぁぁぁぁ!」


 ―マグナムブレイク!!―


 敵陣のど真ん中でアルヴィンが爆炎を起こす。



 ―アローシャワー!!―


 固まったメガリスにアリシャの放った矢の豪雨が襲い掛かり、メガリスをただの岩
へと変えていった。


「…無茶せずに引くべきです!一人奮闘したところで意味が―――」
「あるぜ」

 ようやくトレントの元へたどり着いたアルヴィンが、トレントを抑えようと声を
かけた。頭に血が上っているトレントを冷静に戻し、助けるためだった。
―が、冷静な声が返ってきてアルヴィンは驚いた。

「何の理由もなしにこれだけのメガリスが沸くと思うか?…それは違うな」

 飛んでくる岩を剣で弾きながらトレントは冷静な声のまま続けた。

「力の誇示だか、実験だか知らんが何か理由がある。そして俺に集中攻撃を開始した
ってことは指揮者がいるのさ。知能の無いメガリスに集中砲火なんて真似はできん」

 それを確かめるためにあえて敵中に身を置いたのか。アルヴィンは驚愕してトレント
を見た。

「指揮者が…頭がいるなら話は早い。そいつをぶっ飛ばせば勝ちだ。付き合え」

 にやりと笑みを浮かべながらトレントはアルヴィンを見た。

「…了解です。どう対処しますか」

 アルヴィンは自然とそれを受け入れた。それが当然のように。

「もうちょっとメガリスをぶっ飛ばす。それでも変化が無いなら…前進だ」
「前進!?」
「頭を探すのに下がってどうする。『力』の誇示が目的なら配下がやられれば大将自ら
現れるし、何らかの実験だというなら後方にいるはずだ」

 ソードナイフを投擲し、右前方のメガリスを牽制しながらトレントは言う。


…狙ってやったのやら、偶然そうなったのやら…


 的確な指示のトレントと、愚かな行動をとるトレント。一体どちらが本性なのだろう。
メガリスの包囲攻撃を捌きながら思わず考え込んでしまうアルヴィンだった。


 そしてトレントの読み通り。
 この騒動の張本人が動き出した。
 その目的は力の誇示。
 かつてたたえられ彼は神となった。
 その権威を再びと願い。
 彼はここに現れた。


 人の願いから生み出されし神、そして魔王


 タオクンガがゆっくりとトレント達を目指し、浮遊を開始した―


 [続]


〜あとがき〜

 何度書き直したか!お待たせさせまくりの第9話でございますorz<申し訳ありません
とにかく難産でした…そして苦しんでる間に本編で

       俺死んだーーーーΣ(TДT;)ーーーーーー!!

 外伝ではまだ生きてますフィン、しかし未来死ぬの確定!なんと言う残酷な決定事項!
酷すぎますトレントさん!しかも死ぬ話アップする時メッセで「南無」ですよ!
鬼でしょうあんた!!(滝涙)

次回予告:アユタヤで祭られ、昇華し神と、そして魔王となったタオクンガ。亜種の
魔王とはいえ、その力は圧倒的。真紅の旅人達は果たして彼を退けることができるのか? 


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